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NVIDIA株価上昇の勢いに陰り? 出来高減少が示唆する今後のシナリオとは

Finasee / 2024年9月5日 7時0分

NVIDIA株価上昇の勢いに陰り? 出来高減少が示唆する今後のシナリオとは

Finasee(フィナシー)

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今週は何と言っても世界中が注目したNVIDIAの決算でした。決算内容については、新聞でも十分に取り上げられており、予想を上回ったことや売上が少し欠けたことなどが報じられています。しかし、ここではそれらの内容は完全に無視し、異なる視点から分析を行います。

 

私がご紹介するのは、株価の動きの分析、つまりプライスアクションアナリシスと呼ばれるものです。これは元々チャート分析の一つで、ローソク足や折れ線グラフ、移動平均線などを用いる手法の一つです。

今回お話しするのは、NVIDIAの上昇スピードについてです。株価は上がってきましたが、その上昇スピードは毎日同じペースではありません。3%上がったり2%下がったりしながら、平均的に1ヶ月や3ヶ月単位でのスピードが計測できます。このスピードの変化を分析していくと、NVIDIAの株価のモメンタム、つまり勢いにサイクルが見つかります。

このアプローチは、アナリストたちが決算の数字を詳細に分析するのとは全く異なります。ただ単に値動きを見て、どのような動き方をしているのかを分析します。

使用するのは株価のデータだけです。NVIDIAの日足チャートを見ると、高値が140ドルを記録したのは6月でした。7月、8月と2ヶ月連続で高値更新できなかった場合、久しぶりの現象となります。

 

月足チャートで見ると、今回のピークは6月ですが、その前にもいくつかのピークが確認できます。それぞれ1ヶ月ほど押し目が入っていることがわかります。このように、株価は単調に上昇するのではなく、波を持ちながら4回か5回の波を経て上昇しています。

 

この月足ベースの分析方法は、誰でも行うことができる手法です。具体的な方法をご説明します。まず、上昇スピードを月間単位で計算します。1ヶ月間に何パーセント上がったか、または下がったかを見ていきます。そして、1ヶ月間のスピードを算出し、それを3ヶ月間の平均スピード、6ヶ月間の平均スピード、12ヶ月間(1年間)の平均スピードとして計算します。これらを年率化したものがグラフとなります。

このグラフを見ると、スピードが上がって落ちる、また上がって落ちるというパターンが繰り返されていることがわかります。3ヶ月のスピードは比較的ブレが大きく、1年(12ヶ月)のスピードは非常にゆっくりとしたサイクルを描いています。その中で、比較的山と谷が綺麗に見えるのが6ヶ月間のスピードです。

  

この6ヶ月間のスピードのグラフを見ると、今回のモメンタムのピークが2024年6月、その前が1年前、さらにその前が1年と5ヶ月前、そしてその前が1年と2ヶ月前となっています。一方、スピードが最も減速するポイントは比較的安定しており、2021年3月から2022年9月までの1年半、あるいは1年3ヶ月ほどの間隔で現れています。

このパターンが続くとすれば、次のモメンタムの低下は来年の3月から6月ごろまで続く可能性があります。

しかし、これはかなりざっくりとした月ベースの分析です。もう少し正確に分析しようとすると、日足ベースの計算が必要になります。1日の騰落率を使い、過去3ヶ月間(約60営業日)や過去6ヶ月間(約100営業日)のデータを取り、より詳細なグラフを作成します。

 

 

 

 

 

このように日足ベースで分析しても、6ヶ月スピードの山と谷のタイミングは月ベースで見たものとほぼ一致します。現在はスピードが頂点に達し、これから下降局面に入ると考えられます。ただし、過去の例を見ると、スピードが0を下回らずに推移するケースもあり、それは相場の強さを示しています。

 

次に注目すべきポイントは、相場を見ている人なら誰もが気になる「どこまで下がるのか」という点です。誰もが最も高いところで売りたいと思い、最も安いところで買いたいと考えるのは当然のことです。

この分析のために、よく使われる移動平均という指標を用いました。先ほどの分析で6ヶ月ほどで波の振幅があることがわかったので、6ヶ月の移動平均を取っています。時間軸は2020年からのデータを使用しています。

 

ここでは2種類の移動平均を使用しています。1つはスポット価格で、これは日々の終値です。もう1つは単純平均で、これは6ヶ月間の終値の平均値です。これらは一般的によく使われる指標です。

さらに、もう1つ出来高加重平均という指標も使用しています。これは、ニューヨーク証券取引所の1日ごとの取引量(株数)を考慮に入れたものです。出来高の多い日を重く、少ない日を軽く扱って平均値を取ります。

 

これらの指標を用いて分析すると、移動平均のラインで株価が止まる傾向が見られます。2023年8月26日現在で、6ヶ月間の単純平均は105ドル23セントで、前日の株価は約117ドルでした。一方、出来高加重平均は112ドル程度となっています。

この分析を進める中で気になる点が出てきました。単純平均が105ドルで出来高加重平均が112ドルということは、約3%の乖離があることになります。これは、あまり好ましい状況ではありません。単純平均値が高いということは、実体のない、いわば「身のない」相場である可能性を示唆しています。

過去の相場では、出来高加重平均の方が上にあることが多く、それは実際に売買が活発に行われていたことを示していました。しかし、現在は単純平均が上に来ており、これは昔ほど熱心な取引が行われていない可能性を示唆しています。

今後NVIDIAの株価を考える上で、おそらく数ヶ月の間モメンタムは低下していくと思われます。この時に重要なのは、株価の「人気」のようなものです。株価が上がりにくくなる中で、きちんと出来高を伴って値段がついているのであれば、あまり心配する必要はありません。しかし、出来高がだんだんと減少していくような形になると、少し懸念が生じます。

今後NVIDIAの株価を見る際は、日々の出来高を確認することをお勧めします。出来高が減少し始め、同時に株価が下がり始めると、危険信号かもしれません。

出来高加重平均の関係が逆転したのは今年の初め頃からで、株価が140ドルを付けた高値の時期と重なります。株式分割後、NVIDIAの株価は約10倍になりましたが、それ以降、昔ほど激しい値動きが見られなくなりました。

これは、NVIDIAを組み入れるETFの存在や、インデックスへの採用基準といった、企業の本質的な価値とは関係のないルールによって株価が動かされている可能性を示唆しています。つまり、本当のNVIDIAの価値がだんだん見えにくくなってきているのではないかという懸念があります。

半導体業界でよく言及される「シリコンサイクル」との関連については、株価とシリコンサイクルあるいは半導体サイクルは必ずしも一致するものではありません。株価は往々にして先行して動き、時には後から慌てて動くこともあります。この関係性を完全に把握することは困難です。

また、半導体技術自体も進化し、生成AIや電気自動車向けなど、様々な分野に分かれて各々が進化を遂げています。そのため、新しいサイクルを見出す必要があるかもしれません。

最後に、現在の相場状況について注意が必要です。企業のことをよく知らない人々が買い始めると、相場にとって危険な兆候となる可能性があります。ただし、これも相場の一側面であり、市場参加者が入れ替わりながら日々取引を繰り返していくのが市場の本質だと言えるでしょう。

 

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。

マーケット・アナライズ編集部

全国無料放送の放送局「BS12( トゥエルビ)」にて隔週土曜あさ6時~放送中の「マーケット・アナライズ CONNECT」が運営する公式Youtubeチャンネルから、金融ストラテジストの岡崎良介氏の解説を中心に注目のコンテンツを「フィナシー」読者の皆さまにお届けしています。新NISAのスタートを機に投資デビューした方やこれから始めようと考えている方、さらに、投資の世界を通じて経済や企業の知識を深めたいと考えている方に、ぜひご覧いただきたい内容をお届けします!

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