医療・福祉の求人伸び率はマイナス、物流ではアルバイトの賃金の伸び率が好調、求人・賃金動向の意外な実態
Finasee / 2024年9月10日 16時0分
Finasee(フィナシー)
就職・転職戦線に異常あり?
最初に正社員の賃金と求人の全体像から。調査は、これまでの金融業界では分析に用いられることのなかったオルタナティブデータの分析サービスを提供する株式会社ナウキャストが、株式会社フロッグが収集した求人広告データをもとに募集賃金指数と求人数指数を作成して分析。
結果、2024年7月の募集賃金指数は増加傾向が続くものの、前年同期比では伸び率が低下。昨年12月以来、初めて2%増を下回る結果になりました。また求人数指数も、増加傾向は続き、2桁台の高い伸び率は維持しつつも、前年同期比での伸び率は低下しています。
今回の変化が景気後退の前兆なのか、一時的な調整なのかは現状では判断ができません。ただ、8月の世界同時株安では米国の雇用統計の悪化が引き金になったと指摘する市場関係者もいるなど、最近は雇用情勢に対する注目度も高まっているだけに、今後の展開が気になるところです。
出所:株式会社ナウキャスト「HRog賃金Now(2024年7月)」実はITも、正社員の賃金伸び率が低調な業界は?
正社員と一口に言ってもさまざまな業種があります。人手不足の業種ならば人材確保のために賃金を上げるでしょうから、賃金の伸びも高そうなもの。実態はどうなのでしょうか。
調査結果では、前年同期比で募集賃金指数の伸び率が高いのは「製造業」「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」でそれぞれ4%程度。新型コロナ感染拡大で業績不振に陥った宿泊業、飲食サービス業は他の業種に比べて伸び率が低調で、一時はマイナスに転落。しかしコロナ収束が見えてきた2021年後半から徐々に回復し、円安によるインバウンド需要も追い風となり、継続して高い伸びを示しています。
一方でITエンジニアなど「情報通信業」は、2024年前半から前年同期比でマイナスが続いており意外と低調。また「物流の2024年問題」がメディアでも大きく取り上げられた「運輸業、郵便業」も人材確保のためか、2024年前半から賃金の伸びが顕著だったものの、2024年半ばで頭打ちになり、6月に引き続き7月も大きく減少。賃金の伸びが一時的だった可能性を示唆する結果となりました。
出所:株式会社ナウキャスト「HRog賃金Now(2024年7月)」「人手不足」叫ばれる、医療・福祉業界、なんと求人の伸びはマイナス続いて求人数はどうでしょうか。人手不足の業種ならばたくさん求人を出すでしょうから、求人の伸びも高そうなもの。調査結果では、前年同期比で求人数指数の伸び率が高いのは「卸売業・小売業」「情報通信業」で40%前後。卸売業・小売業は新型コロナ感染拡大期や2023年中盤はマイナスに転落したものの、2023年後半から急上昇。また情報通信業は2021年に入って急上昇し、その後は他の業種に比べて安定的にプラスで推移しています。
宿泊業、飲食サービス業は新型コロナ感染の収束が見えてきた2022年頃、運輸業、郵便業は「物流の2024年問題」を翌年に控えた2023年頃に、それぞれ求人数指数が前年同期比で80%を超えるなど、業種によって急速に人手不足が深刻化するケースも。
そんななかで、求人数指数が前年同期比で唯一マイナスなのが「医療、福祉」。新型コロナ感染拡大期は一時60%程度まで求人が伸びましたが、2023年半ばにマイナスに転落。医療・福祉業界と言えば、少子高齢化に伴う需要の増加などから、慢性的に人手不足というイメージもありますが、意外に求人の伸びは低いようです。感染拡大に伴い、人手がひっ迫したコロナ禍という特殊要因の反動が現れているのかもしれません。
出所:株式会社ナウキャスト「HRog賃金Now(2024年7月)」アルバイト・パートでは「物流」の賃金伸び率が断トツ最後にアルバイト・パートの場合はどうでしょうか。調査結果では、募集賃金指数の伸び率は3%超と、2%を下回った正社員に比べて高い水準を維持。一方で、求人数指数の伸び率は2023年頃から水準が低下し、一時はマイナスに転落したものの今回は前年比プラスに戻りましたが、10%以上を維持している正社員とは対照的な結果に。
業種別の募集賃金指数の伸び率では、「運輸業、郵便業」が前年同期比6%超と断トツの高水準。前年同期比で減少していた正社員とは対照的です。また「宿泊業、飲食サービス業」は2023年頃から4%程度を安定的にキープし、正社員同様に好調。同じサービス業では「生活関連サービス業、娯楽業」も高い伸びを示しています。
出所:株式会社ナウキャスト「HRog賃金Now(2024年7月)」調査概要
調査名:「HRog賃金Now(2024年7月)」
調査主体:株式会社ナウキャスト
対象データ:株式会社フロッグがWebスクレイピングにより収集した求人広告データ(正社員/アルバイト・パート)
データヒストリー:2017年2月13日以降
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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