非正規雇用者の投資ニーズを掘り起こした新NISA、1万人調査が示す制度開始半年の利用実態
Finasee / 2024年9月11日 14時0分
Finasee(フィナシー)
「新NISAをきっかけに投資を開始」が63%
調査では始めに「昨年と比較した投資行動の変化」を聞いており、「投資をしている(投資家層)」が正規雇用者で昨年の51%から54%へと上昇した。非正規雇用者を含めた全体でも、「投資をしている(投資家層)」48%、「投資をしていない(非投資家層)」52%と半々の結果となった。
中でも「もともと投資をしていなかったが、投資を始めた」という人は約1割に上った。「新NISAは、これまで投資をしてこなかった人を投資の世界に招き入れたという特徴があるのでその点を検証した」と浦田氏。
投資を始めた人の理由は「新NISAが始まり、投資に興味を持ったから」が63%と最多。以下、「インフレが進み、預貯金だけでは資産が目減りしてしまうと思うから」26%、「投資に関して知識・情報が増えたから」24%と続いた。
新NISAをきっかけに投資を始めた人の年代に偏りはないが、男性は30代、女性は40代がやや多かった。非正規雇用者では若年層(28~36歳)と中堅層(37~52歳)の比率が高めだったが、平均すると雇用形態別に大きな差異は見られなかった。年収別では男性は500~700万円未満が31%、女性は300~500万円未満が28%と最も多かった。
出所:フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート2024年「預貯金で新NISAに投資」が4割弱、「貯蓄から投資へ」の流れを実証「新NISAに投資する財源」については、男女、年収、年代、雇用別の全てで「給与、ボーナスなどこれから稼ぐお金」が6~7割と最多を占めた。次いで、「預貯金口座で貯蓄しているお金」が4割弱と、「貯蓄から投資へ」の流れが着実に進んでいる様子が実証された。「持っている金融資産が多くなるほど、預貯金口座の貯蓄を新NISAにシフトする割合が加速度的に増えている」と浦田氏。
NISA口座を開設している金融機関別に詳しく見ると、大手銀行・信託銀行では「預貯金口座で貯蓄しているお金」を新NISAの財源とする人が多く、対面証券では「旧NISAや一般証券口座からの移換資金」を財源とする人が多く見られた。
多くの世代で人気の外国株投資信託、高齢層は日本個別株式
続いて「新NISAで何に投資しているか」については、外国株投信が31%とトップ、続いて日本個別株式30%、バランス型投信18%の順となった。高齢層(53~64歳)では日本個別株式が33%でトップだが、それ以外の年代では外国株投信が最多。バランス型投信は年代が上がるにつれ支持が高まっている。 外国株投信については、実に5人に4人がNISA口座を通じて投資している。
投資を「増やす人」と「減らす人」に分かれる理由は?調査では「投資を増やした理由」「減らした理由」も聞いている。「投資を増やした人」の理由は「新NISAの開始」が58%と最も多かった。以下「インフレ」33%、「投資知識増」26%と昨年と同じ順で続いた。
一方、「投資を減らした人」の理由では「インフレ」が35%と最も多かった。「インフレ」のほか、「相場変動」「収入減」と理由は同じでも、投資を増やす人もいれば逆に減らす人もいる点は昨年と同様だった。
そこでクロス分析による金融リテラシーとの関連性を見ると、例えば相場変動に関しては、変動時に投資を増やした人の88%が、自らの金融リテラシーが高いと回答。逆に投資を減らした人は、金融リテラシーが低いと回答する割合が高かったことが分かった。このことからは、今後金融教育がより普及すれば、相場が動いたときに投資を増やす人が増加する可能性も期待できそうだ。
出所:フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート2024年そのほか、年収が多いほど投資額を増やす割合が高くなるというデータも出ており、「NISAのような制度の整備、金融教育、投資の元手となる賃上げ、この3つがそろえば資産運用立国が進むのでは」と浦田氏は見解を示した。
お金に関する情報の入手ルートについては、金融資産額別に顕著な傾向が見られた。資産額が増えるにつれ、ニュースWEBや金融機関、雑誌、新聞、本、FP(ファイナンシャルプランナー)などから情報を入手するという回答が多くなった。一方でSNS、TV・ラジオは平均して高いものの、資産額が増えると逆に減る傾向が見られた。
出所:フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート2024年実施率が低い職域マネー教育に課題
新NISA開始に伴い、同じく非課税制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)や企業型確定拠出年金(企業型DC)にも注目が集まっている。職場での投資教育(研修会開催や情報提供、社外セミナー参加等)といった、いわゆる職域でのマネー教育は正規雇用者で30%、非正規雇用者で13%と低い実施率にとどまった。
従業員規模が大きい企業ほど実施率は高まり、5人以下では13%だが、1万人超では40%となっている(非正規込み)。業種別では「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融業、保険業」が40%とともに最多だった(同)。
どのような教育メニューが求められるかについては、「老後資金の形成方法」「投資の基礎」という回答が多かった。逆に不要という声が多かったのは、Z世代ではライフプランニング。結婚、出産、住宅購入といった従来の内容が時代にそぐわなくなった面が伺える。
前述どおり、今回の調査では初めて調査対象に労働人口の4割弱を占める非正規雇用者を加えた。彼らの投資行動を促進するには、さらなるNISA制度の活用に加え、金融リテラシーの強化が挙げられる。例えば職域での投資教育の普及率は低いが、今回の調査でも非正規雇用者にも教育の機会を提供してほしいという声もあったという。「マネー教育、金融リテラシーの向上はエンゲージ(会社への愛着や貢献したいという意識)を高め、生産性を上げ、翻って企業の業績をアップするサイクルにつながると言われている」と浦田氏。
今後、雇用形態によらない投資教育の機会提供や、投資の原資となる賃上げがどこまで広がっていくかが投資家の裾野拡大を左右する要因となるといえそうだ。
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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