大手証券の売れ筋は「米国成長株投信」が1、2トップ。半導体株、インド株のブームはどうなる?
Finasee / 2024年9月20日 7時0分
Finasee(フィナシー)
大手証券の投信売れ筋ランキング(2024年7月)のトップ3は、前月と同様に「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」だった。前月第2位の「HSBC インド・インフラ株式オープン」が第3位に後退し、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」が前月の第3位から第2位に浮上した。
以下、ログイン後に表示されます前月と比較すると、「半導体関連 世界株式戦略ファンド 愛称:半導体革命」や「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」など半導体関連株ファンドが前月に引き続き順位を下げ、「HSBCインド・インフラ株式オープン」、「ダイワ・ダイナミック・インド株ファンド」などインド株ファンドも順位を下げた。代わって、前月から一部の銘柄がランクを上げていた日本株ファンドがインデックスファンドを中心にまとまって順位を上げている。
ランキングは、大手証券(野村、大和、SMBC日興、みずほ)の代表的な売れ筋ランキングについて、トップに10点、以下、順位が下がるごとに1点減点して10位を1点としてポイントを付与し、そのポイントを合算してポイント上位から並べたもの。各社の公開情報に基づくもので、大和とSMBC日興はオンライン(総合)。また、大和の売れ筋は9月第1週の1週間分のみのランキングを使っている。
◆日経平均株価の史上最大の下げに反応「日経225ノーロードオープン」、「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」、「ダイワ・ノーロード 日経225ファンド」がそろって10ポイントを獲得して第4位に並んだ。これは、それぞれにSMBC日興証券、野村證券、大和証券において売れ筋ランキングのトップにランクされたためだ。国内株ファンドに対する資金流入は、8月5日に日経平均株価が史上最大の下げ幅(4551円安)を記録した週に集中している。株価の急落を狙った「押し目買い」が強烈に行われたためと考えられる。8月5日の終値では7月末比でTOPIX(東証株価指数)が20.30%安、日経平均株価は19.55%安でTOPIXの方が下落率は大きかったが、ニュースの見出しなどで「日経平均が史上最大の下落」と騒がれたためか、日経平均連動型のインデックスファンドが売れ筋に並んだ。
なお、前月は第6位だった「ダイワ・ブルベア・ファンド6 ブル3倍日本株ポートフォリオ6」は第19位に順位を下げた。同ファンドは7月末の基準価額1万9101円が8月5日には8803円と53.91%安の半値以下に急落した。8月末には1万5934円に回復したものの、7月に購入していた投資家は8月上旬の急落時は肝を冷やしたことだろう。第19位に入った「野村ハイパーブル・ベア10(ハイパーブル10)」は市場変動の2.5倍で動くファンドだが、8月5日は基準価額が5292円に急落、その後、8月末には8741円になった。レバレッジ型のファンドは、タイミングが合えば短期間で大きな投資収益が上げられるが、果たしてこの大きな変動相場で、うまく立ち回れた投資家はどれほどいただろうか。
◆景気後退局面でアクティブファンドが買われる理由外国株式ファンドは半導体関連株式やインド株式などを主たる投資対象とするファンドが順位を落とす中、「キャピタル世界株式ファンド」、「インベスコ世界株式厳選オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」、「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)Bコース(為替ヘッジなし)」など、運用会社で「フラッグシップ(旗艦)」と言われるクラスの代表的なアクティブファンドがジワリと浮上している。もちろん、ランキングトップの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」もフラッグシップのアクティブファンドだ。
これらフラッグシップは、長期にわたる運用実績があることがポイントだ。現在、米国の政策金利が引き下げに転じる転換点を迎え、市場の環境が大きく動くと懸念されている。今回の政策金利引き下げは、インフレ(物価上昇)退治のために適正な水準を超えて大幅に引き上げていた金利を正常な状態に戻そうという動きだ。現在、米国の政策金利は短期金利の指標となるFFレートで年5.25%~5.50%という水準になっている。これを適正とされる2~3%の水準に下げていこうとするのが今回の利下げだ。FRBが利下げを決断するのは、これまで強かった米景気に減速感が出てきたためだ。5%を超える政策金利を維持することで、景気を引き締め過ぎて後退に陥ることがないように、徐々にブレーキを緩める調整を行うことになるだろう。
景気が全般に減速する過程では、企業の持つ実力が企業業績で浮き彫りにされることになる。競争力のある商品・サービスを持ち、景気変動にかかわらず成長を持続させる経営力のある企業の業績は成長を続けるだろうが、成長トレンドにたまたま乗っていたような企業は景気減速によって業績が失速する。経済全体の好調に乗るインデックスファンドより、企業を選別する目を持つアクティブファンドに活躍期待が高まるのは、このような景気減速局面を迎えた時ということになる。
◆中でもフラッグシップファンドが人気なのはなぜ?個々のファンドマネジャーが、本当に優れた企業を見分ける目を持っているかどうかは、なかなか判断が難しい。実際には、そのファンドマネジャーが運用しているファンドの運用実績を調べて、インデックスや同様の運用戦略を持っているファンドと比較して良い運用成績を残しているのかを調べる必要がある。その点、運用会社の掲げるフラッグシップは、その会社が社運をかけて最高のスタッフをそろえて運用しているファンドであり、かつ、長期にわたって優れた運用成績を残してきたという実績も十分にあるファンドだ。「迷ったときに最も頼りになるファンド」といえる。米国景気が減速してきたタイミングでジワリと浮上してきたフラッグシップファンドが、今後も人気を高めるかどうか注目したい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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