「NASDAQ100」「FANG+」はトップ10圏外に。「S&P500」が順調な一方、意外なファンドも急上昇!?
Finasee / 2024年9月25日 7時0分
Finasee(フィナシー)
2024年8月のメガバンクの売れ筋トップは、前月同様に三菱UFJ銀行と三井住友銀行で日経平均株価に連動するインデックスファンドになるとともに、国内株価に連動するインデックスファンドのランキングが上がった。前月と異なるのは、米国NYダウ、全世界株式(オール・カントリー)など主要株価インデックスに連動するファンドのランキングが下がったことだ。前月は三菱UFJ銀行のトップ10に入っていた「eMAXIS NASDAQ100インデックス」や「iFreeNEXT FANG+インデックス」はトップ10圏外になった。また、みずほ銀行は「キャピタル・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ ICA」がランクアップしたことで、「キャピタル世界株式ファンド」とともにキャピタル社のグローバル株式ファンドの存在感が高まっている。
以下、ログイン後に表示されますメガバンク3行の売れ筋ランキングは、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が「総合」ランキング、みずほ銀行は「みずほインターネット投信除く、積立契約も除く」としている。
◆米国株式市場への警戒感で「マグニフィセント・セブン」人気に陰り?8月の売れ筋ランキングでは、三菱UFJ銀行で「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」が新たにトップ10にランクインするなど、国内株式インデックスファンドがトップ10のうち4本を占めた。米国株式インデックスは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」こそ、前月と同様に第2位をキープしたものの、他はランク外となり(前月は3本ランクイン)、トップ10には1本だけになった。「米国株式から国内株式へ」という流れが明瞭になった。三井住友銀行でも「三井住友・NYダウ指数・オープン(為替ヘッジなし)」が第3位から第4位に後退し、新たに「エス・ビー日本株オープン225」が第9位にランクインするなど、米国株式が後退し、国内株式が浮上する動きになっている。
日米の株価は、7月31日に日銀が実施した利上げによって日本の株価が大きく崩れ、米国では雇用統計の悪化などで景気後退懸念が高まったこともあって米国株価も下落した。そして、それぞれ8月上旬に底入れして反発に向かう動きとなったが、米国株価は8月26日にはNYダウが史上最高値を更新し、S&P500も史上最高値に近い水準にまで株価が戻ったものの、日本の株価は8月末になっても日経平均株価が最高値から8.5%安、TOPIXは同7.4%安の水準だった。既に下落場面から過去の高値まで全戻りした米国株式は押し目買いが成功裏に終わって反対売買も実行されたということなのかもしれない。日本株式については、下落からの戻りは60%程度にとどまるため、依然として押し目買いの動きが続いているとも考えられる。
ただ、三菱UFJ銀行のランキングから「eMAXIS NASDAQ100インデックス」や「iFreeNEXT FANG+インデックス」が消えたのは、米国株式市場への警戒感の現れだろう。これまで米国株式市場をリードしてきた「マグニフィセント・セブン」といわれた大型ハイテク株は、割高が指摘されつつも株高が続いてきた。それが、米国景気の減速感(FRBが利下げを検討するほどの減速感)が強まることによって、今までの高いPER(株価収益率)を維持できなくなるのではないかという懸念だ。
この懸念については、実際にFRBが利下げに動いた後の株式市場の変化を見る必要がある。米国経済はFRBの金融政策の後押しも受けてソフトランディング(景気後退を経ずに次の成長に復調する)の期待もある。史上最高値を更新するほど戻った株価はソフトランディング期待によるものだろう。再び米国株式ファンドへの人気が戻るのか注目したい。
◆ヘッジコストを抑えたグローバル債券に注目が集まる三井住友銀行の売れ筋で第5位になった「GSグローバル・パーシャルヘッジ社債ファンド」は、利下げ前の足元の高金利を取り込んで、かつ、欧米の利下げに伴う為替の円高懸念のリスクを軽減することにつながる「部分的な為替ヘッジ(パーシャルヘッジ)」という手法を提案している。同ファンドは、2023年11月に設定されたファンドで、まだ運用期間は1年に満たない。世界の社債に分散投資を行う同ファンドは、償還までの期間が1年から5年という短中期債を投資対象とし、社債としての価格変動リスクを抑え、かつ、ポートフォリオの70%を投資適格債として信用リスクも抑えた銘柄選定を行う。そして、為替ヘッジは70%程度としてヘッジコストの低減に努めている。
同ファンドが設定された2023年11月は1ドル=150円程度だった。それが現在は1ドル=140円前後という水準に円高・ドル安が進んでいる。今後もドルが金利引き下げを志向し、円が金利を維持・向上させる方向で動くとすれば、さらなる円高ということも考えられる。本来であれば、現在のような環境こそ海外資産への投資には為替ヘッジが必要だが、日米の短期金利の差は5%程度にも広がっており、為替ヘッジのコストはこの金利差分に相当するコストになる。この高いヘッジコストを回避する点で「パーシャルヘッジ」が選択されている。設定当時のモデルポートフォリオでは、為替ヘッジ前で年6.2%の利回りが確保できる環境だった。その後、欧州は利下げに踏み切り、米国も利下げに動く。市中金利が低下する環境は、債券の保有者にとっては保有している債券価格が上昇するメリットがある。
◆みずほ銀の“推し”、米キャピタル・グループとは?みずほ銀行の売れ筋トップ10に4本が並ぶ「キャピタル」と名付けられたファンドは、米大手運用会社であるキャピタル・グループの運用商品を示している。キャピタル・グループは1931年の創業で、ちょうど大恐慌の後、混乱する米国にあって、徹底的なファンダメンタルズ分析(個別企業の企業価値に注目した投資手法)の重要性を唱えて運用成績で信頼を勝ち得てきた会社だ。ファンダメンタルズ分析のパイオニアともいわれている。
現在、米国において「アメリカン・ファンズ」として知られる同社の旗艦ファンドシリーズの中の米国株式ファンド「The Investment Company of America (ICA) 」の運用を開始したのは1934年のことだ。キャピタル社の「アメリカン・ファンズ」は、米国の確定拠出年金(401kプラン)の対象商品として多くのプラン加入者が使って資産形成に役立てているファンドとして著名だ。
また、長期に運用品質をキープする仕組みとして、1つのファンドを複数のポートフォリオマネジャーで担当する「キャピタル・システム」を採用していることも特長だ。長期投資に徹した長期の運用実績のある米国を代表する伝統的な運用会社こそが、キャピタル・グループといえる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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