遺族年金のおかげで“おひとりさま老後”にも安心感…亡き夫が妻に「生活の支え」を遺せたワケ
Finasee / 2024年9月26日 12時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
共働き夫婦だった佳子さん(仮名・70歳)と夫の一文さん(仮名・75歳)。2人で年金450万円ほどを受け取りながら安定した生活を送っていましたが、一文さんが亡くなってしまいました。
佳子さんは自分が専業主婦ではなかったことから「夫婦共働きだと遺族年金は支給されない」と考えていましたが、ふと「現実問題、これからの生活はどうなるんだろう」と気になり始めました。
そこで亡くなった夫の年金の手続きで年金事務所へ行った際、「共働きだったら、やっぱり遺族年金はないですよね?」と窓口の職員に尋ねてみました。すると、職員から「少しですが、遺族年金出そうですよ」と回答され、想定外の事実に驚きます。
●前編:【「共働き夫婦は遺族年金をもらえない」は誤解? 70代女性が夫を亡くして知った「予想外の事実」】
65歳以降の遺族厚生年金亡くなった厚生年金加入者だった人に生計を維持されていた配偶者には遺族厚生年金を受給する権利が発生します。一文さんを亡くした佳子さんもこれに該当します。
ただし、老齢年金と遺族年金、両方の受給権があると、両方そのまま受けられず調整されることになっています。65歳以降の場合、遺族厚生年金は老齢基礎年金や老齢厚生年金と併せて受給することができますが、遺族厚生年金については老齢厚生年金を差し引いた差額分で計算されます。老齢基礎年金と老齢厚生年金、差額支給の遺族厚生年金で受給します。
つまり、遺族自身に老齢厚生年金がないと差し引かれる老齢厚生年金がないため、全額遺族厚生年金を受給でき、これを老齢基礎年金と併給することになります。一方、遺族自身の老齢厚生年金が遺族厚生年金より高いと、差額支給分の遺族厚生年金はなく、老齢基礎年金と老齢厚生年金のみで受給することになります。
「報酬比例部分の4分の3」で計算するとは限らないそうなると、佳子さんが考えているとおり、120万円から130万円を差し引くと遺族厚生年金は0円になると思われるかもしれません。
しかし、その65歳以降の配偶者に支給される遺族厚生年金について、差し引かれる前の遺族厚生年金は、「死亡した人の報酬比例部分の4分の3」(A)か「Aの額に3分の2を掛けた額+自分の老齢厚生年金の2分の1」(B)、いずれか高い額を用いて算出します。そして、AとBのうちの高い額から遺族自身の老齢厚生年金を差し引いた額が実際の差額支給分として支給されます。
佳子さんが認識していたのはAの計算方法。単純にAで計算すると、160万円×3/4で120万円、ここから佳子さんの老齢厚生年金130万円を差し引くとマイナスになってしまいますので、遺族厚生年金は支給されないことになってしまいます。
しかし、Bの計算方法だと差し引く前の遺族厚生年金は、160万円×3/4×2/3+130万円×1/2で145万円となります。145万円から佳子さんの老齢厚生年金130万円を差し引くと15万円となります。
つまり、Bの計算方法を用いた結果、佳子さんには遺族厚生年金として15万円は支給されることになります。一文さんの死後は、佳子さん自身の老齢基礎年金80万円、老齢厚生年金130万円、差額支給の遺族厚生年金15万円を合計して225万円で支給されることになります。
夫の厚生年金が多かったことも要因全く支給されないと思った遺族年金がわずかに支給されることになりました。佳子さんはもちろんのこと、一文さんも会社員として長く厚生年金に加入していたため、一文さんの老齢厚生年金も多く、結果、差額支給の遺族厚生年金も支給されることになりました。
もし、一文さんが厚生年金に加入している期間が短く、老齢厚生年金が少ないと、先述のBの額は145万円より少なく、差額支給の遺族厚生年金は支給されなかったかもしれません。佳子さんは「1人で生活する分には225万円なら何とかなりそう」「ずっと好きな看護師の仕事が続けられただけでなく、今回遺族年金が受け取れるのも夫のおかげね」と亡き夫に感謝するのでした。
遺族年金が支給されるかどうかは、実際に計算してみなければわかりません。対象になるか気になる場合は、支給のルールや計算方法、実際に支給される場合のその支給額を確認してみましょう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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