「8月の下落は当然」と語る経済アナリスト田嶋智太郎さんが注目する“ある指標”とは【新NISAビギナーも必見】
Finasee / 2024年10月2日 7時0分
Finasee(フィナシー)
8月の株価下落が当然だった理由
日経平均株価を例に考えてみましょう。同指数は東京証券取引所プライム市場に上場する主要な225銘柄で構成する平均株価で、その妥当水準は225社がこれから稼ぐと予想される通期の1株当たり純利益(EPS)の平均値を元に判断するのが基本。現在(執筆時)はもっぱら2024年度の予想EPS平均をベースとしますが、当然、その値は時の経過とともに変化します。
例えば、前期(2023年度)の決算が出そろった5月半ば時点の値はおおよそ2200円で、この値は次の四半期決算の発表が一巡する8月半ばごろまで判断の基準となります。日経平均株価は7月に4万2000円台の史上最高値をつけましたが、この値を2200円で割った値=予想株価収益率(予想PER)は19(倍)超となりました。
過去をさかのぼると、予想PERの許容水準はせいぜい16.5(倍)程度まで。つまり、7月の高値は「あまりにも割高な水準」ということになり、後に一定の調整(下落)局面を迎えるのは当然のことでした。
その後、一時的にも3万1000円台まで大きく下落した場面では、予想PERが14倍台前半まで低下し、今度は「あまりにも割安な水準」となりました。株式投資の鉄則は『割高を売り、割安を買う』。9月初旬に指数は3万9000円付近まで一時値を戻す場面もありましたが、この時点では既に4‐6月期決算の発表が一巡しており、予想EPS平均は2430円あたりにまで引き上げられています。
よって、3万9000円の予想PER=16倍ということになり、再び株価は妥当を思われる水準に収斂(しゅうれん)することとなりました。こうした「基本のキ」を押さえておけば、相場が上下に大きく振れるような場面に遭遇しても付和雷同(ふわらいどう)せずに済むものと思われます。
自分にとって都合のいい解釈をしない「データの重要性」できる限りの頻度で投資関連の必要データを小まめにチェックし、目の前の相場の現状分析&判断を怠らないことが何よりの「自分スタイル」。そうすれば、いたずらに不安に苛(さいな)まれることもなくなるでしょうし、自分にとって都合のいい解釈だけをしてしまうといったケースも減らせるはずです。
もちろん、データ量が多いに越したことはないわけで、経験と実績を積みながら量を増やしていく努力も怠りなくしたいものです。
上場企業の“稼ぐ力”は上昇、株価の上値余地に期待しよう私たちが投資対象とする上場企業の“稼ぐ力”はひところよりも格段にアップしています。その進捗度合いを外部からチェックする環境も整ってきており、企業収益の拡大余地=株価の上値余地は着実に広がっていると期待しましょう。
経済アナリスト・日経CNBCコメンテーター 田嶋智太郎氏
1988年慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て独立。金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の生涯生活設計などの研究のかたわら、自治体や新聞社(政経懇話会)、商工会議所、商工会、金融機関、民間企業などにて講演。著書に「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)、「硬派の戦略投資」(日本証券新聞社)など。日経CNBC「昼エクスプレス」レギュラーコメンテーターほかTV出演多数。ウィークリー投資レポート、メールマガジンなども配信。
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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