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ソフトバンクは10分割etc.「株式分割」ラッシュ! 一方で要望があるのに“あえて分割しない”有名企業も…その理由は

Finasee / 2024年9月29日 16時30分

ソフトバンクは10分割etc.「株式分割」ラッシュ! 一方で要望があるのに“あえて分割しない”有名企業も…その理由は

Finasee(フィナシー)

9月は株式分割ラッシュ

株式分割が盛んに行われています。ETFや投資法人(主に不動産投資法人)を除いて、9月に株式分割を実施する企業数は61社。9月24日時点で株式分割を発表している企業数は、2024年中で185社になりました。

ちなみにここ数年、株式分割を行った企業数を調べると、

2023年・・・・・・151社
2022年・・・・・・94社
2021年・・・・・・152社
2020年・・・・・・123社
2019年・・・・・・149社
2018年・・・・・・215社
2017年・・・・・・215社

となっています。

株式分割とは、1株を2株~10株程度に分割することによって、1単元あたりの投資金額を引き下げることです。

9月に株式分割を行う企業のなかで、最も多くの分割を行うのがソフトバンク(9434)や日本紙パルプ商事(8032)の10分割で、この2社の株式を100株保有している投資家は分割後、1000株を保有することになります。

9月24日時点のソフトバンク株の株価は、終値で1979円。これを1単元(100株)投資するのに必要な金額は19万7900円ですが、10分割後は1万9790円で投資できるようになるのです。また、分割前にソフトバンク株を100株保有している投資家は、10分割によって1000株保有することになります。

分割する狙いは、ずばり「株価上昇」期待

なぜ株式分割を行うのでしょうか。それは株式分割によって、株価の上昇期待が高まるからです。

株式を発行する企業としては、株価を高くしたいという意識が常に働きます。

まず、株価が長期的に右肩上がりに上昇している企業は、株式発行による資金調達が順調に行えます。資本コストの問題はあるものの、新株発行によって調達した資金は、銀行借入や債券発行による資金調達とは違い、返済する義務のない資金です。

また株価が上昇すれば、それだけ企業の時価総額が増えます。時価総額が増えれば、敵対的買収の攻撃にさらされるリスクが少なくなりますし、同時に株式交換による買収が仕掛けやすくなります。

1株の株価が5万円の銘柄があったとしましょう。1単元は100株なので、最低投資金額は500万円です。機関投資家なら投資できますが、個人投資家ではなかなか手が出せません。

でも、1株を10株に分割すれば、1株あたりの株価が5000円になり、1単元なら50万円で投資できるようになります。結果、これまで買えなかった個人でも投資できるようになるため、株主数が増えるのと同時に、買い手が増えて株価が上昇しやすくなります。

「個人投資家が投資しやすい環境づくり」を目指す、東証からの働きかけも

また、ここ数年来、株式分割が増えているもうひとつの背景として、東京証券取引所が上場企業に対して、最低投資金額の引き下げを要請していることが挙げられます。

実は2001年に東証は、上場規則の努力義務として最低投資金額を50万円未満にするよう通知をしました。当時はまだ1単元を1000株とする企業が大半でしたが、2018年10月1日から100株に統一されて、現在に至っています。

これによってある程度、単元株取引がしやすくなりましたが、それでもまだ1株の株価が1万円を超える値がさ株は存在していました。そこで東京証券取引所が直々に、株式分割によって最低投資金額を引き下げるように要請したのです。

たとえば2022年10月には、当時、単元株取引だと最低投資金額が800万円を超えるファーストリテイリングをはじめとする194社に対し、最低投資金額を50万円以下にするよう要請しました。2023年に株式分割を行う企業数が151社に増えたのは、そういう事情があったからです。

さらに東証は2024年7月に、1単元を100株から1株に引き下げることも視野に入れて、取引ルールの変更を検討することを発表しました。

これは2022年に東証が株価の高い上場企業に対して行った要請にも関わらず、最低投資金額が極めて高い企業が存在しているからです。

9月24日の終値をベースにすると、1単元の投資に必要な金額が大きな企業は、次のようになります。高い順に並べると、

1位 キーエンス(6861)・・・・・・691万7000円
2位 SMC(6273)・・・・・・610万4000円
3位 ファーストリテイリング(9983)・・・・・・479万3000円
4位 MARUWA(5344)・・・・・・399万5000円
5位 ディスコ(6146)・・・・・・356万6000円
6位 光通信(9435)・・・・・・324万2000円
7位 シマノ(7309)・・・・・・267万4500円
8位 オービック(4684)・・・・・・254万4500円
9位 レーザーテック(6920)・・・・・・241万500円
10位 東京エレクトロン(8035)・・・・・・240万2000円

1銘柄に投資するのに、キーエンスのように691万7000円も必要だと、個人投資家には手が出せません。

ちなみに1単元が50万円を超える銘柄数は168銘柄ありますが、このうち100万円を超える銘柄数は28銘柄ありました。

もし、東証の取引ルール変更が実現すると、最も株価の高いキーエンスでも、7万円弱で投資できるようになります。

このように東証が最低投資金額の引き下げに躍起になっているのは、現政府が重要政策のひとつに掲げている「貯蓄から投資へ」、「資産所得倍増プラン」に歩調を合わせる狙いがあるからと考えられます。

株式分割を特にメリットと感じない企業もある!?

では、値がさ株の代表ともいうべきキーエンスやSMCは、なぜ株式分割に積極的ではないのでしょうか。

まず株主構成を見ると、個人の株主を増やさなくても良いという現状があります。

たとえばSMCの株主構成を見ると、個人株主は2.2%で、最も多いのが外国人投資家の53.8%、信託銀行の25.6%、事業法人等の7.6%となっています。ちなみに信託銀行の保有分は、年金や投資信託など信託口を用いて投資している機関投資家の保有分と考えられます。

キーエンスも同じです。同社の株主構成は外国人投資家が最も多く48.9%を占め、信託銀行などの金融機関が24.7%、その他の法人が20%であり、個人の保有比率は5.6%に過ぎません。

これは東洋経済オンライン(2023年6月22日 遠山綾乃記者)に掲載された記事ですが、2023年6月14日に開催されたキーエンスの定時株主総会で、個人株主が株式分割をしないのかと経営陣に問いただしたところ、「『投資単位の引き下げを求める声は認識している』とした一方で、『株価水準は高い方がいいという意見を持つ株主がいることも同時に認識している』と発言。総合的に勘案して検討するとの回答にとどめた」ということでした。

またこれはさまつな話ですが、コストの問題もありそうです。

1単元を1株にすれば、確かに株主数が増え、株式市場における流動性が高まる可能性はあるものの、企業からすればその株主一人ひとりに対して株主総会の招集通知や、議決権行使時の参考書類ならびに議決権行使書面、計算書類、事業報告、配当金の通知書などを郵送しなければなりません。

最近は電子交付も一部認められていますが、郵送される書類は多く、その郵送費はかなりのコスト負担になります。

あるいは、ややうがった見方になりますが、「会社の内容を理解しようもともせず、値上がり益だけを狙って投資してくるような人には株主になってもらわなくていい」という考えも、ひょっとしたら、あるのかも知れません。1株から投資できるようになれば、大勢の小口投資家が、投機を目的にした売買を繰り返す余地が生まれ、株価が乱高下する恐れがあります。それを避けたいと考える経営者は、少なくありません。

1株単位で売買できるようすることも視野に入れた、東証の取引ルール見直しは、10月から機関投資家、証券代行機関などで構成された勉強会で、その課題などが議論され、来年3月をめどに策定される予定です。それに向けてSMCやキーエンスがどのような対応を取るのか、注目されます。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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