借金を返済しない友人に悩まされる女性。泣き寝入りを防ぎ“全額返済”をかなえた「1通の書類」
Finasee / 2024年10月12日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
雨の降る日の喫茶店で、遠藤さん(40代・男性)は「俺はもう事業を撤退する。けど、撤退するにも先立つものがなければどうにもならないんだ……」と切り出した。
遠藤さんは感染症の影響で飲食店の経営が悪化し、生活に困窮していたため、古くからの友人である米原さん(50代・女性)に助けを求めたのだった。
米原さんは「あなたの頼みなら」と善意からお金を貸すことにしたが、公正証書の作成を条件にした。実は、米原さんの真の狙いは差し押さえではなく遠藤さんの正確な住所を知ることにあった。
●前編:【困窮する友人を助けたい、でも滞納も不安…50代女性がお金を貸す前に準備した「意外な対策」】
1年もたたず返済が滞り始めた遠藤さん案の定、遠藤さんは1年もしないうちに支払いを滞り出した。通常であればここで差し押さえになるだろう。だが、差し押さえとなると問題も多い。
確かに差し押さえをしてしまえば即お金を回収できるだろう。だが、友人などある程度関係のある人に差し押さえまでしたとなれば、お金を返してもらう側の印象も非常に悪くなる。相手との関係悪化はもちろん、周囲から「そこまでしなくても……」と非難されることにもなりかねない。
意外に思われるかもしれないが、こうした事情から世間体を意識し、非難を避けるために訴訟手続きや差し押さえを避ける例は多い。そのため公正証書を作成したとしても差し押さえまではせず最終的には泣き寝入りというパターンも珍しくはないのだ。
正確な住所に内容証明を送ることに遠藤さんの返済が滞り始めてから半年ほど経過したとき、米原さんが動いた。遠藤さんの住所に宛てて内容証明郵便を送付する決断をしたのだ。
内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に宛てて、どのような内容の文章を送ったかを郵便局が証明してくれる文書だ。送付方法も本人へ直接手渡しする形で行われるものであるため文書による威圧感も十二分に発揮される。
とはいえ、記載した内容が事実とまでされるわけではないため、公正証書のようにこれ単体で差し押さえが可能になるほどの証拠力等は有さない点には注意が必要だ。
だが、一般的な法的知識である人に対して「まずい」という焦燥感を与えることは可能である。しかし、これも住所が分からなければ意味がない。内容証明郵便はあくまでも郵便物の一種。住所の分からない相手には届けようがない。
世の中、内容証明郵便を送りたいが相手の住所が分からない、または相手の住所が虚偽の内容であってどうしようもなかったということは少なくない。また黙って引っ越しをしてしまい現在は住所地が異なるということもままある。
その点、公正証書であれば身分証で住所確認をするので、確実に現住所を知ることができるようになっているし、相手が虚偽の住所地を伝えてくるということは少ない。加えて、公正証書内で住所の変更について通知義務を定めておけば黙って住所変更がされていたということもない。
そしてその日は訪れた。米原さんは私へ内容証明郵便の作成について依頼をしに来たのだ。実に返済が滞ってから7カ月を経過した頃だ。遠藤さん宛てに内容証明郵便は無事到達し、本人の受取が確認された。
貸していた120万円が全額返済された内容証明を送ってから2週間後、遠藤さんの滞納は解消されたと米原さんから喜びの連絡があった。内容証明の送付は大成功だ。
公正証書がありいつでも差し押さえが可能な状態にもかかわらず、内容証明郵便が突然送られてくる恐怖を考えてほしい。多少お金に困っていてもなんとかお金を作り必死に返済しようと考えるはずだ。遠藤さんもそう思ったのだろう。
そこから年月はたち2024年8月、とうとう米原さんは遠藤さんから貸したお金の全額返済を受けられたようだ。米原さんは裁判手続きを一切していない。ただ内容証明を1通送っただけだ。それだけですんなり返済が受けられた。
先日、その報告を事務所にて米原さんから直接伺った。これは後日分かったことだが遠藤さんは米原さん以外からも共通の知人からお金を借りていたようだ。だが、満額返済を受けられたのは知人の中でもどうやら米原さんだけだったようだ。
公正証書を作って得られる効力は執行力だけではない。相手の正確な個人情報を握り、戦略的に駆け引きする切り札的な効果も得られるのだ。
お金の貸し借りにおいて公正証書を作成する人は少ない。だが、返ってこないと困る額なら絶対作るべきだ。米原さんのように裁判手続きによらず、差し押さえも行ず、内容証明郵便1通送るだけで全額返済を受けられることもあるのだから。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※人物名はすべて仮名です。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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