住友電工は株価好調「5年で1.6倍」、配当利回りも3%維持、株主偏重を否定する「五方よし」でも”配当重視”の投資家に選ばれる理由
Finasee / 2024年10月7日 6時0分
Finasee(フィナシー)
住友電工の株価は右肩上がり、5年前に買っていれば約9万円の売却益
住友電気工業(住友電工)の株式が買われています。株価は5年間で1.6倍に上昇しました(2024年9月末終値)。1単元(100株)で約9万2000円の値上がり益が生じた計算です。
【住友電工の株価チャート推移(過去5年間)】
・株価:2295.5円(2024年9月30日終値)
出所:Trading View
足元の配当利回りは約3.0%です。今期(2025年3月期)は1株あたり72円の配当金を予定しています。株価の上昇は配当利回りを低下させますが、住友電工は比較的高い利回りを維持しています。
【住友電工の予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:72円
・予想配当利回り:3.13%
出所:住友電工ホームページより著者作成
NISAでは株式の売却益と配当益のいずれも非課税です。足元の決算が好調な住友電工は、配当金だけでなく値上がり益にも期待できます。
住友電工はどのような事業を展開しているのでしょうか。概要と業績を紹介します。
【関連記事】売却益&高配当の銘柄候補は「JT(日本たばこ産業)の株価はどこまで上がる? 配当金は10年で2倍に増加! 将来を左右するのは海外戦略の成長性」
住友グループの中核企業 自動車用ワイヤーハーネスで世界シェア首位住友電工はケーブルの大手企業です。電力向けや自動車向けの電線、産業向けの光ファイバなどを製造しています。シェアの高い製品群を多数抱えており、特に自動車用のワイヤーハーネスは世界トップシェアを握ります。
住友電工の売り上げは住友グループでトップクラスです。子会社には住友理工や住友電設を持ち、持分法適用会社として住友ゴム工業を持つなど、住友グループの中核的な存在となっています。
【主な住友グループ企業の売り上げ(2023年度)】
・住友商事:6兆9103億円
・住友電気工業:4兆4028億円
・NEC:3兆4772億円
・住友化学:2兆4469億円
・住友重機械工業:1兆815億円
※住友商事は収益、NECおよび住友化学は売上収益、その他は売上高
※住友電気工業および住友重機械工業は日本基準、その他は国際会計基準
※住友重機械工業は2023年12月期、その他は2024年3月期
出所:各社の決算短信
住友電工は5つの事業セグメントで構成されます。業績の多くを自動車関連事業が占めているものの、分散された事業ポートフォリオとなっています。住友電工は、特に「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」を注力分野に位置付け、重点的に取り組むとしています。
【住友電工のセグメント売上高と営業利益(2024年3月期)】
出所:住友電工 決算短信地域も分散されています。住友電工の売り上げは約6割が海外です。日本以外の割合はアジアなどが大きくなっています。国単位では、米国と中国の比率が高い傾向にあります。
【住友電工の地域別売上高(2024年3月期)】
・日本:1兆6648億円(37.8%)
・中国:6151億円(13.9%)
・アジアその他:6157億円(13.9%)
・米国:6541億円(14.8%)
・米州その他:2741億円(6.2%)
・欧州その他:5787億円(13.1%)
※()は構成比
出所:住友電工 有価証券報告書
今第1四半期は純利益16倍、エネルギー・自動車がけん引 AI拡大で光デバイスも好調
次に業績を確認しましょう。
住友電工の2024年3月期は好調でした。増収を主因に各段階利益で過去最高を更新しています。増収は自動車用ワイヤーハーネスや防振ゴム、電力ケーブルの販売が好調だったことが奏功しました。また円安が進んだことも売り上げを押し上げています。
【住友電工の業績(2024年3月期)】
・売上高:4兆4028億円(+9.9%)
・営業利益:2266億円(+27.7%)
・経常利益:2153億円(+24.2%)
・純利益:1497億円(+32.9%)
※()は前期比
出所:住友電工 決算短信
好調は続いています。住友電工は2024年8月に今期(2025年3月期)の第1四半期決算を発表しました。営業利益と経常利益は前年同期比で約3倍、純利益は約16倍に急増しています。
第1四半期は産業素材を除く4事業で増益となりました。特に環境エネルギーと自動車は前年同期比で100億円を超える増益となり、全体をけん引しました。環境エネルギーの増益には銅価格の上昇も影響しています。
情報通信はデータセンター向け光デバイスの好調を主因に31億円の増益、エレクトロニクスはフレキシブルプリント回路の需要増を主因に18億円の増益となっています。光デバイスの好調は、生成AIの拡大が影響したようです。
環境エネルギーと自動車、エレクトロニクスは第1四半期として過去最高益を更新しました。通期予想も上方修正に踏み切っています。業績予想の修正は、中間決算以降に行われる傾向にあります。第1四半期時点での上方修正は、それだけ業績が強かったことをうかがわせます。
【住友電工の業績(2025年3月期 第1四半期)】
・売上高:1兆1155億円(+12.2%)
・営業利益:532億円(+181.4%)
・経常利益:587億円(+242.9%)
・純利益:317億円(16.4倍)
※()は前年同四半期比
【住友電工の業績予想(2025年3月期)】
・売上高:4兆6000億円(+4.5%)
・営業利益:2500億円(+10.3%)
・経常利益:2430億円(+12.8%)
・純利益:1450億円(-3.2%)
※()は前期比
※同第1四半期時点における同社の予想
※上方修正の概要(期首予想比):売上高+1000億円、営業利益+100億円、経常利益+110億円、純利益+50億円
出所:住友電工 決算短信
セグメント別の業績予想の修正は、環境エネルギーで引き上げが大きくなりました。期首予想比で売上高を1000億円、営業利益を50億円増額しています。エレクトロニクスもそれぞれ100億円、20億円を引き上げています。
情報通信は売上高を据え置いたものの、営業利益は50億円の増額となっています。一方、主力の自動車は営業利益で20億円の減額を見込んでいます。
【セグメント別、通期予想の修正の概要(2025年3月期 第1四半期)】
出所:住友電工 補足資料株主偏重の還元を否定する「五方よし」 それでも配当重視の投資家に選ばれる理由
最後に住友電工の配当政策についても確認しておきましょう。
住友電工は、安定的な配当の維持を基本とし、業績や配当性向、内部留保の水準などから配当金を決定するとしています。「五方よし」を標榜する同社は、ステークホルダー全体を重視する方針で、株主に偏重した還元のあり方には否定的な姿勢をとっています。
とはいえ、住友電工が株主還元に消極的というわけではありません。配当性向はおよそ3割~4割で推移してきました。これは平均的な水準です。2023年度のプライム上場企業(全産業)の配当性向は平均34.17%でした。
【住友電工の配当性向の推移】
・2020年3月期:42.9%(40円)
・2021年3月期:44.3%(32円)
・2022年3月期:40.5%(50円)
・2023年3月期:34.6%(50円)
・2024年3月期:40.1%(77円)
※()は1株あたり配当金
出所:住友電工 ファクトブック
今期(2025年3月期)の配当性向は期首予想時で40.1%を予定しています。1株あたり配当金は、前期より5円少ない72円となる見込みです。
4期ぶりの減配で、かつ株価水準も上昇していますが、足元の予想配当利回りは3.1%前後を維持しています。おおむね過去の実績と同水準で、日経平均株価の予想配当利回り(1.97%)よりも高くなっています(2024年9月30日終値)。
出所:住友電工 ファクトブックより著者作成配当性向や配当利回りの水準から、住友電工は配当金にも十分期待できる銘柄です。業績や株価にもよりますが、配当金を重視するなら住友電工は有力な候補となるでしょう。
当面は好調な今期の中間決算が注目を集めそうです。第1四半期の公表時は業績の見通しを引き上げた一方で、予想配当金は据え置いています。中間決算でも好調な進捗が確認されれば、配当金の増額に踏み切るかもしれません。住友電工の中間決算は、例年11月上旬に公表されています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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