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「何かが腐ったみたいな…」隣人との“異臭トラブル”に耐えかねた末、40代在宅主婦がとった「あり得ない行動」

Finasee / 2024年10月11日 17時0分

「何かが腐ったみたいな…」隣人との“異臭トラブル”に耐えかねた末、40代在宅主婦がとった「あり得ない行動」

Finasee(フィナシー)

朝、郁美は柔らかな光に包まれながら目を覚ました。ぼんやりとした意識の中で、隣のベッドがすでに空になっていることに気づく。寝室を出てリビングに向かうと、夫の宗司がカメラバッグを整理している姿が目に入った。

「おはよう。今朝は早いんだね」

郁美が声をかけると、宗司は顔を上げてほほ笑んだ。

「おはよう。今日はちょっと遠くで撮影だからね。早めに出たいんだ」

宗司は現在、フリーのカメラマンをしている。長い間、出版社に所属していたが、昨年40歳の節目に会社を辞めた。一方の郁美は、在宅のみで仕事をするWEBデザイナーだ。夫婦の間に子供はいない。都心に縛られる必要のなくなった郁美と宗司は、この春、郊外へ越してきたのだった。

2人が新しいすみかに選んだのは、静かな住宅街にあるフルリノベーション済みのマンションだ。築年数こそ古いが、防音や湿気対策も万全だ。モダンで洗練された内装はまるでホテルのようで、郁美はこの新しい住まいをとても気に入っていた。広々としたリビング、落ち着いた色合いのキッチン、そして何より大きな窓から差し込む柔らかな自然光が、郁美の毎日の生活を彩っていた。

「そうなんだ。夕食は一緒に食べられる?」

あくびをしながら尋ねると、宗司は郁美のためにコーヒーを入れ、穏やかに答えた。

「たぶんね、そこまで長引かないと思う」

郁美はコーヒーカップを受け取りつつ、宗司に提案した。

「それじゃあ、今夜はワインバルに行ってみない? この前、散歩してるときに新しいお店を見つけたの」

「お、いいね。郁美はおいしい店を開拓するのがうまいからな。楽しみだよ」

そんな風にディナーの約束を取りつけたところで、宗司は重そうなカメラ機材を担いで仕事に出掛けて行った。フリーカメラマンになってからの彼は、どこか生き生きとしている気がする。きっと会社勤めをしていたころに比べて、余計なしがらみが少ないからだろう。元から個人で仕事をしていた郁美も、郊外に越してきてからの方が制作のクオリティーが上がった気がしていた。

子供のいないアラフォー夫婦の気ままな日常。せわしない都会の暮らしから解放され、宗司と2人だけの平和な時間が続く。郁美はようやく、望んだ人生を手にできたような気がしていた。

鼻をつく不快な臭い

新生活を始めてから3カ月。季節は初夏を迎えて気温が上がるにつれ、郁美はマンションの生活にある違和感を抱くようになった。最初に気づいたのは蒸し暑い日のことだった。窓を開けてリビングに風を通したとき、不快な臭いがぶわっと部屋に入ってきたのだ。

「ん? 何、この臭い……」

郁美は眉をひそめた。それは、何とも言えない、ツンと鼻を刺激するような臭い。ものの数秒嗅いだだけでも口の中に胃酸が込み上げてきそうな不快な臭いだ。強いて言えば動物園、いや公衆トイレの臭いとでもいうのだろうか。

風に乗って漂うその異臭は、何となく隣室から来ているように思えた。隣に住んでいるのは、川西貴理子という1人暮らしの女性だ。正確な年齢は知らないが、郁美は自分よりひと回りは上だろうと見当をつけていた。

引っ越しのあいさつに行ったとき、貴理子は不在だったため、郁美と宗司はドアノブに粗品を引っ掛けて帰ってきた。すると貴理子は、その日の夜、わざわざ初めましてのあいさつと粗品の礼を言いに来てくれたのだ。その一件で郁美は、貴理子のことを律義で真面目な人だと評価していた。

まさか臭いの原因が貴理子だとは思いたくなかったが、やはり気になるものは気になる。郁美は息を殺してベランダに出ると、こっそり仕切りの隙間から隣の様子をうかがった。だが、貴理子の部屋のベランダには、異臭の原因になりそうな物は何も見当たらない。

(やっぱり貴理子さんじゃないのか......)

郁美は、きっとマンションの誰かが偶然ゴミの処理を怠ったのだろうと考えることにした。しかし臭いは日を追うごとに増していった。特に気温が上がる日には、臭いが強まり、窓を開けられないほどになっていた。ついに耐えられなくなった郁美は、宗司に泣きついた。

「どうしよう、宗司。最近、隣から変な臭いがするの。ちょっと我慢できなくなってきた」

家を空ける時間の多い宗司は、それまで気にしていなかったが、郁美に促されてベランダに出ると即座に顔をしかめた。

「うっ……これはひどいね。何かが腐ったみたいな……取りあえず管理会社に報告しておこうか」

宗司の言葉に1度はうなずいた郁美だったが、数日後、エレベーターで偶然貴理子と一緒になったタイミングで、臭いのことを思い出した。

「ねえ最近、なんだか変な臭いがしません? あまりにも臭いがきつくて、暑いのに窓も開けられなくて困ってるんですよ。貴理子さんのところは大丈夫ですか?」

郁美はできるだけ穏やかに探りを入れた。貴理子は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに困ったように首をかしげた。

「え、そんなことが……? 私は、特に何も……気が付きませんでした」

そう言いながらも、貴理子はどこか歯切れが悪かった。結局、それ以上踏み込むこともできず、郁美は少しだけ世間話をしてからその場を去った。

悪臭の正体を確かめてやる

その後も臭いが改善される気配はなかった。宗司が管理会社に相談してくれたものの、臭いは日に日に強まるばかりで、郁美はいら立ちを募らせていった。

そしてついに我慢の限界に達した。

「ああっ、もう限界! こうなったら直接確かめにいこう!」

リビングで仕事をしていた郁美は、勢いよく立ち上がるとそのまま自宅を飛び出していった。

原因は分からなかったが、臭いの発生元が貴理子の部屋であることはもう分かっている。いつも穏やかに愚痴を聞いてくれる宗司が家を空けていたため、郁美を止める者は誰もいなかった。

●ついに貴理子の部屋に乗り込む決心をした郁美。悪臭の原因は判明するのか……? 後編【耐えがたい異臭…飼育崩壊の隣人に我慢の限界、猫が増えすぎた「驚きの理由」】にて、詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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