観光業界は本当にインバウンド需要増に沸いているのか? 景気動向指数から明らかになった実態とは
Finasee / 2024年10月7日 18時0分
Finasee(フィナシー)
能登半島地震により一時的に景気動向の悪化も「好調」の声多数
まずは観光業界の景気動向から。今回の調査は、株式会社帝国データバンクが全国2万7000社以上を対象に実施。企業の景気判断を7段階評価して点数を付与し、指標(景気動向指数)を作成。指標は0~100までの値を取り、50より上であれば「景気が良い」、下であれば「景気が悪い」を意味します。
結果、観光業界の景気動向は2024年8月で47.2。景気が良いとまではいかないものの、2023年3月から直近2024年8月まで18カ月連続で全業界を上回る水準が続いています。2024年1月の能登半島地震直後は旅行自粛のムードもあったのか、一時的に景気動向も45.8まで悪化。しかしその後は回復基調で、自治体による「いしかわ応援旅行割」などの振興策や円安による好調なインバウンドが追い風になっている可能性も。
調査に寄せられた声を拾ってみると、やはりインバウンドの恩恵を受けているのか、「インバウンド需要は好調」(飲食・北海道)といったポジティブな見方が。一方で地域によっては、「インバウンドの効果は地方では少なく限定的」(宿泊・福島県)、「夜間の人出が少なく、コロナ禍以前の水準に戻らない」(飲食・新潟県)、「南海トラフ地震臨時情報で最繁忙期の集客に大きなダメージがあった」(宿泊・和歌山県)といった声もありました。
出所:帝国データバンク 「観光産業の最新景況レポート(2024年8月)」訪日外国人客はコロナ禍前を上回るペースで増加前問でインバウンドに期待する声もありましたが、実際に訪日外国人客はどのくらい増えているのでしょうか。
日本政府観光局が公表した資料によると、2019年に3188万人だった訪日外国人客数は新型コロナウイルス感染拡大防止のため移動制限が始まった2020年に412万人と前年の7分の1弱に減少。2021年にはなんと25万人まで激減しました。
しかし移動制限がなくなった2023年は2507万人と大幅に回復。2024年はさらに歴史的な円安も追い風に1~7月までで推定2107万人と、2023年1~7月の1303万人を60%強上回るペース。このまま行けば2019年の水準も超えると予想されます。
しかし最近は円高基調のため、今までのような追い風がなくなる可能性も。また観光業界の人手不足や訪日外国人客の急増に伴うオーバーツーリズムも顕在化していることから、持続的な成長には、こうした課題を解消しつつ、新たな魅力を掘り起こす必要がありそうです。
出所:帝国データバンク 「観光産業の最新景況レポート(2024年8月)」本格的な回復は円安が落ち着いてから?訪日外国人客は増えていますが、日本人の旅行需要はどうでしょうか。調査では、観光庁の「主要旅行業者の旅行取扱状況」を基に旅行総取扱額の内訳を分析。
結果、2023年の国内旅行の総取扱額は2兆3559億円と2019年の2兆5661億円に迫る水準。それに対し2023年の海外旅行は1兆699億円と2019年の1兆8262億円の6割弱にとどまりました。円安による旅費の高騰がマイナスに影響している可能性もあります。
2024年も4~6月は国内・海外合わせて旅行総取扱額が速報値ベースで8596億円。2023年4~6月の8024億円に比べて7.1%増にとどまり、このペースだと2019年の水準を回復するのは厳しい状況。円安が落ち着いてからが本格的な回復になるのかもしれません。
出所:帝国データバンク 「観光産業の最新景況レポート(2024年8月)」調査概要 調査名:観光産業の最新景況レポート(2024年8月) 調査主体:株式会社帝国データバンク 調査対象:全国2万7000社以上
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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