「保険料なんて払いたくない」扶養に入り続けた50代女性が驚愕…見落としていた“年金面”のデメリット
Finasee / 2024年10月14日 11時0分
Finasee(フィナシー)
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大が行われ、短時間労働者でも社会保険の対象になりやすくなっています。「扶養を外れると社会保険料など負担が増える」と言われています。そのため扶養から外れないよう就労を調整する人も多く、これに対して政府は2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を実施するなど対策を講じているのが最近の動向です。しかし、扶養の範囲内での働き方を希望していたとしても年金の保険料が発生することもあります。
扶養の範囲内で働くことを希望する妻玲子さん(仮名・55歳)はパートタイマーとして勤務している女性です。夫の孝徳さん(仮名)は65歳を目前に控えていますが、玲子さんは結婚以来、その孝徳さんの扶養に入っていました。そして、これまで玲子さん自身と孝徳さんの収入をもとに家計のやりくりをして、支出をいかに抑えるかに腐心していました。
そんな中、玲子さんは3~4年ほど前、頻繁にパート先から勤務時間の増加とそれに伴う社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入を打診されていました。しかし、「夫の扶養から外れると保険料がかかって手取りが減るのは嫌だなあ」「扶養に入っているほうが気楽に働けるし」と思い、これを固辞。それ以降、他のスタッフの採用やそれに伴って人手不足も解消されたため、やがて会社から社会保険加入の話はされなくなりました。
孝徳さんは60歳の定年後も再雇用されています。数年前、孝徳さんは「うちの会社、70歳まで勤務できることになったんだよ。給料は下がるけど、自分はまだまだ元気だし、65歳以降も頑張るよ」と玲子さんに伝えました。
孝徳さんが継続勤務に意気込んでいるため、玲子さんは「じゃあ私も引き続き扶養に入れそう」と今までどおり扶養の範囲内でパート勤務を続けようと考えました。
手続きのため夫婦で年金事務所へ。そこで判明した事実とは?孝徳さんは「そういえば63歳になった時に年金の手続きしてなかったなぁ。働いていて収入も多いし別にいいやと思っていたけど。一度は年金事務所に行ってみるか」と年金のことを思い出します。そこで65歳になる直前のタイミングで、年金事務所に行ってみることにしました。玲子さんも一緒に説明を聞いておこうと考え、孝徳さんについて行きます。
年金事務所の窓口では職員より「孝徳さんの63歳から65歳までの特別支給の老齢厚生年金があります。在職老齢年金制度により、年金の一部はカットされます。しかし、それでもカットされない過去2年分さかのぼって支給されそうです」と案内されます。
孝徳さんは「働いていても年金は受け取れるものもあったんだな。何も知らなかった」と意外だったようです。
また、65歳以降の老齢基礎年金、老齢厚生年金の案内も受け、玲子さんが孝徳さんより10歳近く年下ということから加給年金も10年弱(玲子さんが65歳になるまで)加算されると説明がありました。
孝徳さんが「65歳からは給与も下がるのですが、年金を受けられても引き続き働くつもりです」と話すと、職員は「厚生年金の加入は70歳になるまで可能です。今後70歳までの間にかけた保険料は受け取る年金にプラスされることになりますよ」と言います。
「そうそう、社会保険も引き続き入れると会社から言われたなぁ。非正規雇用でも社会保険に入れることがあるみたいなんですよね」と会社から提示された65歳以降の勤務条件を思い出した孝徳さん。
そして、玲子さんは「夫が65歳以降も会社で働くというので、私も引き続き扶養に入るつもりなんです。これで保険料もかからず家計的には助かります」と職員に話します。
しかし、夫婦の年齢差を見て、職員はハッと何かを思い出しました。そして、玲子さんに対して「玲子さん、年金については扶養に入れません」と伝えます。さらに「玲子さんには合計で100万円ほど年金の保険料が発生します」と付け加えました。
「えぇ! 100万円も? どうしてそんなに? 私はパート勤務で、年収も多くないのに……」と驚きを隠せません。
保険料なんて払いたくないと思っていた玲子さん。夫は引き続き働いて社会保険に加入するというなか、扶養に入り続けたいと考えていた玲子さんはなぜ100万円もの保険料を払わないといけないのでしょうか。
●ずっと扶養の範囲内で働いてきたにもかかわらず、玲子さんが100万円の保険料を払わなければならない理由とは? 後編【夫の扶養に入っていたのになぜ⁉ パート勤務50代女性に100万円の年金保険料が発生した「まさかの理由」】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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