「このままでは資産運用立国にはなれない…」石破新政権誕生後のマーケットの動きを振り返る
Finasee / 2024年10月10日 13時0分
Finasee(フィナシー)
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石破さんの日本銀行に対する接し方が少し変わってきたかもしれません。マーケットはどのように反応しているのか。おそらく市場は石破政権が火消しに動いていると受け止めている。今回はそんな話をしようと思います。次のグラフを見てください。
7月31日からチャートを引き直し、10月3日木曜日までまとめたものです。日銀の追加利上げ決定が発表された当初、日経平均は一時3万9000円を超えました。しかし、日銀植田総裁の衝撃の記者会見があり、株価は一時3万1000円台まで急落しました。
8月7日に内田副総裁が、「どんどん利上げするわけではない、とりわけマーケットが非常に混乱しているときは利上げなどしない」趣旨の発言をし、マーケットは落ち着きを取り戻し、日経平均も3万8000円台まで戻っています。
しかしながら、大きな混乱があったことは事実です。なおかつ、利上げについては、「中立金利は1%以上ある」「目論見通り2025年に物価が安定的に推移するなら、金利は正常化する」など様々議論がありました。結果、日経平均は9月の頭にもう一度下がっています。
その後は、自民と総裁選の話題が盛り上がり、高市トレードなる言葉も登場しました、私たちの仲間内では「早苗バブル」なんて表現する人もいましたね。
とはいえ、バブルと言われようが、日経平均は上がり、総裁選の投開票があった9月27日には3万9000円を超えてきました。
おそらく総裁選の日にマーケットが織り込んだのは「もう追加利上げはない」ということでしょう。ところが蓋を開けてみると、勝利したのは緊縮派の石破さんだった。その結果、1900円安があり、もう一度下がった。その後石破さんが「しばらく利上げはない」趣旨の発言をして少し戻りましたが、大ドタバタは続いている。
ローソク足で見ると、そんなストーリーが見えてきます。
さて、こちらの画像を見てください。
日々の騰落率をまとめたものになります。たとえば、8月2日、5.8%下がっています。続く8月5日には12.4%下がっています。
しかし、6日には10%上がりました。13日には3.4%、16日も3.6%プラスになっている。そして9月に入ると、9月4日はマイナス4.2%に、9月12日はプラス3.4%となりましたが、9月30日にはまた4.8%下がりました。
つまり、8月、9月の2か月にわたって、3%以上の値動きのある状態が続いたわけです。マーケット参加者はくたびれてしまいますよね。
自慢話はたくさん聞こえてくると思います。しかし、ほとんどの人は儲かっていないでしょう。私はそう思います。
この2か月の間、実働40日における日経平均株価の動きの平均をとってみました。平均は0.05%です。つまり、チャラ。これはよいのですが、日々の騰落率のばらつきを示す標準偏差を取ってみると、3.12%と3%を超えていることがわかります。
結論から言えば、これほどばらつきのあるマーケットでは資産運用立国などできようはずがありません。揺れがずっと続いており、マーケットが沈静化しない。大きな問題です。
標準偏差3%の期間が2か月にわたって続くことがいかに異常か、次のグラフを見ていただければよくわかると思います。
年間246日ある営業日の騰落率の平均値と、標準偏差を1990年から2023年までまとめたものです。
左軸が日経平均の平均上昇率に当たります。マイナス0.2~プラス0.25%、だいたいゼロ近傍のところで収まっていますね。
対して、右軸が標準偏差です。こちらも、だいたいマイナス1~プラス1%大きく動いてもプラマイ2%で収まっています。
一か所だけ大きく膨らんでいる箇所があります。2008年です。年間平均騰落率はマイナス0.2%ですが、値動きは大きく、標準偏差は2.9%になった。これが、リーマンショックのときの動きです。
つまり、この2か月間、我々はずっとリーマンショック級の金融危機のさなかにいたようなものなのです。資産運用立国などできるわけがないですよね。
当然に政府・日銀は火消しに回っている。「豹変した」ともいわれますが、やり続けなければならない。マーケットが一度静まるまで絶対に利上げしてはいけないし、金融政策について口をはさんではいけないし、資産価格の安定化、揺れが止まるまでは、どうぞおとなしくしてください、そう関係者の皆さんは感じていると私は思います。
このあと解散総選挙があり、日々の動きが沈静化してくれた方が投資はしやすくなるでしょう。そうなれば、11月ごろからもう一度資産運用立国を目指す安定軌道に戻るのではないか。そう期待しています。
そのためには、一つの軸について考えねばなりません。それはデフレからの脱却です。アベノミクスの一つの功績として我々が認識しなければならない点があります。
アベノミクスなんとかデフレを耐え、そしてデフレを脱却できた。私はそう思っています。22年、23年、そして24年になりようやく人々もデフレからの脱却に確信を持ち始めてきた。賃金も上がり始めた。
しかし、石破政権の誕生により、デフレに戻るような政策が行われるかもしれない。そんなリスクを感じてマーケットは混乱しているように私は思うのです。
ただ、一つだけ言えることは、いろいろと波乱があっても、日経平均は3万円を割れなかった。年初の数字は3万3000円でしたが、そこから上がり、現在の日経平均は3万8000円台です。
少なくとも前には進んでおり、資産価格は増えている形です。不安にならずに、今一度冷静にマーケットを見守ってもらいたいなと思います。
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岡崎良介氏 金融ストラテジスト
1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。
マーケット・アナライズ編集部
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