夫の扶養に入っていたのになぜ⁉ パート勤務50代女性に100万円の年金保険料が発生した「まさかの理由」
Finasee / 2024年10月14日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
55歳の玲子さん(仮名)はパートタイマーで、まもなく65歳になる夫の孝徳さん(仮名)の扶養に入っています。孝徳さんは定年後も再雇用で、70歳まで働く予定です。
玲子さんは扶養の範囲内で働き続けることを希望していましたが、年金事務所で孝徳さんの年金手続きを行った際、なんと年金については扶養に入れないことが判明します。
それだけではなく100万円の年金保険料が発生することを知らされ、「えぇ! 100万円も? どうしてそんなに? 私はパート勤務で、年収も多くないのに……」と驚きを隠せません。
●前編:【「保険料なんて払いたくない」夫の扶養に入り続けた50代女性が驚愕…見落としていた“年金面”のデメリット】
玲子さんが年金で第3号被保険者になれない理由とは?会社に勤める孝徳さんに扶養されていた玲子さんはこれまで国民年金の第3号被保険者でした。そして、玲子さんは孝徳さんが65歳以降引き続き会社に勤めるというので、引き続きパート勤務を考えていました。しかし、健康保険の扶養に入れても、年金については扶養に入れません。
専業主婦・パート勤務などで、国民年金第3号被保険者というのは「国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者」となります。会社員などは厚生年金被保険者=国民年金第2号被保険者となります。しかし、厚生年金は最大70歳になるまで加入できるなか、65歳で老齢年金の受給権がある人は、65歳から70歳になるまで会社に勤めて厚生年金被保険者となっても国民年金としては第2号被保険者になりません。
つまり、老齢年金の受給もできる孝徳さんが65歳以降厚生年金被保険者となっても、第2号被保険者でないため、玲子さんも第3号被保険者になれないことになります。
そして、国民年金は60歳になるまでは加入義務があるため、第3号被保険者だった人は第1号被保険者に切り替わり、60歳になるまで国民年金保険料を納付することになります。
孝徳さんが65歳の時点で玲子さんは55歳2カ月。55歳2カ月から60歳の前月まで58カ月分、毎月国民年金保険料を納付します。国民年金保険料は2024年度が月額1万6980円、2025年度は1万7510円となります。58カ月分を合計するとその額が100万円程度になりそうでした。
第3号被保険者の時は玲子さん自身で保険料を払わなくても納付扱いとされました。しかし、第1号被保険者になってからの玲子さんは国民年金保険料を納付することで初めて納付扱いとされるので、この58カ月分をすべて未納にすると将来の老齢基礎年金が年間9万8600円少なくなります。
厚生年金に入っていたほうがよかった夫婦に年齢差がある場合は以上のようなことが発生しますが、玲子さんは国民年金保険料の納付と合わせて付加保険料の案内もされました。
付加保険料を国民年金保険料に上乗せして払うことができ、その結果、65歳から付加年金が受け取れます。「1万6980円でも多いのにまだ払うの?」と思いますが、付加保険料は月額400円で、付加保険料の納付は任意です。
しかし、付加年金は付加保険料1カ月納付につき年間200円の付加年金が支給される計算です。つまり、2年以上付加年金を受給すると払った付加保険料以上の額が受け取れる計算で、60歳の前月まで58カ月分の付加保険料2万3200円の納付で、1万1600円の付加年金の支給となります。
「せっかく第1号被保険者になるなら付加保険料も納付するとよろしいのでは」との案内でした。
孝徳さんが65歳になって玲子さんは第3号被保険者から第1号被保険者に切り替える手続きを済ませ、とりあえず、今後国民年金保険料と付加保険料の納付をしていくことになりました。
「けど、やっぱり高いな。こんなに保険料がかかると分かっていたら、パート先の勤務時間増やして扶養から外れていたほうがよかったかも……」と思うようになりました。
それまで支出を抑えることばかりを考えていた玲子さん。保険料の支出はあっても、健康保険、厚生年金保険それぞれの保障の厚さなど社会保険に入ることのメリットも理解することになり、今から社会保険の加入ができないかを模索することにしました。
社会保険に加入するかどうかは、目先の支出のことだけでなく、将来のことも見据えて考えてみると良いでしょう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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