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遺族年金を受け取った妻が抱いた感謝の想い。亡き夫が生前にしていた“抜かりない備え”とは

Finasee / 2024年10月22日 17時0分

遺族年金を受け取った妻が抱いた感謝の想い。亡き夫が生前にしていた“抜かりない備え”とは

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

義伸さんと亜美さんは42歳の夫婦です。2人は10年以上前に当時の職場で出会い、義伸さんの熱心なアプローチの末、結婚しました。

その後、義伸さんは個人事業主として働いていましたが、将来にしっかり備えようと考え、株式会社を設立し法人化しました。亜美さんも当時の会社は退職して、非正規雇用でマイペースに働いていました。

ところが会社設立から2年後。不幸なことに義伸さんは山登り中の事故で亡くなってしまいます。亜美さんは突然の出来事に動揺しつつ、年金事務所で遺族年金と死亡一時金を受け取れることを知りました。

●前編:【万が一のことがあっても生きていけるように…40代男性が最愛の妻のため準備していた「年金の対策」】

「法人化」がカギとなり妻に遺族厚生年金を遺せた

義伸さんが亡くなり、亜美さんに遺族年金が支給されることになりました。子どもがいないため、遺族年金のうち遺族基礎年金は対象にならず、遺族厚生年金の対象になります。

その遺族厚生年金が支給されるためには、亡くなった人がその死亡当時、次の①~④のいずれかに該当している必要があります。

①厚生年金被保険者であること
②厚生年金被保険者であった人で当該被保険者期間中に初診日のある傷病により初診日から5年以内に死亡していること
③障害厚生年金受給権者(障害等級1級・2級)であること
④老齢厚生年金の受給権者あるいは受給資格期間を満たした人(いずれも受給資格期間が原則25年以上あること)であること

①②③は短期要件、④は長期要件とされています。

義伸さんは法人化し、会社から役員報酬を受ける立場ということから、亡くなった当時厚生年金に加入中でした。そのため①を満たします。②③は該当せず、また、20歳以降国民年金や厚生年金に加入していたものの、亡くなった42歳当時25年の受給資格期間がなかったため、④は満たせません。もし、義伸さんが法人化していなかったら厚生年金に加入せず、①②③④いずれの要件を満たせず、結果、そもそも遺族厚生年金は支給されなかったことでしょう。

亜美さんは年間110万円ほど受け取れることに

義伸さんの厚生年金としての加入期間が15年(180カ月)程度でした。遺族厚生年金は亡くなった人の加入記録で計算された老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3で支給されます。

ただし、短期要件(先述の①②③)では、厚生年金加入月数が300月未満の場合は300月にみなして計算することになります。若くして死亡した場合に年金額が少なくなりすぎないようにするためです。その結果、180カ月程度の実期間で計算するよりも1.6倍以上多く計算され、年間50万円弱の遺族厚生年金となりました。

そして、義伸さんが亡くなった当時、亜美さんは40歳以上で、子どももいなかったため、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算61万2000円(2024年度の年額)が加算されます。

長期要件(先述の④)の場合は亡くなった人が240月以上厚生年金に加入していないと加算されませんが、短期要件の場合は180月程度の義伸さんのように240月未満でも加算されます。

寡婦加算込みで年間110万円となりましたが、寡婦加算があるのとないのとでは大きく年金額が異なることでしょう。

他に、義伸さんは国民年金第1号被保険者期間中(学生時代や個人事業主時代)に国民年金保険料を36月以上納めていたため、亜美さんには死亡一時金として12万円が支給されることになりました。

もしもの時に備えてくれた夫に感謝の想い

以上のような説明を年金事務所の窓口で受けた亜美さん。年金以外に貯蓄からの遺産もあり、義伸さんは自身がどうなったとしても亜美さんが生きていけるようにと抜かりなく備えてくれていました。亜美さんがもし義伸さんと結婚せず、独身を続けていたらこれらはなかったことでしょう。

こうして亜美さんは生前義伸さんが言っていた言葉の意味を知ることになりました。遺族年金は再婚すると受けられなくなります。しかし、亜美さんは「再婚はまずないかな」と思い、夫に感謝しながら新しい生活を始めました。また、自ら社会保険に入って働くことも検討し始めることにもなったのでした。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。

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