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定年後の労働もそんなに悪くない? 60代以降も働き続けることで得られる「意外な恩恵」

Finasee / 2024年10月17日 18時0分

定年後の労働もそんなに悪くない? 60代以降も働き続けることで得られる「意外な恩恵」

Finasee(フィナシー)

定年後の労働はマイナスなことばかりではない

定年後に働くことにネガティブな印象を持つ人は多いと思いますが、実は多くのメリットが見られるのです。

まず、ある一定の収入が得られます。私はいま66歳で年金を受け取っていますが、この年齢になると働いて得た収入が少しでもあると大変ありがたいと思えます。一線で働いていた時期に比べれば微々たる収入ですが、結構うれしいものです。

おそらく手に取るお金が限られるようになり、そこに価値を見いだすようになったのだと思います。シニアは年齢的にも教育費や生活費にそれほど多くの支出はかかりませんし、自分の好きなことにお金が使えます。これが何ともいえずうれしいものなのです。

また別のメリットとしては、定年後の仕事は、自分でコントロールしやすい、ということがあげられます。自分のペースに合った仕事を選択でき、働く日数、時間も調整しやすいのです。責任ある立場から離れる人が多いこともあり、ストレスもたまりにくくなります。ストレスフリーな状態のありがたさは定年後になってよく分かります。

調査によると働く満足度も、人生の幸福度も、60歳前後から右肩上がりに伸びていく(リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」2019)ので、全体的に見て、定年後は案外ポジティブに考えていいのでしょう。

働くことで運動量や人との交流も増やせる

一方、定年後だからこそ気を付けないといけない、大きな注意点があります。それは若い頃(50代まで)には意識していなかった「健康」についてです。

定年前後になってくると、徐々に身体の不調や体力の衰えを感じてきます。健康診断でも再検査の項目が増え、生活習慣病を意識せざるを得なくなります。

そこで、かねてより病気の予防に有効と言われている「運動」「脳機能の活性化」の実践が重要になってくるのです。

定年前は通勤が運動になり仕事でもいろいろな人と話すのでそれほど問題になりませんが、定年後は自宅にいる割合が多く、運動量も減り、人と話す機会もめっきり減ってきます。運動しないといけないと分っていても、また人との交流もしなくてはいけないと分かってはいても、ついつい億劫になるのが年を取るということなのです。

こういった現状から考えて、健康維持に必要と言われる「運動」「脳機能の活性化」に対し、「働く」ことが有効となるでしょう。

シニアが労働で得られる意外な恩恵7つ

働くことは想像以上にいろいろなメリットがあります。特に私が実感しているものを項目ごとに7つにまとめてみました。

【お金のメリット】

①年金に加えて多少なりとも収入があるので生活に余裕が持てる

【健康に対するメリット】

②規則正しい生活のリズムができる
③頭を働かせることで、物忘れへのリスクに備えられる
④適度な疲労があり、睡眠が深くなる
⑤自分のペースで働けるので、ストレスがたまらない

【孤独予防のメリット】

⑥仕事関係の人との会話があるので、孤独感から逃れられる
⑦自分は人に役立っている、という自己有用感が持てる

このように働くことで多くのメリットを得られます。

100歳を超える人が多く暮らす世界の5カ所の長寿地域のことを「ブルーゾーン」と呼びます。どの地域の長寿者もよく歩き体を動かしていて、長寿者は農作業をするなどよく働いています。日本においても農業をされているシニアの方はお米作りや畑仕事で働かれていて、お元気な姿をよく見かけます。

また「認知症になった人」と「認知症にならなかった人」を統計的に調べた研究では、認知症にならなかった人がやっている習慣として、もっとも有意差がでるのは「運動」することでした。働かないで家にいるよりは、職場に行くことで定期的に身体を動かした方が良いと言えるでしょう。

データで読み解く健康と高齢者の関係性

さらに詳しい情報を知りたい方に向けて、ここで健康と高齢者の労働に関するデータをいくつかご紹介します。

・「Employment in old age and all-cause mortality: A systematic review」(Hiroshi Murayama, Mai Takase, Saya Watanabe, Keiko Sugiura, Isuzu Nakamoto, Yoshinori Fujiwara, Geriatrics Gerontology, First published: 04 August 2022)

本研究は、高齢期(60歳以上)の就労と全死亡率の関係を検討することを目的としています。高齢になっても働くことは死亡リスクの低下と関連しており、高齢者の健康の促進と維持につながることが分かりました。

・「Effects of the Change in Working Status on the Health of Older People in Japan」(Ushio Minami,Mariko Nishi,Taro Fukaya,Masami Hasebe,Kumiko Nonaka,Takashi Koike,Hiroyuki Suzuki,Yoh Murayama,Hayato Uchida,Yoshinori Fujiwara, PLOS ONE Published: December 3, 2015)

和光市で 1768人の参加者が2年ごとに3回にわたる調査質問票に回答した調査です。その結果、フルタイムの仕事からの退職は65歳以上の高齢者の精神的健康と高次の機能能力を悪化させるのに対し、パートタイム労働はこれらの影響を和らげることができたと報告されました。

・「Employment and health after retirement in Japanese men」(Shohei Okamoto, Tomonori Okamura, Kohei Komamura, Bulletin of the World Health Organization. 2018;96(12):826-33.)

東京都健康長寿医療センター研究所が調査主体である「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査(JAHEAD)」の1987年~2002年(第1回~第6回)の調査において、60歳以上の就労がその後の健康状態に与える影響を、傾向スコア解析を用いて推計したものです。その結果、高年齢期の就労は、非就労者と比較した場合に、糖尿病で約6年、脳卒中で約3年、認知機能と死亡で約2年、発生(アウトカム)に差がついたことから、寿命と健康寿命を延ばす効果があることが示唆されています。

***
 

これらの結果を見ても、働くことで健康を維持でき、社会との関わりを持てることは大きなメリットです。

ただ注意しなくてはいけないことは、高齢になるにしたがって体力が落ちてくるので、身体を酷使する仕事でなく、自分の体力に合った働き方に移行しなくてはいけないという点です。それにはフルタイムでなく週に数回、数時間の働き方を選択し、オンラインでの仕事を検討するのも良いでしょう。

また自分に合った仕事という意味では、自分の好きなことをするのが長続きの秘訣(ひけつ)になります。加えて仕事のやり方を工夫し改善することが、実は自己成長につながっていることを忘れてはいけません。仕事に自分の役割を見いだし、それに取り組む姿は何歳になっても素晴らしいことです。

働くことで収入を得ながら幸せになる、働ける間は働くということは、定年後のファイナンシャル・ウェルビーイングを実践する1番の近道になるでしょう。

髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰

1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

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