10月12日配信分
Finasee / 2024年10月17日 13時0分
Finasee(フィナシー)
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今回は個人的に着目した出来事についてお話します。アメリカの大統領選挙の勝敗を分けるのは19名の選挙人がいるペンシルべニア州という話があります。
私は過去の失業率は雇用統計をさかのぼって、FFレートも過去のデータを見て、日本のGDPについても自分なりのデータを集め、分析して皆さんにお伝えする主義です。
ですが、実はこれまで一度もアメリカ大統領選挙でどこの州が勝つか負けるかについて、ちゃんと調べたことがありませんでした。今回は私自身も一度、アメリカ大統領選挙の行く末について、自分なりに調べてみようと思った次第です。
さて、私は絵や数字でないと情報が頭に入ってこないタイプですから、ひとまずこんなグラフを作ってみました。インターネットから資料を集めて作成したものです。
縦はアメリカ各州がアラバマからABC順に並んでいます。横軸は1984年、レーガンが勝った大統領選挙から順に88年、92年、と2020年までの大統領選挙の勝利者を並べました。
グラフ内に赤で記載されているのが、共和党陣営が勝った州、青が民主党陣営が勝った州です。
選挙のたびに勝利者が変わる州を「スイング・ステート」と呼びます。例えばフロリダ州は96年、ビル・クリントン大統領が勝った選挙では民主党が勝っていますが、ジョージ・W・ブッシュ大統領が誕生した2000年の選挙では共和党の勝利した州の一つになっている。結構リズミカルです。
対して、たとえば、ミシシッピ州はずっと、共和党が勝っていますし、ミネソタ州は青ばかりです。面白いですよね。
ミシガン州も興味深い。92年のクリントン大統領誕生以降はオバマ政権までずっと民主党が勝っていたのですが、トランプが勝ったときだけ共和党に鞍替えしている。フロリダでも似た傾向が見て取れます。
ほかの州の動きも見ていきましょう。ペンシルベニア州です。2016年の選挙では、ペンシルベニアを共和党が取ったからトランプはヒラリー・クリントンにかった。逆に、2020年の選挙では民主党がペンシルベニアを取ったのでバイデンが勝ったというわけです。
ウィスコンシン州も同じですね。16年の選挙ではトランプが取った。けれど、20年の選挙では民主党が取り返した。
このように各選挙での動きを可視化してみると、なるほど、スイングステートを見ていくとだいたい選挙の行方が分かるのだな。そう感じました。
また、過去の選挙結果を見ると、各大統領の人気がわかるのも面白い。1984年の選挙は、真っ赤で、レーガンがいかに人気だったかがわかります。逆にクリントンの2期目はほとんど青。やはりアメリカの民意ははっきりしているなと思います。そして、堂々と鞍替えもしていく。
さて、ここからは、今後の大統領選で激戦が予想される州について考えていきましょう。
アリゾナ、フロリダ、ジョージア、ミシガン、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン。
激戦が予想されるこの8つの州、合計135名の選挙人をどう取るかで勝負は決まるだろうと言われています。ここにネバダ州を加える、そんな意見もあるようです。冒頭の話に戻せば、この中でペンシルベニア州が最後のカギを握りだろうとされている。
ここでふと、私は考えてみました。「なぜ、8つの州が赤と青を行ったり来たりしているのか」と。
こんなグラフを作ってみました。
8つの州の失業率をまとめたものです。右端の緑が全米の失業率を表しています。2016年の選挙を見ていきましょう。ヒラリー・クリントンが負けた選挙で「ラストベルト(ミシガン州・オハイオ州・ペンシルベニア州)」という言葉がキャッチフレーズになりました。
この時の失業率を見てみると、共和党が勝った州はたいてい全米よりも失業者が多い州だったと言える結果が出ています。
対してトランプが負ける2020年を見ていきましょう。コロナが明けてリオープンされる前の選挙でした。当時の全米失業率は約6.7%です。グラフをみると、ラストベルトのうち、ミシガン州とペンシルベニア州は全米失業率よりもさらに悪い数値を記録していることがわかります。
特に失業率が高く「取り残された」と言ってよいのがペンシルベニア州ですね。つまり、トランプ大統領になってもラストベルトの失業率は改善せず、むしろ上がってしまった。
「感染症のせいだ」「好き嫌いの問題だ」トランプの敗戦をめぐってはさまざま議論がありますが、結局のところ失業率が非常に重要なバロメーターだったのではないかと私は考えています。
ここからは失業統計を見ながら、今回の選挙について考えていこうと思います。2024年8月の全米失業率は4.2%です。さて、トランプ政権のとき取り残されたペンシルベニア州を見てみましょう。失業率は3.4%と、8%以上あった失業率がバイデン政権の4年間で劇的に改善されています。
ほかにも、アリゾナ州、フロリダ州など、軒並み全米より低い失業率になっている。2016年、2020年とは全く違う状況になっています。つまり、失業率という観点から見れば、ラストベルトにあたる州は現政権への不満を抱きにくいのではないか、そう考えられるのではないでしょうか。
とはいえ、結果を決めるのはアメリカ国民です。10月、11月と選挙は続きます。これから出てくる世論調査も見ながら、アメリカ大統領選挙の行く末を見守りたいと思います。
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岡崎良介氏 金融ストラテジスト
1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。
マーケット・アナライズ編集部
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