ねんきん定期便の見込額が想定より少ないのはなぜ? 60代女性が知らなかった年金額の「正しい確認方法」
Finasee / 2024年10月26日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
晴奈さん(64歳)は既に仕事をリタイアした夫の秀昭さん(68歳)と2人で暮らしており、70歳まで現在勤めている会社で働くことを検討しています。年金に関心を持つようになったのは62歳の時のこと。特別支給の老齢厚生年金の請求ができるようになり、年金事務所に行ったことがきっかけでした。
当時、窓口の職員からは「年金の合計としては62歳から65歳までは年間30万円、65歳からは年間110万円」を受け取れると案内されていました。ところが、帰宅後にねんきん定期便を確認したところ、年金事務所でもらった見込額より少ないことに気付いて困惑します。
一体どちらの見込額が正しかったのでしょうか?
●前編:【あれ、どうして…? 60代女性がねんきん定期便を見て困惑、記されていた年金額に不安を抱いたワケ】
「ねんきん定期便」は届いた月の4カ月前までの記録当時62歳だった晴奈さんは、将来受けられる年金額について、年金の請求をした際に年金事務所から渡された見込額と「ねんきん定期便」の見込額の差が気になりました。「ねんきん定期便」の方が少ない金額で表示されていたのです。
2つの見込額のうち、どちらが正しいのかを確かめるべく再び行った年金事務所では別の職員が担当しました。「これって一体どちらが正しいのですか?」と晴奈さんは確認します。するとその職員はまず「ねんきん定期便」の見方から説明し始めました。
「60歳以上の方ですので、その定期便はお誕生日の月の4カ月前までの加入記録が含まれています。晴奈さんは厚生年金加入中ですが、62歳の4カ月前の厚生年金被保険者期間は106月です」と説明がされます。
続けて「しかし、62歳を迎えてすぐ年金事務所で試算した際の月数は62歳の前月までの期間が含まれていて、こちらは合計109月になります」との説明でした。
計算されている月数に差があることが明らかになり、その結果、年金事務所で試算した62歳からの特老厚の額のほうがわずかに多くなっています。晴奈さんは両者の月数表示に違いがあったことに気が付き、「ということは……前回ここで提示された月数や額のほうが最新のものなのね」と悟ります。
「ねんきん定期便」は誕生月に届くように作られています。そのため、4カ月前までの加入記録しか反映されておらず、月数も年金額もその分少なくなるということになります。
65歳以降の年金額が大きく乖離する理由「じゃあ、65歳からの年金はどうなるのですか。こっちは合計110万円と合計97万円で差は13万円。大きく違うみたいですけど……」と晴奈さんは続けて質問をします。
その質問に対しては、「65歳以降の老齢基礎年金や老齢厚生年金は『ねんきん定期便』ではやはり62歳の4カ月前の記録で計算されていますが、年金事務所での見込額は今の加入条件で65歳まで勤務したことを前提とした額となります」との回答がされました。
晴奈さんは少なくとも65歳まで今の会社に勤務する予定のため、62歳から65歳まで同じ給与で3年間厚生年金に加入したことを前提として試算がされていました。「厚生年金の加入月数は109月に36月を足した145月になって年金が計算されています」という回答で、当然106月で計算するよりも多くなっています。
「65歳まで厚生年金に加入すれば、老齢厚生年金は報酬比例部分だけでなく、経過的加算額(老齢基礎年金相当額)も増えていますので、2階建てで年金が増える効果が得られます。なので厚生年金加入月数が106月の試算と145月の試算では金額が大きく異なります」ということでした。
さらに「振替加算は『ねんきん定期便』には表示されません」と補足され、前回年金事務所では、このままいけば加算条件を満たす振替加算も含めて試算されたと説明がされていました。
これらの理由により65歳以降の2つの見込額を比較して、13万円という大きな差が生じていたのです。
「ねんきん定期便」に見込額が表示されなくなる晴奈さんは納得し、「ねんきん定期便」の見込額は簡略化したもので、年金事務所で試算した額のほうがより現実に近いものとなることを知りました。「ねんきん定期便」は見込額が表示されるといっても万能ではないということになります。
年金を受給できるようになっても、年金の被保険者になれば毎年「ねんきん定期便」が届くことになります。しかし、既に年金の請求を行っている人には、見込額は表示されなくなります。年金の受給者となると、見込額ではなく実際の支給額となり、今後支給額が変わることになると、「支給額変更通知書」が届くことになります。
とはいっても「65歳も過ぎて70歳まで働いた場合の見込額が知りたい」「給与が変わった場合の見込額を知りたい」と思うこともあるでしょう。そういった年金額の変動について気になることがある場合、年金事務所等に行くか、ねんきんネットを見て確認しながら今後を計画すると良いでしょう。
晴奈さんは、当初2つの年金見込額を見て動揺しましたが、これを機に今後の年金受給についての理解が深まり、将来の見通しも立てやすくなりました。65歳が近づく中、また年金額や制度の仕組みを確認しに行くことに決めたのでした。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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