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外国株式インデックスがもてはやされる中で異彩を放つ「外債ファンド」。広島銀行ではなぜ売れるのか?

Finasee / 2024年10月31日 7時0分

外国株式インデックスがもてはやされる中で異彩を放つ「外債ファンド」。広島銀行ではなぜ売れるのか?

Finasee(フィナシー)

広島銀行の売れ筋に債券ファンド

広島銀行は、広島県広島市に本店を置く中国地方で最大規模の銀行だ。「ひろぎん」の愛称で親しまれ、国内店舗は151本支店6出張所(2024年5月末現在)の店舗ネットワークがある。海外にも上海とバンコック、ハノイに駐在員事務所を配置する。国内有数の大手地方銀行だ。

広島銀行の取扱投信は2024年9月末時点で126本。NISA「つみたて投資枠」の対象商品は19本、「成長投資枠」は75本、また、インターネット専用は47本になっている。多様な商品ラインアップの売れ筋ランキングをみると、バランスファンドやインデックスファンド、また、米国株式ファンドや高配当株式ファンドといった全国的に人気のあるファンドに交じって「2050年満期米国国債ファンド(年4回分配型)『愛称:2050米国債』」や限定追加型の債券ファンドがトップ5に入っている。外国債券ファンドが売れ筋に選ばれている背景を広島銀行に聞いた。

2050年に償還される米国債を満期まで保有

広島銀行は積極的に債券ファンドを提案しているように感じられる。「2050米国債」は2024年6月の新規設定ファンドであり、毎月のように単位型の債券ファンドの取り扱いがある。特に、今年に入ってから外債ファンドの取り扱いを強化したのだろうか? 広島銀行営業企画部個人企画室担当課長の新井謙一氏は、「意図的に集中して提案しているわけではなく、あくまでポートフォリオの一部として提案。昨今海外株式ファンドの人気が高まっていることから、株式に偏重しているお客さまも多く、是正を促す狙いもある」と語る。

これには、顧客との折衝を繰り返す中で、「銀行のお客さまには積極的に運用してキャピタル(値上がり益)を狙うものよりも、安定したインカム(利息・配当収入)がある商品性の方が受け入れられやすい」という考えをくみ取ったという背景もあるという。株式インデックスファンドや米国株式ファンドなどは、株価が値上がりを続ける間は、高いリターンが期待できるが、反対に株価が不調の時には思わぬ投資評価損を抱えることがある。株式よりも値動きを抑えられる可能性の高い債券は顧客ニーズにも合い、さらにここ数年の金利上昇によって外国債券には投資の魅力が高まってきている。

6月以降、店頭での販売で常にトップ5に入っている「2050米国債」については、米国債に投資するというわかりやすさに加えて、「米国債は国内外の株式やリートと相関が低く、株式中心のポートフォリオに当ファンドを加えることで株価下落の影響を一部抑制する効果が期待される」というリスク分散効果が商品の説明ポイントの1つになっている。また、同ファンドは2050年に満期を迎える米国国債を主要な投資対象にしているが、2023年以前に発行された米国の超長期国債は、2023年の米国の利上げによって価格が大幅に下落することになった。国債は満期まで保有すると額面で償還されるため、満期の額面償還を前提とした利回りの見通しが立つこともポイントだ。

同ファンドを設定・運用する日興アセットマネジメントの債券運用部の柳瀬高子氏は、同ファンドの商品としての魅力について「満期(償還日)に額面で償還される『資産保全性の高さ』、長期間保有することで得られる『安定的なインカム収入』などの特性を最大限活かすことをめざすファンド」と紹介する。そして、2024年6月の設定について、「当ファンドが現在投資している2050年に満期を迎える米国国債は、信用力の高い債券でありながら足元の価格は額面を大幅に下回っています。こうした魅力的な投資機会は、現在投資している当該米国国債が歴史的に金利水準の低い時期に発行され、その後に金利が急上昇する、まれな市場環境により生じたものと言えます」と設定時の環境を解説する。今後、同ファンドでは2050年の満期償還まで、継続的なクーポン(利息)収入を取り入れ、償還差益の獲得をめざすことになる。

同ファンドの月報によると、2024年8月末時点の組み入れ銘柄は4銘柄だが、各銘柄の価格は52ドル~64ドルで加重平均価格は57.75ドル。これらが2050年の満期には100ドルで償還されることになる。このため、8月末時点のポートフォリオの直接利回りは年2.68%、最終利回りは年4.28%になっている。今後は、直接利回りに相当するクーポン収入を得ながら、米国債の価格変動と米ドル(対円)での為替変動の影響を受けながらの価格推移になる。設定以降に円高になったこともあって基準価額は9500円台に下落することもあったが、米国金利の低下による債券価格上昇の影響が長期債ほど大きく出た関係で下落は抑制された。四半期決算で、9月18日の第1回の分配金は1万口あたり30円になった。今後、為替市場が落ち着いた動きになれば、クーポン収入を得ながら、償還に向かって債券価格が100ドルをめざして緩やかに上昇することが期待される。

販売期間が限られた「限定追加型」を提案する理由

一方、広島銀行では単位型の債券ファンドの採用にも積極的だ。8月の店頭販売額ランキングのトップには「GSグローバル社債ターゲット2024-09(限定追加型)『愛称:ワンロード2024-09』」が、9月には「One円建て債券ファンド3 2024-11『愛称:円結び3 2024-11』」が第2位に入った。いずれも限定追加型の外国債券ファンドであり、設定後一定期間しか追加募集ができない。このような期間限定の商品をコツコツと取り扱っている理由について、広島銀行の新井氏は「『為替リスクを低減し、信託期間が決まっている』ことで投資信託での運用経験がないお客さまでも分かりやすい商品」と位置付けているという。投資未経験者に対して「『値動きがある商品を保有すること』に慣れていただく」という点では、5年間程度で債券の持ち切り運用を行うことで最終利回りが分かりやすい同ファンドは、理解が得られやすいということだ。

「ワンロード2024-09」を設定・運用するゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント投信営業部の内村巌氏は、同ファンドの設定の狙いについて「『ワンロード』シリーズは日本全体で1000兆円超の資金が現預金に停滞している状況から、いかに資産運用への第一歩を踏み出していただけるかを重点に考えて設定したファンド」と語る。広島銀行も取り扱った「限定追加型ワンロード」は2022年6月の初回ファンド設定から「2024-09」で5本目になる。また、5年間の持ち切り運用を4回繰り返すことで最長で20年間の運用ができる「追加型ワンロード」を新NISA対象商品として新規に立ち上げている。

「ワンロード2024-09」は、ポートフォリオの実質的な最終利回りは年1.30%程度、平均クーポンは4.75%、平均残存年数4.04年、平均格付けはBBBマイナス(2024年9月24日現在)になっている。為替をヘッジして円ベースで最終利回り年1.30%程度という水準は、たとえば、9月に募集された個人向け国債の固定5年(第162回)の利率(税引前)0.51%と比較すると魅力的な水準といえる。大口の投資家が安定的な収益を求める場合でも、運用利回りのイメージがつきやすい点でニーズが大きいだろう。

債券で値動きを体験し、株式、バランスファンドへステップアップしてほしい

広島銀行では、このような限定追加型の債券ファンドによって、「値動きのある商品」を経験してもらったうえで、「将来的には株式ファンド、バランス型ファンドへのステップアップを考えていただく」ということを意図している。預金から投資商品への移行を丁寧に進めているのだ。

国の政策として「資産運用立国」や「貯蓄から投資へ」を掲げ、新NISAという枠組みを用意したとはいえ、実際に顧客と向き合い、投資商品を説明、提案するのは銀行などの販売会社だ。投資の果実が大きい株式ファンドを最初に提案し、それが、もし8月上旬の20%安などのような急落に見舞われて含み損を抱えてしまえば、預金しかしていなかった人は、「銀行にだまされた」というような感情を持ってしまいかねない。将来の市場変動は誰にも予測できないものであるだけに、一歩ずつ歩みを進める姿勢が重要だろう。

値上がりの大きかった米国株式に偏った運用をしている投資家に分散投資を提案したり、投資初心者に限定追加型の債券ファンドを提案したりといった、バランスのある金融機関のアプローチは、その地域の金融資産を考えた時に、中長期的で安定的な成長につながるだろう。若い層を中心に、SNS等で情報を集めて株式インデックスファンドを使った積立投資を始めるというケースも増えているが、それができる人は一握りだろう。圧倒的大多数を占める「投資未経験層」に、どのようにして投資の第一歩を踏み出してもらうのか? 地方銀行をはじめとした投信取扱機関の挑戦は続いている。

執筆/ライター・記者 徳永 浩

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。

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