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「自分たちには権利がある」裕福な義家族からの遺産分割の要求に困惑、夫を亡くした女性の相続争いの行方は…

Finasee / 2024年11月2日 11時0分

「自分たちには権利がある」裕福な義家族からの遺産分割の要求に困惑、夫を亡くした女性の相続争いの行方は…

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

60代の西さん夫婦は相続について相談するために行政書士事務所を訪れた。そこで一通り遺言書の重要性を説明されたものの、子どもがおらず親族も遺産を求めてこないだろうという理由から、遺言書は不要として資産整理のみを希望した。

しかし、2年後に夫の孝明さんが亡くなると、孝明さんの兄と妹が妻の愛子さんに遺産分配を要求してきた。遺産は自分のものだと思い込んでいた愛子さんにとっては寝耳に水。当面の生活費に加えて老後の生活費も遺産をアテにしていたことから、人生を左右する大問題となった。

●前編:【夫の遺産を老後資金にあてるはずだったのに…1人残された妻が驚愕した義家族の「理不尽な要求」】

かなわなかった孝明さんの生前の願い

生前の孝明さんはといえば「兄と妹には相続はお前にと言ってあるから」と愛子さんへ伝えていたのだが……実際の兄妹は当然のごとく愛子さんへ遺産分割を要求してくる。

「自分たちは兄弟姉妹なのだから遺産を受け取る権利がある」。そう言って迫ってくる義兄妹になんとか対抗できないかと愛子さんは必死に知恵を絞ったが、それは不可能だった。

それも当然だ、子や父母などがいなければ最終的には兄弟姉妹が相続人となることは法律で決まっているからだ。

法律を曲げるには遺言書しかない

結局のところ愛子さんは法律通り、相続財産の4分の1となるよう、8分の1ずつ義兄と義妹に遺産を分配した。両名とも単純に「お金が欲しい」とのことだったので遺産分割の手続き自体はすんなり進んだ。

念のため義兄と義妹に話を聞いてみると口をそろえて「権利なんだから当たり前じゃない」と回答。孝明さんが生前に言っていたことと違うのでは? と問うてみても、「自身の老後が……」など漠然とした理由を話すばかりだったという。

愛子さんが孝明さんの遺産をすべて相続するためにはどうするべきだっただろうか。方法としては孝明さんがその旨の遺言書を作っておく他ない。言い換えれば遺言書さえあれば愛子さんは遺産をすべて守りきれたのだ。

当面の生活費も、老後の生活費も不安なく守れたし、何なら好意的な目で見ていた義兄と義妹との良好な関係も守ることができた。遺言書を作成しなかったばかりに財産も人間関係も失ってしまったわけだ。

余談になるが義兄は県庁職員だ。義妹は夫がそこそこの規模の地主だ。2人ともお金に困るような状況とは程遠い。しかし、それでもなお金が入ってくるとなれば欲しくなるのが人間なのだ。

兄弟姉妹の遺留分は遺言書で封じられる

法律に少し詳しい人なら遺留分の存在について知っているだろう。遺留分とは最低限の相続分だ。例えば兄弟3人という相続において遺言書の中に特定の相続人だけに相続させたり、逆に特定の相続人を廃除するような記載があったりしても最低限の相続分は確保されるというものだ。

遺留分は原則遺言書であっても廃除できない。だが、兄弟姉妹の場合は別だ。遺留分が与えられているのは子や親などであり、兄弟姉妹には認められていない。

つまり、配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続人である場合は遺言書1枚ですべての相続財産を配偶者に残せるわけだ。逆にそうしなければ配偶者のためにすべての財産を残せないと考えていい。

確かに遺産分割においての話し合いで亡くなった人の兄弟姉妹が遺産を不要だといえば配偶者がすべての遺産を相続することもできるのだが、それは現実的ではない。

事実、愛子さんの義兄と義妹も恵まれた状況であり、当初は遺産をもらうつもりはない考えを示していたが、いざ遺産が手に入る状態になるとそれを翻した。

それほどまでに遺産の存在というのは魅力的であり、人の言うこと、口約束はアテにならないというわけだ。

現在の愛子さんの生活は…

その後の愛子さんは当初予定していた生活とは異なる生活をしている。貧乏、というわけではないが生活のレベルを少し落とし、本人いわく「つつましやかな生活」をしているという。

兄弟姉妹が相続人となる場合は彼らの相続分はたかが4分の1。たった4分の1と思うかもしれないが2000万円あれば500万円。3000万円あれば750万円だ。

それだけのお金があれば老後の豊かさは大きく異なる。

愛子さんは言う。「子がいない夫婦にこそ遺言書は必要ですね」と。まさにその通りだ。私もそう思う。

子どものいない夫婦こそ遺言書は必要だ。遺言書1枚で老後資金が数百万円変わることも珍しくはない。義家族との不要な争いも避けることができるかもしれない。

もし「子どもがいないわが家に遺言書なんて不要」と考えている人がいれば改めて考え直してほしい。本当にそれで大丈夫だろうか? 絶対に大丈夫だと言い切れるだろうか。少しでも不安であれば遺言書の作成について再度考えてみてほしい。

相続は残された人にとってその後の人生を左右する可能性もある大きな出来事だ。愛子さんは私との別れ際にこう言った。

「もし次に私たち夫婦のように遺言書が不要という人たちがいたら是非とも説得してあげてください」と。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※人物名はすべて仮名です。

柘植 輝/行政書士・FP

行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。

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