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友人が若年性脳梗塞に…健康に不安を抱える40代女性が一念発起して手に入れた「コスパのいい生き方」

Finasee / 2024年11月11日 17時0分

友人が若年性脳梗塞に…健康に不安を抱える40代女性が一念発起して手に入れた「コスパのいい生き方」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

詩織(41歳)は会社で健康診断の結果を見てがくぜんとする。BMIと中性脂肪の数値が引っ掛かり、“6カ月後の再検査”“肥満症の疑いあり”と書かれていた。

これまで健康について気にしたことがなかった詩織は、大好きな清涼飲料水に含まれる果糖などが肥満の原因だと思い当たる。

そんな折、学生時代から仲の良かった友人が倒れて入院した。病名は若年性脳梗塞。友人は無事だったものの、肥満や中性脂肪が高い人も発症しやすいと聞いて、詩織は決して人ごとではないと戦々恐々となり、一念発起してダイエットを始めた。

●前編:「最悪命を落とすこともある」健康診断で再検査に…アラフォー女性が思い当たった「まさかの原因」

ダイエットは節約になる?

ダイエットを決意した翌日、詩織は会社の昼休みに同期入社の綾乃とコンビニに買い出しに向かった。

買い物が終わると、公園のベンチで並んでご飯を食べる。ビニール袋から飲み物を取り出すと、綾乃が声をかけてきた。

「珍しいね。綾乃が水なんて。大抵、甘い系の炭酸だったじゃん」

「あ、うん、そうなんだ。ちょっと気をつけててさ……」

詩織がごまかすように言うと、綾乃はおかしそうに目を細めた。

「何? なんかあったの?」

綾乃に聞かれ、詩織は隠すような話でもないと思って、説明をする。

「それがさ、健康診断の結果で、中性脂肪とBMIの数値が引っかかっちゃってさ」

詩織が正直に言うと、綾乃はつまらなそうに唇をとがらせる。

「何だ、そんなことか。私はてっきり、好きな男でもできたのかと思ったわ」

「いやいや、そういうんじゃないから。私は1人をこよなく愛しているのよ。男なんかに合わせて生活を変えたりしないから」

「ま、あんたはそうよね。でもなんでいまさら? 健康診断の結果って1カ月前くらいに分かってなかった?」

「いや、まあ、もらったときは、ダイエット頑張ろうとか思ってたんだけど、ちょっと、いろいろあって……」

「逃げてたわけだ?」

綾乃は遠慮なく突っ込んできた。こういう竹を割ったような性格が好きで、長い間、友達付き合いをしているのだが、いくら何でも耳が痛い。

「まあ、そういうこと」

「ふーん。でもなんでまたこのタイミングでダイエット?」

そこで詩織は学生時代の友人が脳梗塞で倒れたということを説明した。

「へえ、そらまた、大変だねぇ」

「幸い、早期発見で、大事には至らなかったんだけどさ、脳梗塞って中性脂肪が高いとなりやすくなるって聞いたのよ」

綾乃はうなずきながら、弁当の天ぷらをおいしそうに頰張っている。綾乃はこういう脂っこいものが好きで、お酒だって飲むのに細いスタイルを維持している。うらやましさを通り越して、もはや憎さすら覚える。

「そんでさ、肥満って脳梗塞だけじゃなくて、糖尿病とかいろいろな病気を起こす原因になるみたいなの。だからさ、コーラを止めて、食事にも気を遣おうと思ったわけ」

そう言って、詩織はレジ袋からサラダとそばを取り出す。

「なるほどねぇ。ま、大きな病気したりすると、けっこうお金もかかるからね。健康でいるのが1番だよ」

「あれ、綾乃って何か重い病気とかなったことあったっけ?」

妙に含蓄のある物言いに、詩織は首をかしげる。綾乃は首を横に振る。

「私じゃないよ。旦那。しかも病気って言うか、虫歯よ。なんか虫歯ができてたのに、歯医者を怖がって、放置してたみたいなの。そうしたら、結局、抜いて、新しいやつを入れないといけなくなって、もうトータルで3万くらいが飛んでいったんだから」

「うえー、それは痛い出費だね。もったいない」

「でしょ? それに私の父親、糖尿病でさ、治療費と薬代とかで、月々1万円くらいかな。しかも、完治しないから、ずっとお金が掛かり続けるし。月々は大したことなくても、チリも積もればなんとやらだよね。糖尿病にならないだけで、かなり節約になるってことよ」

「なるほど」

これはいい話を聞いたと思った。正直、ただのダイエットであればモチベーションを維持できる気がしない。だが、節約になるというのなら話は少し違ってくる。詩織はそばをすすりながら、ダイエットに向かう決意を新たにした

もし病気にかかっていたら

詩織のダイエットの先生はもっぱらYouTubeだ。食事による体質改善や、カロリーは低いがおなかいっぱい食べられる料理の作り方などを学んだ。どうやら過激な糖質制限などはあまり効果がないらしかった。1番、体重を減らせるのはやはりカロリー制限。その上で、栄養バランスを考えた三食の食事をすることで、健康的に体重を落とすことができるということだった。

また、食事だけでは劇的なダイエットが難しいことも分かり、早朝にひとまず1時間程度のウオーキングも始めた。

とはいえ、慣れない運動は予想以上にしんどいものだった。だからくじけそうなときは、映画「ロッキー」のテーマソングをかけて自分を奮い立たせた。あそこまで筋骨隆々になれるとは思わないし、なりたくもないが、気分は完全に主人公だった。

さらに、休みの日の朝にウオーキングをすることを自分に課したことは、メリハリのある規則正しい生活を詩織にもたらした。規則正しい生活を送ることはダイエットに効果的なだけではなく、毎日の充実感にも貢献した。

これまでダイエットのダの字も考えてこなかった詩織の努力は思いのほか早く実を結び、鏡の前に立つ詩織のおなかや腰回りは心なしかシュッとしたような気にもなった。

そうしてダイエット生活を始めて、5カ月が過ぎたころ、詩織は指示されていた病院での再検査を受けた。

結果は、問題なし。BMIも中性脂肪も正常値に戻すことができていた。医者もしっかりと食事制限と運動をした効果だと褒めてくれた。

詩織は検査結果を握りしめ、その足で家電量販店に向かった。目的はひとつ。以前から欲しかったホームシアター用のプロジェクターを13万円で購入すること。

もし糖尿病にかかっていたら、もし脳梗塞になっていたら、決して安くない治療費がかかっていたことだろう。しかし詩織は健康のために食事と生活を改善した。それはつまり、かかるかもしれなかった治療費が節約できたということだ。

健康はコスパがいい。

詩織ははやる気持ちを抑えながら車を運転し、家に帰る。最初に見る映画はどんな映画がいいだろうか。やっぱり自分のダイエット生活を支えてくれた「ロッキー」シリーズだろうか。そういえば最近、詩織の好きな監督の新作が配信開始されていたから、それでもいい。

ただできれば、おいしそうに食事をするシーンがない映画がいいなと思った。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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