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「もう若くないって自覚しないと」義母の浪費癖に我慢の限界! 義実家生活で発覚した「恐るべき事実」

Finasee / 2024年11月18日 17時0分

「もう若くないって自覚しないと」義母の浪費癖に我慢の限界! 義実家生活で発覚した「恐るべき事実」

Finasee(フィナシー)

「あら、お義母(かあ)さん。どこかお出掛けですか?」

みどりが洗濯ものを干し終えてベランダから部屋に戻ると、セットアップを着込み、ばっちりメイクをした義母の佐枝が鏡の前でアクセサリーを選んでいた。

「ええ。美容院に行ってから、お友達とランチ。南青山のレストランなのよ。ねえ、みどりさん。この洋服なら、こっちのイヤリングとこっちのイヤリング、どっちが合うかしら」

佐枝は左右の耳に違うイヤリングを当てて、みどりのほうを向いた。

半年の同居生活で分かったことだが、こうやって佐枝が聞いてくるとき、たいていはどっちがいいか佐枝の答えは決まっている。だからこれは質問ではなく問題だった。回答には明確な正解が存在していた。

「うーん、どちらもすてきですけど、シルバーのほう、ですかね。ほら、青い宝石がお洋服の色味とも合ってますし」

「えー、そうかしら? 印象がぼやっとするじゃない。デザイナーだっていうけど、そんなんでお仕事大丈夫なの? 全然センスないじゃない」

佐枝はため息を吐いて、みどりが選ばなかったゴールドのイヤリングをつけた。

どうやらまた不正解だったらしい。別にみどりがファッションに関心がないとか、そういうわけではないと思う。もちろん特別にセンスがいいとは思わないが、人並みにおしゃれを楽しんできたつもりだ。だがみどりは1度たりとも佐枝が出してくる“問題”の正解を引き当てたことがない。感性が根本的に合わないからなのか、それとも佐枝があまのじゃくなのかは分からないが、外すたびにぼそっとこぼされる小言には、正直かなりイラっとする。

「それじゃあ、行ってくるわね。みどりさんも、そんな地味な格好してないで。もう32歳でしょ? もう若くないって自覚しないと。女であることをやめたら、祐也だって見向きもしなくなるわよ」

「そうですね。気をつけます」

「頼むわよ~。松田家の女として、そういう部分に抜かりがあってはいけないの」

松田家って別に大した家柄じゃないだろう、という言葉はのみ込んで、みどりは笑顔でやり過ごす。佐枝は玄関で最近また新しく買ったらしいパンプスを下ろし、足音を鳴らして出て行った。みどりはしばらく天井を仰いだあと、気持ちを切り替えるように髪を結んで仕事に取り掛かった。

職場の先輩の結婚式で知り合った祐也と半年前に結婚して、みどりは祐也の実家で暮らし始めた。Webデザイナーをやっているみどりの仕事は基本的に家での作業だったので、郊外の実家に引っ越すこと自体に問題はなかったが、大きな懸念はあった。

フルリモートである以上、みどりは実家に1人で暮らしていた義母と四六時中顔を合わせなければいけない。別に悪い人ではないのだが、みどりは佐枝のことが苦手だった。

まずセンスが合わない。どちらかと言えばシンプル志向のみどりに対して、佐枝は華美で派手好きだった。食い違うたびにみどりを刺してくる小言も含め、百歩譲ってそれはそれでいいとしても。ランチだショッピングだ美容院だと毎日のように銀座や青山などの都心に出掛けていくのも、みどりにとっては気がかりだった。

すでに義父は他界しており、遺族年金とみどりたち夫婦の収入が松田家の家計を支えている。みどりはフリーランスで働くWebデザイナーで、祐也は業界では大手の人材派遣会社の営業職をしているので、ささいなぜいたくにいちいち目くじらを立てるほど生活が厳しいわけではなかったが、それでも子育てや介護、自分たちの老後など先々のことを考えると、派手な出費をただ放っておくわけにもいかないような気がしていた。

自分が我慢をすればいい

「そうは言ってもなぁ。母さん、昔からそういうのが生きがいなんだよ」

晩酌がてら祐也に相談はしてみるが、気乗りしないらしく返事は芳しくない。

「そうかもだけどさ、別に私たち、そんなに稼いでるってわけでもないし。ほら、お義母(かあ)さんが言うから結婚式もかなり派手にやったでしょ。だから少しは節約も考えたほうがいいんじゃないなかなって思うの」

「節約っていうけど、貯金だって今すぐどうこうなるわけじゃないんだろ? だったらひとまずいいんじゃないかな。一応、おやじの年金もあるんだし」

「まあ、そうなんだけど……」

「母さんには苦労かけたからさ、できるだけ楽に楽しく過ごしてほしいんだよ。な、頼むよ」

祐也たち親子の話は、みどりもそれとなく聞いている。銀行員だった祐也の父は、かなりお金にうるさい人だったらしく、佐枝の買い物ひとつをとってみてもかなり厳しく管理していたらしい。そのこだわりときたらもはや偏執的と言えるほどで、近隣のスーパーの食材の値段をそらんじることができるほどだったらしい。佐枝がうっかり割高なスーパーで食材を買ってこようものなら、義父は佐枝を厳しくしかった。時には暴力に及ぶこともあったそうで、祐也は母が受ける過剰な仕打ちを心苦しく思っていたそうだ。

きっとそのころの反動なのだろう。そんな背景を思うと、みどりはもうそれ以上何も言えなかった。

「分かったよ。しばらくは様子見る」

みどりがしぶしぶうなずいたのは、家族として佐枝と共有しているお金とは別に、夫婦2人で将来のためにためている貯金があることも大きかった。もちろん祐也は、佐枝がみどりに向ける嫌みや小言のことを知らないが、それはみどりが我慢すればいいだけの話だ。

テーブルの上には、週末にパチンコに行っていた祐也が持ち帰ってきた景品のお菓子が広げられている。みどりは雑に握った柿の種を口へ運んでぼりぼりとかみ砕き、缶チューハイを流し込む。1日の疲れと一緒に、胸の奥にある引っ掛かりも有耶無耶(うやむや)にしていく。

「ありがとう。みどりだけだよ、こんなに俺のこと理解してくれるのはさ。俺、みどりと結婚してほんとよかったわ」

結婚してまだ半年。たぶんよくある新婚ののろけなのかもしれない。だがみどりには祐也の言葉が、どこかしらじらしくも聞こえていた。

夫婦の貯金が減っていた

銀座でお茶をするんだと、いつものように佐枝がめかしこんで外出していった午後、みどりの使っていたパソコンが前触れなく壊れた。真っ白になった画面がうんともすんとも言わなくなり、電源ボタンすら効かなくなった。

仕方がないので昔使っていたPCを引っ張り出して起動する。セットアップをして作業を始めるが、スペックが落ちる古いPCでの作業ははかどらない。突然壊れたPCも相変わらずデスクの端でホワイトアウトした画面をさらし続けている。幸い、納期の差し迫った仕事はないが、不便極まりないので新しいPCを急ぎで買う必要があるだろう。

しかしみどりの仕事に堪えうるような高スペックのデザイナーPCの値段はだいたい20万円前後。もちろん出せない金額ではないが、予定外にたやすく出せるような金額でもなかった。みどりはスマホを手に取った。祐也と2人でためていた貯金から出すならば、家計への支障は限りなくゼロに近い。彼が帰ってきたら相談しようと思い、みどりはひとまず今いくらくらいたまっているのかを確認しようと、銀行のアプリを開く。

「は?」

思わず低い声が口を突いて出たのは、表示された金額に面を食らったから。2人でこつこつため、150万円くらいはあったはずの貯金は、たった10万円ほどに減っていた。

●夫婦の貯金の行方は……? とんでもない事実がみどりに襲い掛かる。後編【「ケチくさいこと言うなよ」消えた夫婦の貯金の行方は…義実家で発覚した「マザコン夫の本性」】にて、詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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