退職金6000万円に年金は月50万円…羨望の贅沢老後が一転、バブリーな夫婦が迎えた「まさかの結末」
Finasee / 2024年11月22日 17時0分
Finasee(フィナシー)
氏家昴光(うじいえ・すばる)さん(仮名)は、大手家庭用品メーカーの研究者。同期で事務職の奥さんとは社内結婚で、10歳の娘さんがいます。知的で物静かな印象の氏家さんですが、「滅茶苦茶バブリーな家庭で育った」そうです。
ご両親や2歳下の弟さんは、入って来るお金はきれいに使い切るタイプ。お父様が存命中はそれでも問題なかったのですが、亡くなった後に贅沢癖の抜けないお母様がたちまち経済危機に陥りました。
しかし、資産が枯渇していてもお母様や弟さんの頭の中に「節約」という概念はないらしく、皆が納得する解決策はなかなか出て来ません。一方で、氏家さんによるお母様の生活費の立て替え分だけが膨らんでいき、これから娘さんの“お受験”を控える氏家さんは頭を抱えています。
〈氏家昴光さんプロフィール〉
東京都在住
36歳
男性
メーカー研究職
同じ会社の事務職の妻、小学生の長女と3人暮らし
金融資産1200万円
***
私の父は中堅企業で役員を務めていたこともあり、それなりの収入があって、しかも、入って来た分はきれいに使い切るタイプでした。
仕事が終わった後は連日深夜まで飲みに出かけ、休日はお決まりの接待ゴルフ。父のサラリーマン人生はほぼ日本の高度成長期と重なりますが、銀座の高級店での飲み代や名門ゴルフクラブでのプレー代が全て会社の経費で落ちていたとはとても思えず、恐らくは相当自腹を切っていたはずです。
父はプライベートでも「安全性が高い」と気に入っていたドイツの高級車を乗り回し、年に1度は家族で海外旅行にも出かけていました。宿泊はいつもフォーシーズンズやリッツ・カールトンといった高級ホテルでした。
母は父よりひと回り年下で、水商売の出身です。出会った頃はいわゆる不倫の関係で、父が離婚した後に籍を入れたそうです。父と共働きの前妻との間には子供がなかったこともあり、あっさり別れたと聞きました。
その後結婚した時、父は45歳、母は33歳になっていました。翌年に私が、その2年後に弟の流星が生まれています。
コロナで父が亡くなり……母も金遣いは荒い方で、家事はそっちのけで遊び仲間と観劇や旅行に出かけ、しょっちゅうデパートで服や装飾品を買い込んでいたのを覚えています。
そんな両親ですから、父が完全リタイアした後も暮らしぶりはあまり変わりませんでした。退職直後には夫婦で1カ月以上かけて地中海やアフリカをめぐる豪華客船クルーズに出かけていましたし、毎月のように歌舞伎やオペラ、相撲など金のかかる娯楽を楽しんでいました。
とはいえ、父は6000万円以上の退職一時金を手にし、公的年金と企業年金、民間保険会社の個人年金を合わせて一番多かった時期には50万円を超える年金収入があったといいますから、十分やっていけたのだと思います。
それに、私や弟もその“おこぼれ”に預かっていたので、偉そうなことは言えません。
私は贈与税の特例を使ってマイホームの購入資金を援助してもらいましたし、母に似て浪費癖のある弟は両親の家に行っては小遣いをせびっていたようです。父から、弟が作った借金500万円を肩代わりしたという話を聞かされたこともあります。
しかし、「いつまでもあると思うな親と金」と言われる通り、その父も4年前にあっという間に亡くなりました。新型コロナウイルス感染症に罹患し、糖尿の持病があった父の体は耐えられなかったようです。
コロナ感染症は当時、感染症法の「2類相当」でしたから、それは大変でした。隔離病棟に入った父とはほとんど面会もかなわず、亡くなった後の葬儀も大きく規制されました。
父が亡くなってもエネルギッシュな母父が突然理不尽な亡くなり方をしたこともあり母の精神状態が心配でしたが、母は意外にこたえていないようでした。年の差や男女の寿命差があり、父が先に逝ってしまうことはある程度覚悟していたのかもしれません。
そして、コロナ禍が明けた後も、母は相変わらずの生活を送っていました。母を見ていると、女性の70歳は仕事に追われる30代の私などより、よほどエネルギッシュです。妻も「お義母さんはあの調子なら100歳まで生きそう」と笑っていました。
それでも、父に先立たれた母が孤独をかこって引き籠もったりするよりは、元気でお金を使っていてくれた方がずっといいと考えていました。
そんな自分の考えが甘かったと気付かされたのが、半年ほど前、弟から「話したいことがある」と言われた時です。最初は、弟に金の無心をされるのではないかと警戒しました。しかし、話はどうやら母に関することのようでした。
お互い仕事が忙しく、昨年の正月に両親のマンションで食事をした時以来会っていなかったので、昔よく父に連れていかれた西麻布の小料理屋で会うことにしました。
そして、その日、私は弟から衝撃的な事実を告げられたのです。
●伴侶に先立たれ、個人年金や企業年金が支払われなくなった後も浪費をやめない氏家さんの母親は、相続した2000万の貯預金もほとんど使い切りのっぴきならない状況に。どうすればよいか頭を悩ます氏家さんに弟が告げたのは、あまりにも身勝手な提案でした。後編【「このままでは一生アリとキリギリスのアリ」困窮しても浪費を続ける母に身勝手な弟を持つ30代男性の苦悩】で詳説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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