1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

「このままでは一生アリとキリギリスのアリ」困窮しても浪費を続ける母に身勝手な弟を持つ30代男性の苦悩

Finasee / 2024年11月22日 17時0分

「このままでは一生アリとキリギリスのアリ」困窮しても浪費を続ける母に身勝手な弟を持つ30代男性の苦悩

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

現在36歳の氏家昴光(うじいえ・すばる)さん(仮名)は、大手家庭用品メーカーで研究職をしています。奥さんとは社内結婚。10歳になる娘さんもいます。実直な姿とは裏腹に、氏原さんが育ったのは「バブリー」な家庭でした。

折に触れ海外旅行に出かけ、宿泊するのはいつも高級ホテル。父親が完全にリタイアした後も退職旅行で地中海やアフリカを周遊する豪華客船に乗るなど、氏家さんの両親の贅沢な暮らしはなりを潜めることはありませんでした。

そんな中、氏家さんの父親は新型コロナ感染症で命を落とします。それでも母親の旺盛な消費欲は衰え知らずで……。

●前編:【退職金6000万円に年金は月50万円…羨望の贅沢老後が一転、バブリーな夫婦が迎えた「まさかの結末」】

父の公的年金、企業年金、月に50万以上の収入があるはずが

私は中堅企業で役員を務めた父、結婚前までホステスだった母との間に生まれ、下に弟が一人います。日本人は貯蓄性向が強いと言われますが、私の両親は真逆で、むしろかなり消費に前のめりなタイプでした。

子供の頃から、両親が家や車、洋服や服飾品、旅行やゴルフと派手にお金を使うのを見てきました。それもあって、私自身は贅沢品にあまり興味が持てず、今はメーカーで研究職をしています。一方、派手な暮らしにどっぷり浸かった弟は、学生時代はホストクラブでアルバイトをし、その後も飲食店を経営しながら“富裕層もどき”の生活を送ってきました。

少しばかり気になっていたのは、20年以上前に父が定年退職をした後も、両親には派手な生活を改めるような気配がなかったことです。むしろ、豪華客船のクルーズに出かけたり、歌舞伎やオペラに通い出したりと、自由な時間が増えた分、さらに金のかかる趣味を覚えたように見えました。

といっても、私はその両親に修士課程までの学費を出してもらったわけですし、結婚後、マンションを購入する際にも特例税制を使って1000万円の援助を受けているので、偉そうなことは言えません。

ただ、父からは会社から6000万円を超える退職金が支給されたこと、公的年金や企業年金、民間保険会社の個人年金を合わせると月額50万円以上の収入があることを聞かされ、それだけお金があるなら大丈夫だろうとたかを括っていたのです。

実際、父の存命中は大きな問題が起きることはありませんでした。しかし、4年前に父が新型コロナウィルス感染症で亡くなり、事情が変わりました。

相続した2000万の預貯金は底をついていた

父の死後も母は実家のマンションに住み、相変わらず、遊び仲間と旅行や観劇に出かけたり、習い事に通ったりして充実した毎日を送っているようでした。

しかし、半年ほど前、弟から「母のことで話がある」と連絡が入ったのです。弟とは昨年の正月から会っていなかったので、以前家族でよく利用した小料理屋で久しぶりに飲むことにしました。

その夜、弟が私に耳打ちしたのは、母の経済状態がのっぴきならない状況にあるということでした。

正直、全く寝耳に水でした。母は父がいなくても悠々自適の生活を送っているものとばかり思っていたからです。しかし、実際には自宅マンションの固定資産税や管理費も払えないほど追い詰められていたのでした。

聞けば、母が現在受給している年金は月額15万円程度しかないといいます。母はホステス時代に国民年金の保険料を払っていなかったらしく満額が受け取れないのと、父の死後は企業年金や個人年金が入ってこなくなり厚生年金の遺族年金だけとなったため、収入ががたっと落ちたようでした。

実家のマンションは大手不動産会社系で管理費が高く、修繕積立金と合わせて月額10万円近くかかります。それに税金や社会保険料を払ったら、ほとんど手元に残りません。母は父から2000万円近い預貯金も相続していましたが、それも日々の生活費の穴埋めでほとんどなくなってしまったとのことでした。

これには驚きました。「家、売るしかないかもな」。ふと頭に浮かんだ考えを口に出すと、弟が待ってましたとばかりにたたみかけてきました。「アニキもそう思うでしょ? うん、それしかないよね」。そして、ご都合主義そのもののシナリオをふっかけてきたのです。

「古いマンションだけど、今売れば7000万円くらいにはなるらしいよ。それを、お袋さんと、アニキと、俺で3等分するっていうのはどう?」

「それでお袋さんはどこに住むんだよ?」と突っ込むと、「アニキのところに決まってるじゃない。俺の家はうるさいガキが3人もいて、汚いから嫌だってさ」と悪びれずに言ってのけます。母も弟も、身内ながらいい気なものだと腹が立ちました。

しかし、窮地に陥った母を放っておくわけにはいかず、弟や、父が生前懇意にしていた弁護士さんも交え、母の今後について何度か話し合いをしました。

浪費をやめない母の生活費を建て替える日々

母の当面の生活費は私が立て替え、実家のマンションはなるべく早く売却する。そこまではすぐにコンセンサスが取れたのですが、その後が大変。

母は私や弟との同居は「気を遣うから嫌」と拒否したものの、70歳を過ぎて賃貸住宅に1人で住まわせておくのは心配です。

かといって、母自身は健康体で介護保険の要支援や要介護の対象になりませんから、いわゆる特別養護老人ホームのような施設には入れません。

弁護士さんが母のように元気な人でも入居可能な民間の老人ホームを幾つか探してくれましたが、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にしても居室は25㎡(約16畳)ほどの広さで、母は「こんな狭いところには住めないわ」とにべもありません。

地方に行けばそれなりに広い居室が確保できるところもありましたが、今度は「私に都落ちさせる気?」と反発します。

自分が置かれている立場を全く自覚せず、生活レベルを落とさずに遊び仲間との付き合いをいかに続けていくかばかりを考えている母。自分や家族に火の粉が降りかからないように巧みに身をかわしながら、少しの分け前も逃さないよう目を光らせる狡猾な弟。

そんな家族との話し合いは平行線をたどり、既に5カ月近くが経過しています。その間も、母の生活費は容赦なくかかってきます。母は困窮しても支出を抑える気はないらしく、立て替えた金額の累計は150万円を超えました。

前回の話し合いの際は、母が「正月は友人と九州の名旅館で過ごしたい」などと突拍子もないことを言い出したので、思わず、「母さん、そういうことは落ち着き先が決まってから考えてよ」と声を荒げてしまいました。

我が家も来年は一人娘が5年生になり、妻は私立受験に向け塾に通わせることを考えているようです。そうした中で、母の立て替え金が増えていくのは不安でしかありません。

先日、妻と母の話をしている時に、妻がこんなことを言っていました。

「イソップの『アリとキリギリス』って所詮は寓話だよね。お義母さんを見ていると、キリギリスは結局いつまでもキリギリスだもの」

まさに、その通りだと思いました。そして、私のような「アリ」の息子は一生「キリギリス」の母や弟に振り回されていくのかもしれません。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください