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話題の「103万円→178万円 年収の壁」引上げ。そもそも178万円の根拠は何で、会社員にも恩恵はあるのか?

Finasee / 2024年11月11日 19時58分

話題の「103万円→178万円 年収の壁」引上げ。そもそも178万円の根拠は何で、会社員にも恩恵はあるのか?

Finasee(フィナシー)

資産形成にも影響度大! そもそも毎年、税金の改正はどう決まっているのか

私たちの生活に大きな影響を及ぼす税金。「所得税・住民税の定額減税」、「住宅ローン控除の拡充」、「賃上げ促進税制の強化」など、いずれも令和6年度の税制改正大綱に盛り込まれた内容ですが、このように毎年、税負担の公平性の確保や社会情勢の変化に対応するため、税制の見直しが行われています。

ちなみに、フィナシー読者にとって過去、最も関心が高かったと思われる「NISA制度の抜本的拡充・恒久化」は、令和5年度税制改正大綱に盛り込まれていたものです。

では、どのようなプロセスで、税制改正の内容が決まるのでしょうか。案外、それを正確に理解している納税者は、少ないと思います。

11月7日の新聞、各種ニュースサイトには、「自民党が6日、税制調査会の幹部会合を開催。来年度の税制改正に向けた検討をスタート」といった記事が掲載・配信されました。令和7年度の税制改正大綱策定に向けた動きが、いよいよ本格化してきたのです。

とはいっても、実は令和7年度の税制改正に向けた動きは、すでに始まっています。

税制改正は例年8月末から各省庁が、税制改正要望を与党の税制調査会に送付することから始まります。「与党の税制調査会」とは、いわゆる自民党税制調査会のことです。

この与党税制調査会で税制改正要望が審議された後、与党税制改正大綱が取りまとめられ、公表されます。これが毎年、大体12月中旬くらいになります。

その後、与党税制改正大綱が内閣の閣議に提出され、そこで「税制改正の大綱」として発表されます。令和6年度税制改正大綱の場合、閣議決定されたのは令和5年(2023年)12月22日でした。

こうして公表された「税制改正の大綱」のうち、国税関連については財務省で、地方税関連については総務省で、それぞれ国会に提出するための改正法案が作成され、翌年1月中に召集される通常国会で審議され、年度終わりの3月31日までの可決・成立を目指します。

以上の流れで言うと、今は与党である自民党の税制調査会に上げられている税制改正要望を審議している最中になります。そして私たちにとっての関心事は、令和7年度税制改正で何が変わるのか、ということです。

衆院選で自公過半数割れ…注目を浴びる課税最低限「103万円の壁」

さて、令和7年度税制改正において、政局のネタにもなっているのが「103万円の壁」問題でしょう。

先に行われた衆議院選挙において、465議席のうち与党の自民党が191議席、公明党が24議席の計215議席しか獲得できず、過半数の233議席を下回る結果に終わりました。与党が過半数を割り込んだのは、民主党政権が誕生した2009年以来のことになります。

つまり、与党である自民・公明両党としては、政策、法案を通すにあたって、野党の協力が必要になりますし、そもそも衆院解散・総選挙の後に新しい首相を選ぶために開かれる特別国会において、石破首相が第103代目の内閣総理大臣に選ばれるためには、衆参両院において投票総数の過半数を獲得しなければなりません。

しかし、すでに衆議院においては与党の議席数が過半数に達していませんから、石破首相が第103代目内閣総理大臣に指名されるためには、野党の協力がどうしても必要になります。その協力先として注目されているのが、国民民主党です。

今回の衆議院選挙において、国民民主党は議席数を7議席から28議席に伸ばしました。与党が獲得している215議席に、国民民主党の28議席が加われば243議席になり、過半数を上回ることになります。結果的に石破首相は無事、第103代内閣総理大臣の座に居続けられますし、今後の法案も通しやすくなります。

ただ、国民民主党は与党との連携をはかるに際して、条件を提示しています。この条件こそが、「103万円の壁」の見直しなのです。

103万円の壁とは、給与所得が103万円を超えると、バイト代やパート代に所得税が課せられる年収額を指します。またバイトやパートの年収が103万円を超えた時点で扶養から外れますから、親など扶養者の所得税と住民税が増えることになります。

103万円の根拠は、48万円の基礎控除と、55万円の給与所得控除を合わせた額です。これを178万円に引き上げたいというのが、国民民主党の主張です。国民民主党の選挙公約で打ち出しているだけに、11月9日時点ではこの線を譲れないとするのが、国民民主党のスタンスです。

逆に言えば、与党がこの条件をのまない限り、国民民主党の協力を得ることが出来ず、法案通過に際して、与党はイニシアティブを発揮できなくなります。

ちなみに国民民主党が訴えている、「178万円」という数字の根拠は、東京都の最低賃金が1995年から1.73倍に上昇していることを踏まえての数字です。

では、仮に課税最低限を103万円から178万円に引き上げた場合、どのくらいの減税額になるのでしょうか。大和総研が給与所得に応じての減税額を試算しているので、その数字を挙げてみます。それによると、

年収200万円・・・・・・8万2000円
年収300万円・・・・・・11万3000円
年収500万円・・・・・・13万3000円
年収600万円・・・・・・15万2000円
年収800万円・・・・・・22万8000円
年収1000万円・・・・・・22万8000円

※課税最低限の75万円の引上げに基礎控除の引上げのみで対応した場合の試算
※単身世帯または配偶者控除適用のない共働き世帯(子どもは16歳未満)の給与所得者を想定して試算
※千円未満は四捨五入

ということになっています。つまり課税最低限を引き上げることによる恩恵は現在、103万円の壁を意識して、それを超えない所得の範囲内で働いている人だけでなく、年収の多い人も受けることができるのです。

「103万円の壁」はインフレ具合に見合っていない状況

課税最低限を178万円にするかどうかはともかく、現在103万円のそれを見直す時期には来ているようです。

なぜならここ数年でインフレが進んだからです。

前述したように、課税最低限の103万円は、48万円の基礎控除と、55万円の給与所得控除を合わせた額です。給与所得控除とは、自営業者のように収入から経費を差し引くことのできない給与所得者にも、一定額までの経費を認めるために設けられているもので、給与収入が年162万5000円以下の場合、55万円をそこから差し引くことができます。

また、基礎控除は納税者本人や配偶者、扶養家族の生活維持のために必要な最低限の収入には課税しないという目的で設けられており、その額が48万円とされています。

ちなみに基礎控除が48万円とされたのは2020年のことで、それ以前を見ると、1995年は38万円、1989年は35万円でした。この見直しは物価上昇との見合いによるものですが、これに給与所得控除を合わせた課税最低限は、1995年から変わっていません。なぜなら、2020年に基礎控除が10万円引き上げられたのと同時に、給与所得控除が10万円引き下げられ、プラスマイナスでゼロだったからです。

それでも1995年から2020年まではデフレ経済だったので、特に問題はありませんでしたが、2020年1月から2024年9月までの消費者物価指数を見ると、生鮮食品を除く総合で7.66%上昇しています。生活維持のために必要な最低限の収入には課税しないという基礎控除や、給与所得者の経費である給与所得控除の意味合いからすれば、インフレ率をカバーできる分の引き上げが必要なのは事実です。

一気に178万円まで引き上げられるかについては疑問符

ただ、課税最低限を178万円まで引き上げられるのかどうかは、財源の問題もあり難航しそうではあります。そこまで課税最低限を引き上げた場合、税収は7.3兆円も減ると試算されています。

国民民主党はその財源を「使い残しの予算が昨年で7兆円、一昨年は11兆円もある」から、それを充てればよいという認識のようですが、毎年これだけの使い残しが生じる保証はありません。

それに、日本は毎年多額の赤字国債を発行しており、「使い残しの予算」といっても、金庫にお金が余っているのとはワケが違います。その意味において、課税最低限を178万円まで引き上げるのは現実的ではなく、仮に引き上げられるとしても、もっと現実的な数字になると思われます。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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