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「中学生に月10万以上」夫の継子の“仰天金銭感覚”…距離を縮めたい40代継母が「息子に施したこと」

Finasee / 2024年11月27日 17時0分

「中学生に月10万以上」夫の継子の“仰天金銭感覚”…距離を縮めたい40代継母が「息子に施したこと」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

昌子(42歳)は、自身が働いていた会社の社長である夫と交際0日で再婚した。お互いバツイチ子持ちであることや、年齢が近いことなどもあって2人はすぐに親密になれた。

昌子の娘の佳織(10歳)は、新しい家族を「お父さん」「お兄ちゃん」と呼び、すぐに打ちとけたが、明の息子・良太(14歳)は昌子を母親として認めていないような態度をとり続ける。

ある日、黙って外食をしてきた良太をしかりつけると、「本当の母親でもないくせにしつこいよ、面倒だろうし放っておいてくれ」という言葉を投げかけられてしまう。「そんなこと思うわけないでしょ!」と返すものの、もしかしたら自分の心の奥底では、そんな感情が存在しているのかもしれない……。と、悩んでしまう昌子だった。

●前編:「本当の母親でもないくせに」交際ゼロ日婚で社長夫人になったシンママが直面した“晩婚ステップファミリー”の難しさ

小遣いを無際限に渡していた

その夜、昌子は仕事から帰ってきた明に良太のことを相談した。すると温厚な明が眉間にしわを寄せ、ソファから立ち上がった。

「あいつ、そんなこと言ったのか……!」

階段を上って子ども部屋のある三階へ向かおうとする明を昌子は慌てて制止する。きっと良太の性格上、頭ごなしに怒ることは逆効果だと思ったからだ。

「落ち着いて。私は大丈夫だから。それに、良太くんに言われてハッとした部分もあったの。もしかしたら私、自分でも気づかないうちに良太くんに嫌な思いをさせてたのかなって」

「そんなことないだろ。君はよくやってくれてる。問題はあいつのほうにあるよ」

「だとしても、ちゃんと家族になりたいの」

昌子は、明からの提案で今まで無際限に渡していた小遣いを月1万円にすることにした。それでも中学生が持つお金としては少し多いような気もしたが、あまりきつく縛りすぎるのもよくないと思い、明の提案を受け入れた。

それからも昌子は良太との距離を少しずつ詰める努力を始めたが、最初のうちは激しい反発が続いた。自由にできる金を失った良太は常に不機嫌で返事もしない。その上、少しでも昌子がしかると自室に閉じこもるか、家を飛び出して行ってしまうのだ。さすがに外食ざんまいはできなくなったため、夕食は家でとるようになったものの、わざと食事の時間をずらしたり、自室で食べたりすることが多かった。

それでも昌子は諦めなかった。良太は大切な息子だから。

「良太くん、帰ってたんだ」

買い物から戻って手を洗いに洗面所へ行くと、アンダーシャツ姿の良太がいた。良太は返事をせず、手に持っていたワイシャツをくしゃくしゃに丸めていた。

「それどうするの?」

「関係ある?」

「あるよ。ほら見せて」

昌子は良太の手からワイシャツを取り上げて広げる。ちょうど襟から胸にかけて、茶色いシミがついていた。

「コーヒーこぼしたんだ。でもまだ使えるわよ。ちょっと待ってね」

そう言うと昌子は、手際よく食器用洗剤と歯ブラシを用意し、コーヒーのシミをきれいに取ってみせた。よくあるライフハックだ。

「こうやってね、裏からトントンってたたけばいいの。どう? 簡単でしょ?」

「こんなの、また買えばいいだろ」

ぶっきらぼうに言った良太だったが、その表情には少しの驚きが見て取れた。

その日を境に、良太との関係に少しずつ変化が表れ始めた。別の日には、破れたペンケースを手に取る良太を見て、昌子は自分の裁縫道具を持ち出し、アップリケを刺しゅうして修繕した。

「ダサい」

良太は言ったが、昌子はほほ笑みながら答えた。

「お金をかけなくても、工夫すればまだ使えるのよ」

「貧乏くさいなぁ」と嫌がりつつ、良太はペンケースを受け取った。

少しずつ、前身している実感があった。だが良太は一筋縄ではいかなかった。ある日、部屋の掃除をしているときに良太の宿題の筆跡がどれもまるで違うことに気が付いた。不審に思って良太を問い詰めると、友達にお金を渡して宿題をやらせていたことが分かった。

「良太くん! なに考えてるの! 勉強は自分でやらないと意味がないの。それに、お金で人を動かすことが当たり前になってしまったら、良太くんはどんどん大事なものを失っていくよ」

昌子は良太をしかり、良太が自分で宿題をやり直すまで付きっ切りで指導した。翌日は寝不足でつらそうにしていた良太だったが、その表情にはどこか充実感が浮かんでいた。

こうして昌子の努力は少しずつ実を結んでいった。

良太は以前のように強く反発することは減り、昌子が何も言わなくても家族と食卓を囲むようになった。特に妹の佳織に対しては、だいぶ心を開いているようで、時折笑顔を見せることもあった。面倒くさそうにしながらも、佳織と中庭で遊ぶ良太の姿を見て、昌子は思わず頰を緩ませた。

机の上で見つけたもの

その日、昌子はいつものように家の掃除をしていた。

広々としたリビングの隅に置かれた書類の山を整理していると、1枚の紙がひらりと床に落ちた。拾い上げてみると、それは良太の学校からの授業参観の案内で、日付を見ると明日だった。

心の中で小さくため息をついた昌子は、その案内を見つめた。おそらく、良太は来てほしくないのだろう。そんなことを言わなくても、態度で十分に伝わってきた。だが、同時に母親としてこの機会を見逃すべきではないのではないかという思いも芽生えた。

悩んだ末、昌子は無理を言ってパートの仕事を休み、意を決して良太の授業参観へと向かった。

教室の扉を開けると、すでに何人かの保護者が集まっていた。授業が始まろうとする中、昌子は目立たないように後ろの席に腰掛けた。良太は、まだ昌子の姿に気づいていない。

しかし、授業が始まりしばらくして、ふと良太が後ろを振り向いた。

視線が交差した瞬間、良太は驚いたように目を見開いたあと、思いっきり眉をひそめた。「なぜ来たんだ」とでも言いたげな表情に、昌子は胸が少し痛んだが、それでも彼を見守ることを決めた。

良太は前を向き直し、授業に集中しようとしていたが、その態度にはどこかいら立ちが感じられた。きっと恥ずかしいのだろう。

昌子は、できるだけ気配を消すようにして、静かに授業を見守っていたが、ふとあることに気が付いた。

それは良太の机の上に置かれたアップリケ付きのペンケース。

あの日、破れたペンケースを捨てようとしていた良太に対して、昌子がアップリケで修繕を施したものだ。

そのペンケースを見た瞬間、昌子は胸が温かくなるのを感じた。

良太は今でも昌子に対して反発するような態度を取り続けているが、そのペンケースが机の上にあるということが、彼の心の奥底で何かが変わり始めている証拠のように思えたのだ。

授業が終わる前に、昌子はそっと教室を後にした。家に帰ってきた良太は勝手に授業参観に来たことを怒るだろう。

そしたら一応は謝って、そしてたとえ嫌がられても良太の頭をなでてやろうと思った。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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