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日本初の営業益5兆円を達成したトヨタ自動車、最新決算に見る今後 メキシコへ投資拡大もトランプ氏勝利で再燃する関税懸念の行方

Finasee / 2024年11月14日 6時0分

日本初の営業益5兆円を達成したトヨタ自動車、最新決算に見る今後 メキシコへ投資拡大もトランプ氏勝利で再燃する関税懸念の行方

Finasee(フィナシー)

市場評価の高さが評価、8月にJPXプライム150指数に新規採用

トヨタ自動車は2024年8月、JPXプライム150指数に採用されました。指数の誕生当初はトヨタ自動車の採用がないことが話題でした。市場評価(PBR基準)の高さが認められ、年1回の定期入れ替えで組み入れられることとなりました※。

※出所:JPX総研 JPXプライム150指数の構成銘柄の定期入替について

そんなトヨタ自動車ですが、実は株式の評価は足元で揺れています。

トヨタ自動車の株価は2024年3月にかけて上昇しました。同月27日には取引時間中に上場来高値(3891円)を付けています。しかし以降は下落トレンドとなりました。8月に起きた日本市場の急落からの反発も弱く、上場来高値からの下落率は31.6%に達します(2024年11月8日終値)。

トヨタ自動車は今期(2025年3月期)に大きめの減益を予想しています。業績への懸念が株価に表れているのかもしれません。またグループで相次ぐ認証試験の不正問題も影を落とします。

【トヨタ自動車の株価チャート】
・株価:2662.5円(2024年11月8日終値)

出所:Tradingview

トヨタ自動車の株価は持ち直すのでしょうか。今期の業績から探ってみましょう。またトランプ氏が大統領選に勝利したことで懸念される自動車向けの関税についても紹介します。

自動車最大手、売上45兆円 海外販売は現地生産が75%

業績の前に、まずはトヨタ自動車の概要を押さえておきましょう。

トヨタ自動車は世界最大級の自動車メーカーです。グループの世界販売台数は2023年まで4年連続で首位となりました。売り上げの規模は、国内の主要な自動車メーカーで圧倒的です。

【主な自動車メーカーの売り上げ(2024年3月期)】
・トヨタ自動車:45兆953億円
・本田技研工業:20兆4288億円
・日産自動車:12兆6857億円
・スズキ:5兆3742億円
・マツダ:4兆8276億円
※トヨタ自動車と本田技研工業は国際会計基準、その他は日本基準
※トヨタ自動車は営業収益、本田技研工業は売上収益、その他は売上高

出所:各社の決算短信

トヨタ自動車の中核事業は自動車と金融です。自動車セグメントは自動車と自動車関連部品の製造と販売で構成されます。金融セグメントは、主に自動車の販売にかかる金融と車両リースです。その他セグメントは主に情報通信業を行っています。

【トヨタ自動車のセグメント業績(2024年3月期)】

出所:トヨタ自動車 決算短信

トヨタ自動車は為替の影響が大きいことで有名です。世界で自動車を販売することから、収益の多くが外貨です。しかし財務諸表は日本円で作成するため、換算リスクがあります。円安は業績を大きくし、反対に円高は小さくします。

なお、輸出の割合は大きくありません。2024年3月期は、海外における販売台数の75%が海外での生産でした。主要市場の北米向けとアジア向けは、それぞれ75%と97%が現地生産です。

割合が小さいとはいえ、輸出が業績へ与える影響はやはり大きいと考えられます。仕向け別※の販売台数は海外が中心ですが、収益と利益は輸出分を含む日本が最大です。

※仕向け…最終的な需要地

【地域別の状況(2024年3月期)】

出所:トヨタ自動車 有価証券報告書

 

前期は大躍進、営業益は日本企業で初の5兆円台 今期は投資拡大で減益

次にトヨタ自動車の業績を確認しましょう。

2024年3月期は大幅な増収増益となりました。好調の主因は販売台数の増加と価格改定です。また円安が進んだことも利益を押し上げました。営業収益と営業利益、純利益はいずれも過去最高を更新。営業利益は、日本企業で初めて5兆円を突破しました。

出所:トヨタ自動車 有価証券報告書より著者作成

ただし、今期(2025年3月期)は大幅の減益を予想します。利益は前期比で2~3割の減少を見込みます。減益は前期の市場環境の好調がはく落すること、また人的投資と成長投資を拡大することが主な原因です。

進捗はどうでしょうか。第2四半期までの進捗率は営業収益で50.6%、営業利益で57.3%、純利益で53.4%となりました。生産停止や日野自動車のエンジン認証問題といった一時的な要因もありながら、コスト改善や為替による増益効果もあり、おおむね順調な消化となりました。

なお、中間決算では投資額の引き上げも発表されました。従来は人的投資と成長投資で7000億円を投じる計画でした。これに1300億円を追加し、計8300億円を今期に投じます。

投資を積み増したことで費用は増加することが見込まれます。しかし通期の業績予想は、税引き前利益を除き据え置かれました。費用の増加分を、生産の回復とインセンティブの抑制、また補給や用品を中心としたバリューチェーン収益の拡大でカバーすることを目指します。

【トヨタ自動車の業績予想(2025年3月期)】
・営業収益:46兆円(+2.0%)
・営業利益:4兆3000億円(-19.7%)
・税引き前利益:4兆9800億円(-28.5%)
・純利益:3兆5700億円(-27.8%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想

出所:トヨタ自動車 決算短信

メキシコへ2000億円超を投資 しかしトランプ氏は高関税を示唆

トヨタ自動車はメキシコへの投資を増やす計画です。しかしトランプ氏がアメリカ大統領選を制したことで、影響を懸念する声も聞かれます。

メキシコ経済省は2024年11月、トヨタ自動車のメキシコ法人が同国へ14億5000万ドル(1ドル=150円で2175億円)を投資することについて通知を受けたと明かしました。投資は北米向けのピックアップトラック「タコマ」の生産工場に使われます。

トヨタ自動車は2002年にメキシコへ進出し、これまで約20億ドルを投じてきました。今回の投資で、投資額の累計は34億5000万ドル(同5175億円)となります。

メキシコへの投資は、アメリカ向け輸出車の増産を見込んでいると考えられます。しかし2025年に新大統領になることが確実視されるトランプ氏は、メキシコからの輸入車に高い関税を課すことを示唆します。

トランプ氏はこれまで、メキシコで生産された中国の自動車が多く流入していると指摘してきました。海外で生産されるため、雇用がアメリカで生まれないという主張です。

トランプ氏は前回の大統領時代も中国製品に高い関税を課した経緯があります。中国側も報復関税で対抗したため、米中貿易摩擦と呼ばれました。

かつてアメリカの輸入相手国の1位は中国でしたが、現在はメキシコが首位です。2018年に2割を超えていたアメリカの輸入に占める中国の割合は、2024年1~6月は12%台にまで低下しています※。

※出所:ジェトロ 米中関係から見る貿易構造の変化(米国、中国、世界)

トランプ氏の関税を巡る政策は、対中国を念頭に置いていると考えられます。しかしアメリカへの輸出が多い日本の自動車メーカーも影響を受ける可能性があります。当面はトランプ氏の関税政策に注目が集まりそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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