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“65歳まで国民年金加入”で受給額アップを目指すはずが…59歳女性が見落としていた「年金ルールの落とし穴」

Finasee / 2024年11月21日 11時0分

“65歳まで国民年金加入”で受給額アップを目指すはずが…59歳女性が見落としていた「年金ルールの落とし穴」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

自営業の信二さんと妻の幸恵さんはともに59歳です。まもなく60歳を迎えるにあたって将来の年金について考え始めました。

インターネットで情報を調べたところ、年金が「1カ月納付で年額1700円増える」計算であることを知ります。若い頃に未納期間があった信二さんと全額免除の期間があった幸恵さんは、60歳から5年間、国民年金に任意加入することを検討し始めました。

ところが年金事務所で相談した結果、任意加入で保険料を5年間支払うと、同額程度を年金として回収するのに信二さんは10年、幸恵さんは15年かかることが判明します。

●前編:【年金】60歳からいくら増やせる? 保険料を納めていなかった夫婦が検討する「受給額アップの方法」

60歳時点で納付+免除で40年ある場合は注意

払った保険料と年金額の累計額が同額になるためには、幸恵さんの場合15年もかかるというのは、幸恵さんの加入記録・納付実績が原因です。

20歳から60歳になるまでの40年(480月)のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間が両方含まれ、その合計で480月ある人が60歳以降任意加入した場合、480月ない場合と増え方が異なっています。

幸恵さんはかつて96月分の保険料の全額免除を受けていました。このまま60歳を迎えると、60歳時点で保険料納付済期間が384月、保険料免除期間が96月となり、両者の合計で480月ある人になります。これだけでは何のことか幸恵さんもさっぱり理解できません。

実は、免除を受けている場合、未納の場合よりも元々多く年金が計算されていました。老齢基礎年金の額は、保険料負担分だけでなく国庫負担分(税金の負担)も含まれて計算されることになっています。幸恵さんの保険料免除期間は全て平成21年3月以前の全額免除期間でしたが、その期間中、たとえ全く保険料を納めていなくても、納付した場合の3分の1の額が国庫負担分として年金額に反映されていることになっています。未納の場合、国庫負担はありません。

480月全て保険料納付済期間の場合は81万6000円×480月/480月=81万6000円の満額で計算されることになりますが、保険料全額免除期間96月、残り384月が保険料納付済期間の幸恵さんの場合、81万6000円×(384月+96月×1/3)/480月で計算され、70万7200円となります。

96月分がもし未納だった場合は、81万6000円×384月/480月=65万2800円になっていたところです。免除申請により、96月分は0円とならず、5万4400円多く計算されることになります。

納付+免除で480月ある人が任意加入した場合

問題はここからです。もし、60歳から65歳になるまでの5年間納付した場合、20歳から65歳になるまでの45年(540月)間で保険料納付済期間444月+保険料免除期間96月の合計540月になりますが、老齢基礎年金の計算上、合計480月を超える分の免除期間については3分の1の国庫負担の反映がないことになります。

より具体的に見ていくと、老齢基礎年金の計算上は、保険料納付済期間444月が優先され、全額免除を受けた保険料免除期間96月のうち、合計480月になるまでの36月分が国庫負担3分の1として反映されます。そして、96月のうちの残り60月分については国庫負担がなく、その分の年金額は0円と計算されます。

すると、81万6000円×(444月+36月×1/3)/480月=77万5200円となります。その結果、5年間100万円程度保険料を納付したとしても、増える額は年額6万8000円(77万5200円-70万7200円)となる計算です。約100万円を6万8000円で割ると約15になりますので、15年間年金を受け取ると払った保険料に等しくなります。

一方、信二さんの場合は、60歳時点で保険料納付済期間378月と保険料免除期間0月をあわせて378月のため、合計480月に達していませんでしたし、65歳まで5年間任意加入しても保険料納付済期間が438月になるため、やはり480月にはなりません。そのため、単純に81万6000円×378月/480月=64万2600円から81万6000円×438月/480月=74万4600円に変わり、10万2000円増える計算になっていたのです。

免除期間は元々3分の1の額が反映されている

したがって、幸恵さんの場合、払った保険料の額以上の老齢基礎年金を受給するためには65歳から80歳までの15年かかる計算です。国庫負担により納付がなくても納付した場合の3分の1(※平成21年4月以降の期間は2分の1)が年金額に反映される一方、保険料を払って増えるのは残り3分の2(※平成21年4月以降の期間は2分の1)相当ということになります。

「なかなか難しい計算方法なのねぇ。じゃあ、1カ月の納付あたり1700円ではなく、その3分の2の1133円くらいしか増えないということね。1700円という数字ばっかり気になっちゃってたけど、免除を受けていたから既に3分の1は出ていたってことね」とようやく理解しました。

「80歳までは生きるつもりでいるし」と幸恵さんはそれでもやはり年金を増やしたいと思うようになり、信二さんだけでなく幸恵さんも60歳になったら任意加入をすることにしました。

保険料を払っていない期間がある人は60歳以降年金を増やせないか考えることもあるでしょう。実際にいくら増えそうか、年金事務所等で事前に確認しておくことが大切です。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。

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