「日米同時株安」で狼狽した人にこそ伝えたい“みんなと同じ”の落とし穴 ー「自分で考え、納得できる投資」を見つけるには
Finasee / 2024年11月20日 12時0分
Finasee(フィナシー)
近年、「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、多くの個人投資家が資産運用の世界に足を踏み入れています。新NISAの導入により、投資は以前にも増して身近なものとなりました。しかし、2024年8月初旬に発生した日米同時株安は、特に新NISAを通じて初めて投資を始めた人々にとって、大きな衝撃となりました。このような市場の急変動は、短期的なリスクの現実を投資家に突きつけると同時に、資産運用を考える上で重要な教訓として受け止めるべきでしょう。
クオリティ・オブ・ライフを守るための資産運用今、投資は自己責任と言われています。当たり前のように聞こえますが、かつては企業年金の多くが確定給付型(DB)で、資産運用のリスクは企業が負っていました。現在では、個人が運用先を選択してリスクを取る確定拠出型(DC)への移行が進んでいます。また、銀行預金もかつては高金利の時代がありましたが、今では預金だけで資産形成をすることは難しくなっています。
このような時代だからこそ、自分で考え、納得したものに投資する姿勢が求められます。「みんながやっているから」「人気だから」という理由で選んだ投資商品では、リスクが顕在化した際に精神的なショックも大きくなりかねません。逆に、自分自身が投資の仕組みやリスクを理解し、納得した選択を行うことで、初めて自己責任で投資を行うメリットが生まれるのではないでしょうか。
資産運用の最終的な目的は、「クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)」を守り、高めることにあります。これは、単なる金銭的な豊かさだけでなく、精神的な安定や充足感を含むものです。
たとえ長期的には投資で利益を得られる見込みがあったとしても、リスクを過小評価した結果、短期的であれ大きな損失を被れば、「最後は儲かるはずだ」と自分に言い聞かせても、その過程で生じる精神的な負担は無視できません。その結果、クオリティ・オブ・ライフは大きく損なわれる可能性があります。
機関投資家に学ぶ分散投資の重要性クオリティ・オブ・ライフを守るためには、短期的にも変動の少ない資産運用を目指すことが重要です。その鍵となるのが「分散投資」です。ここで参考になるのが機関投資家の投資手法です。
機関投資家は、誰もが証券会社を通じて取引できる株式や債券だけでなく、非上場企業の株式やデット、不動産、インフラ……といった一般的に手の届きにくいオルタナティブ資産に分散投資を行い、運用の安定性とリスク管理を徹底しています。
たとえば、以下のようなプライベートアセットは、株式や債券と異なるリスク・リターン特性を持ち、組み合わせて持つことでポートフォリオの安定性を向上させる効果があります。
・プライベートエクイティ:非上場企業への投資を通じて、成長ポテンシャルを引き出し、高いリターンを期待できる。
・不動産:安定的な賃貸収益や長期的な価値上昇が見込める資産クラス。
・インフラ:公共インフラやエネルギー施設への投資を通じて、安定的なキャッシュフローを提供。
・プライベートクレジット:銀行が融資しにくい中小企業への直接融資を通じて、安定したインカムリターンを期待できる。近年、個人投資家にもアクセス可能な機会が増えている。
さらに、近年では、音楽著作権に投資するといった新たなプライベートアセットも登場しており、世界的に注目され始めています。音楽著作権は、ロイヤリティ収入を通じて景気の影響を受けにくい安定的な収益を生む資産として、これまでとは異なる魅力を提供しています。
これらの投資手法は、ポートフォリオ全体のリスクを分散し、リターンの安定性を高める手段として、個人投資家にも参考になります。
プライベートアセットへの個人投資家のアクセス近年では、こうしたプライベートアセットに個人投資家がアクセスできる手段も増えています。小口化された投資商品やファンドを活用することで、少額からでもこれらの資産に投資することが可能です。
ただし、これらの投資は情報の非公開性や専門知識の必要性といった課題があるため、リスクを理解し、自分のリスク許容度や投資目標に合った選択を行うことが重要です。
「自分で考え、納得できる投資」を選ぶには自己責任で投資を行う時代の到来において、重要なのは「自分で考え、納得できる投資」を選ぶことです。また、クオリティ・オブ・ライフを守るためには、機関投資家に学び、株式や債券だけでなく、オルタナティブ資産を活用した多様な分散投資を取り入れることが効果的です。
次回以降の記事では、プライベートアセットの基本的な仕組みやメリット、機関投資家が実践している分散投資の手法、タイムリーなマーケットのニュースに潜む本質の見抜き方など、幅広い視点から資産運用のヒントをお届けする予定です。
木村 大樹/Keyaki Capital代表取締役CEO
野村證券でオルタナティブ商品の営業に従事した後、ニューヨークで証券化ビジネスに携わり、サブプライム危機に直面しながら問題解決に努める。帰国後はバークレイズ証券を経て、2012年にシティグループ証券の年金ソリューション部長、2015年からはマッコーリー・インベストメント・マネジメント日本代表。2020年に個人に公開されていない世界中のプライベートアセットへの投資機会を、充実感と高揚感に満ちた投資体験として提供するKeyaki Capitalを創業。一橋大学経済学部卒。
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