ホンダ【7267】の株価はなぜ上がらない? 配当利回り4.9%に 株価急落はチャンス? 苦戦の中国の打開策とは
Finasee / 2024年11月18日 6時0分
Finasee(フィナシー)
決算で売られる 株価下落で配当利回りは向上
本田技研工業(ホンダ)は2024年11月、今期(2025年3月期)の中間決算を発表しました。売り上げと営業利益は前年同期比で増加したものの、以降の段階利益は1~2割の減益、通期の純利益予想も下方修正という厳しいものでした。
中間決算と同時に1000億円を上限とする自社株買いを公表したものの、株価は下落しました。株価の下落は3月下旬から続いており、5年騰落率は+29.3%にまで低下しています(2024年11月11日終値)。
【本田技研工業の株価チャート(過去5年間)】
・株価:1379.5円(2024年11月11日終値)
もっとも、株価の下落はチャンスでもあります。例えば配当利回りは、株価が下落したことで4.9%にまで上昇しました。新規の投資を考える人も少なくないでしょう。
【本田技研工業の予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:68円
・予想配当利回り:4.93%
出所:本田技研工業ホームページ
せっかく投資するなら新NISAを活用したいところです。新NISAなら配当金を非課税で受け取れます。
個別株式は新NISAで年240万円まで投資できます。本田技研工業は、足元の株価水準なら1700株まで購入可能です。配当金が計画どおりなら受取配当金は11万5600円、本来かかる約2万3000円の税金も免除されます。
配当利回りが高いとはいえ、値下がりが続く株式を買ってもよいのでしょうか。どの株式にもリスクはありますが、少なくとも下落の要因は知っておきたいところです。
決算の反応から、ホンダの株価下落は業績が理由の1つとなっていると考えられます。そこで、本記事ではホンダの足元の業績と、苦戦が続く中国市場での取り組みについて解説します。
【関連記事】日本初の営業益5兆円を達成したトヨタ自動車、最新決算に見る今後 メキシコへ投資拡大もトランプ氏勝利で再燃する関税懸念の行方
二輪車のシェア世界首位 四輪車は国内で「N-BOX」が快走
まずはホンダの概要を押さえましょう。
ホンダは自動車メーカーの大手です。売り上げの規模はトヨタ自動車に次いで2番目に位置します。特に二輪車に強みがあり、世界シェアは首位です。インドやインドネシアといった新興国を中心に、世界で二輪車を年1800万台以上販売します。
国内では軽自動車で高いシェアを持ちます。「N-BOX」は販売台数の国内首位の常連です。登録車(普通車)を含む総合では3年連続、軽自動車のみでは9年連続の首位となっています(2023年度)。
【軽四輪車の新車販売台数 上位5車種(2023年度)】
・N-BOX(ホンダ):21万8478台
・スペーシア(スズキ):13万3410台
・タント(ダイハツ):12万4862台
・ハスラー(スズキ):9万2456台
・ムーヴ(ダイハツ):7万6174台
出所:全国軽自動車協会連合会 通称名別新車販売
二輪事業と四輪事業のほか、金融サービスとパワープロダクツ事業も展開しています。
金融サービス事業は、主に自動車の販売金融やリース事業で構成されます。パワープロダクツは、主に自動車以外の製品の販売です。耕うん機や発電機、また航空機の「ホンダジェット」などの販売を行っています。
利益の多くは二輪事業と四輪事業から得ています。パワープロダクツ事業は、航空機や航空機エンジンの損失が大きく、足元は赤字です。
【本田技研工業のセグメント業績】
出所:本田技研工業 決算短信【関連記事】商船三井の株価5倍、上方修正で予想配当利回り5.7%に 運賃市況の今後の見通しは?
前期は7割増益も、中国の不振で今期は苦戦 利益予想を500億円下方修正次にホンダの業績を振り返りましょう。
去る2024年3月期は大幅な増収増益でした。前期比で売り上げは2割の増加、純利益は7割の増加となりました。二輪の販売が前期並みにとどまるなか、四輪の販売が米国を中心に好調でした。値上げや円安の効果もあり、利益を大きく増やしています。
出所:本田技研工業 有価証券報告書より著者作成
しかし今期(2025年3月期)は苦戦しているようです。期首時点で純利益は前期比9.7%減となる1兆円を見込んでいました。しかし、中間決算ではこの見通しを9500億円へ引き下げています。為替の前提を140円から148円に引き上げての下方修正は、同社の厳しい状況をうかがわせます。
【本田技研工業の業績予想(2025年3月期)】
・売上収益:21兆円(+2.8%)
・営業利益:1兆4200億円(+2.8%)
・純利益:9500億円(-14.2%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:本田技研工業 決算短信
苦戦は主に中国市場での四輪の不振です。期首時点では106万台の販売を計画していました。しかし中間までの販売台数は38.1万台にとどまります。
これを受け、四輪全体の販売台数の予想を期首時点から32万台引き下げ ました。中国の現地法人の損益が反映される持分法投資損益も、期首の100億円の黒字予想から第1四半期に300億円の赤字予想、第2四半期では550億円の赤字予想に相次いで下方修正しています。
【販売台数の見通し(2025年3月期)】
・二輪:2020万台(+40万台)
・四輪:380万台(-32万台)
・パワープロダクツ:366万台(―)
※()は期首予想比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:本田技研工業 決算説明会資料
【関連記事】JT(日本たばこ産業)の株価はどこまで上がる? 配当金は10年で2倍に増加! 将来を左右するのは海外戦略の成長性
中国事業を見直し、2工場の停止&リストラ3000人 EVシフト強化中国の不振は今期(2025年3月期)だけではありません。四輪の販売台数は2024年3月期まで3期連続で減少しています。直近ピークの2021年3月期からの減少率は3割を超えています。
出所:本田技研工業 決算説明会資料より著者作成ホンダは中国事業のリストラを進めます。2024年7月には中国の工場の一部で閉鎖や休止を行う方針を示しました。人員削減も2023年までに3000人規模で実施。今期も同等かそれ以上の規模で行う方針を示しました。
一方でEV(電気自動車)の生産は強化します。現地法人の東風ホンダは、2024年10月にEV専用工場を稼働させました。同じく現地法人の広汽ホンダも、2024年の稼働を目指すEV工場が建設中です。生産能力はいずれも年12万台を見込みます。
中国での苦戦は、同地域のEVシフトが背景にあるとみられます。中国のEV販売は2021年以降に急増しました。2023年には販売の3台に1台がBEV(バッテリー電気自動車)あるいはPHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)という状況です。ガソリン車が中心の日本勢は、販売が伸びなかった可能性があります。
出所:国際エネルギー機関 Global EV Outlook(2024年4月)中国は世界最大の自動車市場です。成長を目指すなら、中国でのシェアは残しておきたいところでしょう。ホンダはEVを強化し、販売不振からの脱却を目指します。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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