バランスでありながら一部株式型に匹敵のパフォーマンス、八十二銀行で「セゾン・グローバルバランス」が売れる理由
Finasee / 2024年11月29日 7時0分
Finasee(フィナシー)
八十二銀行の売れ筋バランスファンド
八十二銀行は、長野県長野市に本店を置く地方銀行だ。行名は「はちじゅうにぎんこう」で、旧六十三国立銀行と第十九国立銀行が合併して誕生したことから、行名の数字を合算(63+19)して生まれた銀行名だ。長野県は広大な面積があるため、長野市が位置する「北信」、上田市のある「東信」、松本市のある「中信」、伊那市や飯田市のある「南信」といった経済ブロックに分かれ、銀行も分立していたが、戦前に八十二銀行を軸として統一が進んだ。その後、2001年に経営破たんした新潟中央銀行の長野県内の店舗を統合し、2022年には長野銀行と経営統合することで合意。2026年1月に八十二長野銀行となることが発表されている。
八十二銀行の取扱投信は2024年9月末時点で155本。NISA「つみたて投資枠」の対象商品は29本、「成長投資枠」は94本、また、インターネット専用は4本になっている。インターネット専用商品は4本ながら、151本の商品がインターネットでも購入可能になっている。取扱投信を投資資産別に分類すると、「国際株式」が53本で最も多く、次いで「複合商品」の45本、「国際債券」の21本、「国内株式」の20本が続く。その多様な商品ラインナップの売れ筋ランキングをみると、「複合商品」に分類されるバランスファンドの「セゾン・グローバルバランスファンド」が常に上位に位置している。
バランスファンドのラインナップが充実八十二銀行のバランスファンドのラインナップは充実している。「MUFGウエルス・インサイト・ファンド」「のむラップ・ファンド」「GW7つの卵」「One国際分散投資戦略ファンド(目標リスク8%)<愛称:THE GRiPS 8%>」「財産3分法ファンド」「投資のソムリエ」、「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド<愛称:クアトロ>」など、リスク管理を厳格に行うことに特徴のある国内を代表するようなバランスファンドが並ぶ。加えて、「グローバル3倍3分法ファンド」、「グローバル5.5倍バランスファンド(1年決算型)(ゴーゴー・バランス(1年決算型))」などレバレッジ(テコの原理)を効かせた、ややリスク水準の高いバランスファンドまでそろっている。
もちろん、定型的な分散比率でリバランスする比較的単純なバランスファンドである「ドイチェ・ライフ・プラン」や米国では個人の年金運用で活用される「フィデリティ・ターゲット・デート・ファンド」もある。高度に分散してリスク水準を一定に保つタイプのバランスファンドから、伝統的なわかりやすい分散投資のツールとしてのバランスファンドまで、よく考えられたラインナップになっている。
八十二銀行のバランスファンドのラインナップは、国際株式ファンドのラインナップと比べると、その特徴がよりはっきりする。商品の数としては複合商品」よりも「国際株式」の方が多いのだが、「国際株式」はインデックスファンドの本数が多く、インデックスファンド以外の商品は「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(ゼロ・コンタクト)」、「グローバル水素株式ファンド(H2)」、「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(健次)」、「ロボット・テクノロジー関連株ファンド-ロボテックー」など特定の産業等に投資対象を絞った商品が目立つ。特定のテーマに投資するファンドは、商品としてのわかりやすさはあるが、比較的ボラティリティ(価格変動率)が高くなりやすく、どちらかといえば、単体で投資するよりメインの投資対象に追加して購入する部品のような性格がある。
投信ラインナップの様子からは、充実した品ぞろえのあるバランスファンドで資産運用の「コア」を形成し、特徴の明確な株式ファンドや債券ファンド、その他のファンドを「サテライト」として組み合わせて、個々の顧客の考え方や投資ニーズに合わせたポートフォリオを作ってほしいというような考え方を示しているように感じる。
市場規模に応じた資産配分で世界の成長を取り込むそのような充実したバランスファンドの中で、売れ筋として利用者から支持を集めているのが「セゾン・グローバルバランスファンド」だ。8月から売れ筋トップの座に座り続けている。このファンドについては、取り扱っている八十二銀行でも「バランス型でありながら、一部株式型を上回るパフォーマンスを見せており、常にランキング上位に名前が載ってくるファンド」(営業企画部 資産運用サポートグループ 近藤一志氏)として評価している。
「セゾン・グローバルバランスファンド」は、ファンド・オブ・ファンズ形式で、米バンガード社のインデックスファンドへの投資を通じて国内外の株式と債券に半分ずつ投資するバランスファンドだ。株式、債券ともに、地域別の配分比率は市場規模の大きさを勘案して決定し、比率の見直しを毎月行うことで、市場の変化に対応している。適宜リバランスを行うことによって、価格が上昇した資産の利益確定を行い、価格が下落した資産を押し目買いするという効果が期待できる。その結果、世界の市場が中長期的に右肩上がりに成長するものであれば、同ファンドに投資することによって世界の市場の成長に応じた投資成果を獲得することが可能になる。
同行が「セゾン・グローバルバランスファンド」を説明する際のポイントとしているのは、「株式と債券に原則半分ずつ投資を行い、長期の資産形成を目的としたバランス型ファンド」、そして、「リバランスにより世界経済の成長をしっかり取り込む」という点だという。そのため、顧客からも「ファンド・オブ・ファンズにより、長期分散投資を目的とした運用を行っている点が評価されていると推察します」(近藤氏)という。長期での投資に魅力があると感じさせるような着実なパフォーマンスの高さもあり、「他のバランス型ファンドと比較した際の過去パフォーマンスも当ファンドを後押しする要因と推察します」(同)と人気の背景を分析している。
バランスながら低コスト運用を実現「セゾン・グローバルバランスファンド」は、2007年3月の設定から17年を超える運用実績があるが、この間、たとえば過去10年間(2014年10月末~2024年10月末)で同ファンドのトータルリターンは115.16%で投信協会の分類(追加型/内外/複合資産)平均の61.75%を大幅に上回っている。このように優れた成績を残している要因について、同ファンドを運用するセゾン投信は、「特に株式部分への投資において、市場規模の大きさを勘案して地域別配分比率を決定したことにより、パフォーマンスが良好な地域の資産にきちんと資産を配分してきたこと。税の支払いを含めたコストの低減に努めてきたこと」(マルチマネージャー運用部長ポートフォリオマネージャー 瀬下哲雄氏)と振り返っている。
市場規模に応じて配分比率を決定するという同ファンドの運用コンセプトが世界経済の成長を捉えるという同ファンドの目的に適っているのだろう。また、毎月の資産配分比率の調整、そして、同ファンドが資産を分散投資するために利用しているバンガード社のインデックスファンドは世界的にも低コストで運用されており、運用にかかわるコストを低く抑えていることも他のファンドとの比較において運用成績を押し上げる要因の1つになっていることは間違いないだろう。
今後の運用の見通しについては、「株式市場が上昇した場合は株式を売却するとともに債券を購入し、株式市場が下落した場合は債券を売却するとともに株式を購入することにより、リスクを低減しながらリターンの向上を目指します。また、地域別の資産配分比率は、市場規模の大きさを勘案して決定し、幅広い投資機会を活用してまいります」(瀬下氏)と従来の運用を引き続き忠実に実行していくことに徹する。
世界の市場は、米国の利下げや新大統領就任、また、ロシアと北朝鮮の接近や中東での緊張など、かつてなく不透明、不確実性が高まっている。そのような中だからこそ、これまでの実績で裏付けのある運用方法を淡々と継続する方針を貫くのだろう。これまでの実績は、その方法が効果的であったことを示している。このような一貫して変わらぬ運用姿勢も、同ファンドの信頼と人気に結び付いていると考えられる。
徳永 浩/「フィナシープロ」投信アナリスト
株式専門新聞社で株式・投信市場、上場企業を担当し取材活動をスタート。日本金融通信社『ニッキン』にて地方銀行をはじめ地域金融機関を担当し、投信の銀行窓販の黎明期を取材。日銀記者クラブ、兜倶楽部に所属した。モーニングスター社において投信市場に特化した取材活動を行った後に独立し、投信や年金などウェルビーイングの観点から取材を続けている。
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