"元・MSCIの中の人”が語る「オールカントリー」を買っている人が「知らないかもしれない」ある重要な“事実”
Finasee / 2024年11月22日 13時0分
Finasee(フィナシー)
オルカン人気の陰?にMSCIあり
以前、日経新聞でMSCIについての記事があった。「日本株、薄れる存在感 米MSCIの全世界株指数から14銘柄減 円安で時価総額目減り」というタイトルの記事である。今、話題の”オールカントリー”についてだ。良い機会なので、これについて少し書きたい。筆者は何を隠そう、若いころMSCIでしばらく働いていたのだ。
さて、個人投資家にも 人気の高い「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、通称”オルカン”の名前の由来は、その正式名称であるMSCIの”All Country World Index(オールカントリーワールドインデックス)”つまり全世界指数だ。専門家の間ではむしろ頭文字ACWIをとって”アクイ”と呼ぶ。
実は、機関投資家に最も使われているインデックスはオールカントリーよりも、”MSCI World Index(ワールド)”の方だ。これは先進国23カ国の株式市場を表す。ちなみに日本の機関投資家に外国株式の指数として最も使われているのはワールドから日本を除いた指数で"MSCI Kokusai Index(コクサイ)”と名付けられている。
これらに対してオールカントリーはエマージング国24カ国の株式市場も合わせた指数だ。
日経記事の趣旨はオールカントリーの構成銘柄が変更され、日本のシェアが減っているということだ。MSCIは四半期ごとに構成銘柄を入れ替えている。ここで着目したいのは、どのように構成銘柄が決まるのか?ということだ。
MSCIの構成銘柄の決まり方MSCIの構成銘柄は、文書化されて公開されたメソドロジー(ルール)ブックに基づき、実際にはMSCI社内の委員会により決定される。
定量的なルールでは決められない部分も大いにある。従ってMSCIは定性的な要素も鑑みて決めると言っている。委員会のメンバーは今は知らないが、私がいた当時はわずか数人だった(日本人は一人も入っていなかった)。
構成銘柄はフリーでは公表されていないので現状を確認していないが、筆者が働いていた当時は、例えばなぜ電通が入っていて博報堂が入らないのか?という疑問を受けたことがある。「MSCIは各地域の各セクター全体を代表する銘柄を選ぶ」という基本方針があるため、日本のそのセクターの代表として電通が選ばれたという説明だったと思う。
ここで言いたいのは、インデックスといっても、結局誰かが銘柄を選んでいるということだ。
「アクティブファンドと違って、インデックスファンドへの投資は市場全体に低コストで投資できるので良い」という論調は正しいように聞こえるが、オルカンに一極集中することは、業績などに関わらずMSCIの委員会が選んだ銘柄が、自動的に投資されるという状況を生み出している。
これが今、日本の新NISAを通じて、兆円規模で行われてる現状だ。
木村 大樹/Keyaki Capital代表取締役CEO
野村證券でオルタナティブ商品の営業に従事した後、ニューヨークで証券化ビジネスに携わり、サブプライム危機に直面しながら問題解決に努める。帰国後はバークレイズ証券を経て、2012年にシティグループ証券の年金ソリューション部長、2015年からはマッコーリー・インベストメント・マネジメント日本代表。2020年に個人に公開されていない世界中のプライベートアセットへの投資機会を、充実感と高揚感に満ちた投資体験として提供するKeyaki Capitalを創業。一橋大学経済学部卒。
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