「金利のある世界」を迎える日本人が知るべき、「資産を守る」ためにヨーロッパの富裕層が重視するたった一つの自然な“要求”
Finasee / 2024年12月2日 13時0分
Finasee(フィナシー)
「元本を保全したい」
投資や資産運用をする目的は、お金を増やすことであろう。もちろん投資にはリスクはつきものである。しかしなるべく投資した元手をなくしたくない、つまり元本を保全したいというのは至極自然な要求だ。
例えばヨーロッパの富裕層は代々資産を守るということに重点を置いており、資産運用においては元本保全を最重視するという。もちろんインフレに負けないために銀行預金や国債だけ買うというわけにいかず、元本を保全しながら十分なリターンを得る「絶対収益(Absolute Return)」型投資への要求からヘッジファンドやプライベートエクイティなどの「オルタナティブ投資」が発展した。
しかし金利のない世界が続いた日本では、この元本保全という投資の原点的な発想が今や忘れ去られたか、もしくは無視されてしまっているようだ。その背景は三つあると思う。
「元本保全」が忘れ去られた3つの理由①金利のない世界では、元本を保全しながら儲ける投資が難しい
金利があれば、銀行預金や国債の満期保有など元本の毀損(きそん)リスクがほぼない投資でも金利が得られるが、金利がない世界ではリターンがない。日本でも以前は銀行に定期預金をしておけば満期時に十分なリターンが得られる時代があったが、現役世代はその恩恵を受けたことがない。
その結果、リターンを得るにはリスクを負うのは当たり前で、投資において元本保全などは不可能と考えるようになったのであろう。
②金利のない世界では、金余りによりあらゆる投資が儲かりやすい
世の中の金利を決めるのは中央銀行だ(正確には最も基本となる政策金利を決めるのは中央銀行で、それに世の中のあらゆる金利が影響を受ける)。金利がないのは、中央銀行が景気を刺激したいため、もしくはデフレを阻止したいために金利をなくしているわけだ。
その結果、市中にはお金があふれ、あらゆる資産の価値が上がりやすい。つまり金利のない世界では、株式や不動産を含め本来リスクの高い投資でも儲かりやすく、元本保全という考えは忘れられてしまうのであろう。
③「長期投資」を錦の御旗に短期的な元本保全が軽視されている
上記のような環境の中、個人の資産運用にも超長期の投資を前提にした「積立投資」や「現代ポートフォリオ理論」による分散投資という考え方が浸透しているようだ。
後者は現代といっても70年前にでき上がった理論だが、生命保険や年金など数十年間という超長期で運用する投資家が上場株式など値動きの激しいアセットも投資対象とする上でベースとしている分散投資の考え方で、ある程度短期的なリスクには目をつぶっている。
それでも機関投資家はリスクを極力抑えるためにもオルタナティブ投資にもかなり配分している(個人には難しい)ことは知っておくべきだし、そもそも個人投資の時間軸に合うかどうかという問題もある。
「金利のある世界」での投資方法を知るさて日本では政府の働きかけもあり資産運用への関心がかつてないほど高まっているが、その考え方や方法論に、以上のような背景から元本保全という原点が抜け落ちてしまっているのではないか。
日本の外の世界では金利は急激に戻っており、株式や不動産などリスク資産に対する警戒感が強まっている。その中で、日本人が相変わらず金利のない世界で醸成された考え方で、金利の戻った世界で投資をし続けて大丈夫だろうか?
金利のある世界にはそれなりの投資方法がある。外貨建てて投資できるのであれば、金利が十分に存在することに着目し、その恩恵を受けられるような投資の仕方を考慮するのが良いだろう。対円での為替リスクは取ることになるが、元本の保全を目指しながらリターンを上げる投資も可能なのだ。
木村 大樹/Keyaki Capital代表取締役CEO
野村證券でオルタナティブ商品の営業に従事した後、ニューヨークで証券化ビジネスに携わり、サブプライム危機に直面しながら問題解決に努める。帰国後はバークレイズ証券を経て、2012年にシティグループ証券の年金ソリューション部長、2015年からはマッコーリー・インベストメント・マネジメント日本代表。2020年に個人に公開されていない世界中のプライベートアセットへの投資機会を、充実感と高揚感に満ちた投資体験として提供するKeyaki Capitalを創業。一橋大学経済学部卒。
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