60年間赤字ナシのオリックス【8591】株価は5年で95%上昇、5期ぶり最高益で自社株買い&増配も発表 今期も二ケタ増益を計画
Finasee / 2024年11月25日 6時0分
Finasee(フィナシー)
配当金に下限を設定 株主還元を積極化
オリックスの株価が堅調です。2024年11月14日までの5年で95.3%上昇しました。
株価好調の背景には好調な業績と旺盛な自社株買いがあるとみられます。2024年3月期で純利益は5期ぶりに過去最高を更新、自社株買いの実施は5期連続となりました。自社株買いは今期(2025年3月期)も500億円を計画しています。うち401億円は10月末までに消化しました。
【オリックスの株価チャート(過去5年間)】
・株価:3359円(2024年11月14日終値)
配当金も引き上げます。今期の1株あたり予想配当金は、98.6円を下限に配当性向39%を目指します。前期は1株あたり配当金が98.6円、配当性向は33%でした。
今期の通期純利益の予想は3900億円、達成すれば1株あたり配当金は133.2円となる見込みです。予想配当利回りは下限で約3%、配当金が133.2円なら約4%となります。
【オリックスの予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:98.6円
・予想配当利回り:2.94%
※予想配当金は下限。通期純利益が計画どおり(3900億円)なら133.2円となる見込み(予想配当利回り:3.97%)
出所:オリックスホームページ
業績が好調で株主還元も強化するオリックスは、値上がり益と配当益の双方に期待できます。新NISAならどちらも非課税です。せっかくなら新NISAを通じた投資を検討したいところです。
新NISAでは個別株に年240万円まで投資できます。オリックスは足元の株価水準なら700株まで購入できます。1株あたり配当金が98.6円なら受取配当金は約6万9000円、133.2円なら約9万3000円となる計算です。本来かかる約2割の税金も引かれません。
投資を検討するなら、オリックスの特徴を押さえておきましょう。オリックスの事業構成はやや複雑です。多様なビジネスを展開するほか、投資会社としての性質も持っています。また直近の業績と今期の計画についても解説します。
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10事業を展開するコングロマリット 60年間赤字なしオリックスはリースを中心に成長してきた企業です。現在は事業の多角化が進んでおり、事業区分は10に分かれます。子会社には化粧品のDHCや「ライオンズマンション」で知られる不動産の大京などを持ちます。グループ企業の数は子会社で1132社、持分法適用会社で127社に上ります(2024年3月期)。
主力のリースは主に企業向けの自動車や電子機器などの貸し出しです。また航空機や船舶のリース(輸送機器セグメント)も手掛けます。さらにオリックスは銀行業や保険業、貸金業なども展開しています。俯瞰すると、オリックスは金利の影響が比較的大きい企業といえそうです。
その他の事業は不動産事業やエネルギー事業、企業投資やコンセッション(※)による空港といった施設運営事業などです。また海外事業は主に金融や投資、アセットマネジメントなどで構成されます。
※コンセッション:公共施設の所有権を公的機関に残し、運営は民間事業者が担う事業形態
【セグメント利益(2024年3月期)】
・法人営業・メンテナンスリース:812億円
・不動産:658億円
・事業投資・コンセッション:434億円
・環境エネルギー:299億円
・保険:700億円
・銀行・クレジット:967億円
・輸送機器:268億円
・ORIX USA:173億円
・ORIX Europe:286億円
・アジア・豪州:343億円
出所:オリックス 決算短信
業績は比較的安定しています。2024年3月期までの60年間で最終赤字となったことがありません。金融機関の破綻が相次いだバブルの崩壊期や、アジア通貨危機、リーマンショックといった極端な金融収縮期においても黒字を確保してきました。分散した事業ポートフォリオが業績の安定に貢献していると考えられます。
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投資会社の側面も 利益の2~3割は売却益、今期は最大7500億円を投資オリックスは投資会社の側面も持っています。セグメント利益のおおむね2~3割は保有資産の売却益です。2024年3月期はセグメント利益の合計4942億円のうち1265億円が売却益でした。5年平均の売却益は1120億円に上ります。オリックスは投資と回収を繰り返す戦略を「キャピタルリサイクリング」と呼んでおり、資産収益性の向上を目指しています。
出所:オリックス プレゼンテーション資料より著者作成近年の投資で注目を集めたのが東芝への出資です。資本性のある融資(メザニンローン)も含め2000億円を投じました。東芝は2023年12月に上場廃止となり、非公開企業として再建を目指しています。なお、東芝の2024年度上半期は1163億円の最終黒字となりました(前期上半期は521億円の純損失)。
オリックスは今期(2025年3月期)も投資と回収を進めます。通年では回収が5200億円~6000億円(売却益:1500億円~2000億円)、投資が5000億円~7500億円となる計画です。上半期までの実績は回収が2500億円(売却益:705億円)、投資が3200億円となりました。
売却益は期の後半に増加する傾向にあります。中間まで進捗は遅れているように見えますが、例年どおりなら消化は下半期に加速することが想定されます。
出所:オリックス プレゼンテーション資料より著者作成【関連記事】USスチール買収で注目、「日本製鉄」株価5年で2倍、配当利回り5%に上昇の理由は? 事業再編で費用先行も利益率の改善が進む今後
今期は2期連続の最高益を計画 中間実績は投資部門の好調で前期比4割増最後に全体の業績を確認しておきましょう。
冒頭のとおり、直近の2024年3月期は純利益が過去最高を更新しました。空港や商業施設の運営といったインバウンド関連事業が好調だったほか、保険事業も好調でした。またオリックス・クレジット株式のNTTドコモへの一部譲渡による売却益も利益を押し上げました。
出所:オリックス 有価証券報告書より著者作成今期(2025年3月期)は純利益のみ業績予想を開示しています。前期比で12.7%の増益の計画です。実現すれば2期連続で最高益を更新することとなります。
【オリックスの業績予想(2025年3月期)】
・営業収益:非開示
・営業利益:非開示
・純利益:3900億円(+12.7%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:オリックス 決算短信
今期は第2四半期まで決算を公表しています。純利益は前年同期比42.8%増となる1829億円となりました。
増益は主に投資部門がけん引しました。国内の非上場株式や不動産の売却が貢献したほか、投資先のベース利益も伸長しました。投資部門の利益は前年同期比で3倍に拡大しています。
純利益の通期予想に対する進捗率は46.9%です。50%を下回りますが、オリックスはおおむね想定どおりとしています。例年どおり下半期での売却益の積み上げが想定されます。
オリックスは今期も最高益を更新できるのでしょうか。第3四半期決算は2025年2月上旬に公表の見込みです。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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