1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

50代、60代からiDeCoに加入するメリットはある? 4つのケースで紹介する活用事例

Finasee / 2024年11月29日 12時0分

50代、60代からiDeCoに加入するメリットはある? 4つのケースで紹介する活用事例

Finasee(フィナシー)

2025年4月から、65歳までの雇用確保が完全義務化されます。それに呼応して、定年年齢を60歳以上に変更する企業も増えつつあります。60歳は引退年齢ではなく、60歳を超えても普通に働くことが定着してきたといえます。「人生100年時代」であれば、50歳は折り返し地点。50歳超での確定拠出年金(DC)、なかでも個人型DC(iDeCo)の活用法を考えてみます。

iDeCoは何歳まで「加入者」になれる?

iDeCoでは、定期的に掛金を拠出する人を「加入者」、拠出せずに運用だけ行う人を「運用指図者」といいますが、何歳まで加入者を続けられるか、ご存じですか?

2022年5月の法改正で65歳まで引き上げられました(従来は60歳未満に限定)。

iDeCoは公的年金の上乗せ制度としての税の優遇措置が大きいため、利用範囲が限定されています。そのため、iDeCoの加入者になれるのは、公的年金の保険料を負担している間、という制約もあります。結果的に、60歳以上の誰もが無条件に活用できるわけではありませんが、公務員や会社員で厚生年金保険の被保険者であれば、この条件をクリアしています。

つまり公務員・会社員として働く人は、基本的に65歳までiDeCoを続けることができる、といえます。なお、2022年5月の法改正では、加入可能年齢引き上げのほかにもいくつかの改正が行われました。

・60歳以降からDCを始められる。
・60歳以降からDCを始めた場合は、最初の掛金拠出から5年経過すれば受給可能になる。

中高年になると、体調や環境などによって働き方はさまざまに分かれてきます。iDeCoの活用法を具体的なケースごとに考えてみましょう。

ケース1:「50代前半」はiDeCo加入者になるのに遅くない

・52歳7カ月
・自営業(大学卒業後、6年間企業に勤務した後に独立)
・iDeCo手続きをしなければ、と思っている間に50歳を超えてしまった方
〈理由〉自営業者の拠出限度額は大きいため、一定程度、資産の積み上げが可能
〈受給可能年齢〉62歳(60歳までの期間が7年数カ月のため)
〈加入可能期間〉62歳まで=大学時代の国民年金保険料が「みなし期間」になっており、62歳までの任意加入※を選択。その間、iDeCoの掛金拠出も可能
〈拠出限度額〉月額6.8万円

月額6.8万円を10年間、2%で運用できたとすると911万円になります(拠出総額は816万円)。老後資金の一部として50代から準備する金額としては十分といえるのではないでしょうか。

しかも、毎月6.8万円を拠出すると、年間81.6万円が所得税・住民税のかからない金額となり、税の優遇効果は非常に高くなります。また、掛金の拠出期間は退職所得控除の勤続年数として計算できるため、一時金で受け取る場合は400万円(40万円×10年)までは税がかからず、課税対象は400万円を超える金額の2分の1になります。より税メリットを生かすために、たとえば半分を一時金、残りを年金で受け取ることとすれば、公的年金等控除も活用できます。

※国民年金の任意加入:60歳以上65歳で被保険者期間が40年なければ、任意加入が可能。

ケース2:「早期退職」を検討するなら、税制優遇に焦点

・55歳 
・会社員
・大学卒業後に勤務していた企業を近々、早期退職したいと思っている方(フルタイムで働く会社員の妻との二人暮らし)
〈理由〉iDeCo掛金は所得税・住民税が非課税
退職すると、翌年の住民税が思った以上に負担感が大きくなる。それに備えるため、会社員時代は所得税・住民税を軽減できるiDeCoを最大限活用。
〈受給可能年齢〉63歳(60歳までの期間が4年数カ月のため)
〈加入可能期間〉60歳まで(妻の扶養に入る予定のため=国民年金の第3号被保険者期間は60歳未満)
〈拠出限度額〉月額2.3万円(他の企業年金制度がないため)

このケースでは早期退職時に退職金が2000万円(早期割り増し含む)支払われる見込みのため、会社員時代の退職所得控除は使い切ります。

iDeCoで4年数カ月分、つみたてた資産は一時金で受け取っても(相当のハイリスク運用をしても)おそらく課税対象にはなりません(2.3万円を50カ月拠出すると元金115万円。iDeCo加入者の間の退職所得控除額は5年分の200万円)。公的年金等控除の金額が増える65歳以降に受給してもいいでしょう。拠出できる期間が短いため、金額的な積み上がりが大きくはありませんが、税制優遇に着目した活用方法です。

ケース3:「60歳以降」も会社員として働く場合は早めのiDeCo

・57歳
・会社員(確定給付企業年金と企業型DCの加入者)
・確定給付企業年金の掛金相当額は1.2万円
・企業型DCの事業主掛金は2万円
・企業型DCの資格喪失年齢は60歳
・現在2万円のマッチング(加入者掛金)拠出を実施
・12月の法改正に注目してiDeCo加入者に。
〈理由〉従来のiDeCoは月額1.2万円が拠出限度額。法改正により月額2万円に増えるので、マッチング拠出と同額までiDeCoへの拠出が可能になる。60歳以降を考えて早めにiDeCoをスタート
〈受給可能年齢〉60歳(このケースでは企業型DCに42歳から加入しているため)
〈加入可能期間〉65歳まで(再雇用で65歳まで働く前提)
〈拠出限度額〉月額2万円(2024年12月以降)、60歳以降は2.3万円拠出可能

定年退職後のライフプランを考えるうえで、DC以外の退職金の使い方や公的年金の受け取り方を試算した結果、企業型DCの資産は将来的にiDeCoに移換し、余裕資金とする予定です。

運用商品は、リスクを抑えたバランス型投資信託を選択します。60歳を超えて企業型DCの運用指図者になった後は、企業型DCの運営管理手数料が本人負担のため、タイミングをみてiDeCoに資産移換します。

ケース4: 「60歳から」のiDeCoはNISA(つみたて投資枠)と比較しながらスタート

・60歳8カ月 
・再雇用で働いている会社員
〈受給可能年齢〉66歳(最初のDC拠出から5年経過後から受給可能のため)
〈加入可能期間〉65歳まで(再雇用で厚生年金保険の被保険者として勤務)
〈拠出限度額〉月額2.3万円

このケースでは、60歳退職時に退職金を1500万円受け取っており、NISAでの運用を考えています。

再雇用の給与は高くはありませんが、所得税は課税されている状態です。NISAのつみたて投資枠での運用を予定していた金額のうち、2.3万円はiDeCoの掛金とすることにして所得税・住民税の軽減効果を活用します。

60歳超の方の場合、若年層にとってのiDeCoの最大のデメリット「60歳まで受け取れない」ことは、それほど大きなデメリットとはなりません。ただ、iDeCoで毎月拠出にすると、最低でも年額2,052円の手数料(毎月66円、拠出時に105円)がかかります※。

掛金拠出を年1回にすれば、手数料も897円まで抑えられるので、税の軽減効果に重点を置くのであれば、そうした対応も考慮に入れましょう。

老後資産を取り崩していく場合も、運用の有無で資産の寿命は大きく異なります。公的年金の受給金額を想定しながら、余裕資金はリスクを抑えた運用にしていきます。

iDeCoは年金制度として設定されているため、ターゲットイヤー型の投資信託のなかには、相場の急落時にいったん運用をストップしてくれる安心機能がついたものもあります。NISAつみたて投資枠の運用商品にはない魅力といえます。ただ、60代になってから初めてDC(企業型DC、iDeCoともに)を活用される場合、最初の拠出から5年間は受け取れない、という点は認識が必要です。

※金融機関によって異なる。表記は野村證券の場合。

50代超に限らず、企業型DCのマッチング拠出、iDeCo、NISAなど、どの方法をとるかは、どのメリットに重点を置くかという点から選ぶのがよいでしょう。

具体的には、拠出時の所得税・住民税の軽減効果なのか、運用益非課税なのか、資産寿命を延ばすための運用なのか等です。

いずれにしろ、積立投資にはスタートの時期が遅すぎるということはありません。積立投資は思い立った時にスタートするのが一番です。

※数字に関する部分は手数料を考慮していません。運用結果は簡易計算によるものです。

津田 弘美/野村證券株式会社 確定拠出年金部

社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください