三菱商事【8058】が決算後に上場来高値3775円!その後の株価は下落 今後はどうなる?KDDIとのローソン共同運営でPonta拡大へ
Finasee / 2024年11月28日 6時0分
Finasee(フィナシー)
PBR(株価純資産倍率)が評価され、8月にJPXプライム150指数に新規採用
三菱商事の株価が調整しています。2024年5月2日、2024年3月期の本決算を取引時間中に公表し、一時は上場来高値となる3775円まで買われました。しかしその後は下落が続いています。減収減益だった実績に加え、今期(2025年3月期)も減益を予想しており、業績への懸念が売りにつながっている可能性があります。
もっとも、中長期的には大きく値上がりしています。2024年11月15日までの5年間で株価は2.8倍に上昇しました。足元の配当利回りは3.7%と、比較的高い利回りも魅力的です。2024年8月には、市場評価性(PBR基準)の高さから「JPXプライム150指数」にも採用されました。短期的には下落していますが、投資家の人気は依然、高そうです。
【三菱商事の株価チャート(過去5年間)】
・株価:2700円(2024年11月15日終値)
三菱商事は、なぜ投資家から支持されるのでしょうか。同社の概要と業績から探ってみましょう。また2024年に始まったKDDIとのローソンの共同運営についても解説します。
5大商社で最大級の収益 主力のエネルギー・金属は市況の影響大きい三菱商事は総合商社の大手です。特定の商材を取り扱う専門商社と異なり、さまざまな商材を横断的に取り扱う業態を総合商社と呼びます。商社の伝統的な機能は商材の仲介(トレーディング)ですが、大手の総合商社は事業投資を通じ多様なビジネスを展開しています。
大手の総合商社の中で、三菱商事の売り上げはトップクラスです。売上高に相当する収益は五大商社で最大となりました(2024年3月期)。子会社には成城石井や三菱食品、千代田化工建設などを持ちます。また持分法適用会社にはKDDIと50%ずつ所有するローソンなどがあります。
【主な総合商社の収益(2024年3月期)】
・三菱商事:19兆5676億円
・伊藤忠商事:14兆299億円
・三井物産:13兆3249億円
・丸紅:7兆2505億円
・住友商事:6兆9103億円
出所:各社の決算短信
事業内容は多岐にわたります。利益の貢献が大きいのはエネルギーや金属といった資源事業です。これらは市況の影響が大きい領域です。年間の利益に与える影響額は、原油1バレルあたり1米ドルの変動で15億円、銅1トンあたり100米ドルの変動で32億円と三菱商事は試算します(2024年3月期)。
ほかの主な商材は産業素材や自動車、電力などです。不動産の開発や、コンビニエンスストアやスーパーマーケットといった小売り事業も展開しています。
【三菱商事のセグメント情報(2024年3月期)】
出所:三菱商事 決算説明会資料 初の最終赤字から回復、足元は減益 今期は上期好調も下期は金属が伸び悩みの予想次に三菱商事の業績を解説します。
直近10期を振り返ると、2016年3月期の最終赤字が目を引きます。純損失は三菱商事の創業以来で初のことでした。資源市況の悪化に伴う減収や資源関連資産の減損などから赤字となりました。
以降の業績はおおむね拡大傾向です。純利益は2023年3月期まで2期連続で過去最高を更新しました。市況の上昇と取引数量の増加が収益を押し上げ、利益に貢献しました。
一方、翌期の2024年3月期は減収減益となっています。市況の下落から収益や利益が減少しました。減益は不動産運用会社の売却益のはく落や、化学品の製造事業および海外食品事業における減損なども影響しました。
出所:三菱商事 有価証券報告書より著者作成今期(2025年3月期)は純利益のみ業績予想を開示しています。前期比やや減益となる9500億円の計画です。
【三菱商事の業績予想(2025年3月期)】
・収益:非開示
・純利益:9500億円(-1.5%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:三菱商事 決算短信
今期は中間決算まで公表しています。純利益は前期比32.6%増の6181億円、通期予想に対する進捗率は65.1%となりました。けん引したのは金属資源と食品産業、S.L.C.です。
金属事業は炭鉱の売却益、食品産業は保有していた日本KFCホールディングス株式などの売却益、S.L.C.は子会社(ローソン)の持分法適用会社化に伴う再評価益が利益を押し上げました。
【三菱商事のセグメント純利益(2025年3月期 第2四半期)】
・地球環境エネルギー:946億円(+5%)
・マテリアルソリューション:369億円(-16%)
・金属資源:1957億円(+46%)
・社会インフラ:1億円(-99%)
・モビリティ:550億円(-16%)
・食品産業:604億円(+141%)
・S.L.C.:1563億円(+127%)
・電力ソリューション:-66億円(前年同期は83億円の黒字)
※()は前年同期比
出所:三菱商事 決算説明会資料
純利益の進捗は順調ですが、全体の通期予想は据え置かれました。ただしセグメント純利益は見通しが修正されています。
上方修正されたセグメントは地球環境エネルギーと食品産業です。地球環境エネルギーは液化天然ガス事業が好調で、想定より上振れる予想です。食品産業は中間までに計上した保有株式の売却益が通期でも寄与します。
一方、下方修正されたセグメントはマテリアルソリューションと金属資源です。マテリアルソリューションは取引数量の減少を見込みます。金属資源は中間まで好調だったものの、原料炭の市況低迷が続いており、下期では伸び悩む想定です。
KDDIとローソンを共同運営 Ponta(ポンタ)経済圏の拡大へ布石三菱商事は市況の影響を受けにくい非資源分野の拡大を進めています。その一環で取り組むコンビニエンスストア事業では通信大手のKDDIと協力し、ローソンの共同運営が始まっています。
三菱商事とKDDIは2024年2月、ローソンの非公開化で合意しました。ローソン株式を三菱商事とKDDIで50%ずつ保有し、ローソンを共同で運営する内容です。
ローソンは三菱商事の子会社でした。KDDIはローソン株式の公開買い付けを実施し、ローソンは同年7月に上場廃止となっています。一連の手続きで、ローソンは三菱商事とKDDI双方の持分法適用会社となりました。
三菱商事とKDDIがローソンの共同経営に踏み切った理由の1つが「Ponta(ポンタ)」経済圏の拡大です。Pontaを運営するロイヤリティ マーケティングは三菱商事の子会社として設立され、KDDIは2019年に資本参加しました。両社はローソンでの接点を増やし、Pontaユーザーの拡大につなげたい考えです。
KDDIはローソンに関連するサービスを相次いで投入しています。2024年10月には「auスマートパス」を「Pontaパス」へ刷新し、「au PAY」のローソンでのポイント還元率の引き上げを開始しました。同年11月にはローソンへの来店でデータ通信量が無料で付与される「povo Data Oasis(ポヴォデータオアシス)」の提供も開始しています。
ポイントは消費者の囲い込みに効果があるとされますが、競合も多く存在しています。Pontaは勝ち残ることができるのでしょうか。三菱商事とKDDI、ローソンの3社は、今後も関連するサービスを提供するとしています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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