「オルカン」「S&P500」に流入続くも、「成長投資枠」で資金流入に異変?
Finasee / 2024年11月22日 6時0分
Finasee(フィナシー)
三菱アセット・ブレインズがまとめた2024年10月の公募ファンドの純資産残高は106兆1120億円で前月比5兆4030億円増加して史上最高を更新した。資産別には「外国株式型」が約57兆8790億円と前月の53兆3630億円から残高が4兆5160億円増加し、次に残高が大きい「国内株式型」は約12兆560億円と前月比820億円増、「複合資産型」は約12兆400億円で前月比3430億円増加した。
ただし、資金流出入額全体として見ると、3カ月連続で月次流入額の総額が減少している。10月は約6140億円の資金純流入で前月の9550億円から流入額が3410億円減少した。資産別にみると流入額の大きな資産クラスは「外国株式型」(約6210億円)、「複合資産型」(約640億円)、「エマージング株式型」(約230億円)となり、前月は約580億円の資金流入だった「国内株式型」は約640億円の資金流出に転じた。資金流出は「国内株式型」の他は「外国債券型」(流出額は約300億円)、「国内債券型」(同約60億円)だった。
◆年末接近で新NISAの投資限度枠を意識?月間の資金流入額が前月比で3410億円も減額した内訳は、「国内株式型」で1220億円、「外国株式型」で約1120億円だった。「国内株式型」は8月の市場下落局面で資金流入が目立ったインデックスファンドが、日経平均株価が4万円近辺まで上昇した10月7日の週で資金流出が目立つなど、利益確定の売りや戻り売りが出ているものと考えられる。また、「外国株式型」は、新NISA対象ファンドの流入額が減少している。「つみたて投資枠」対象の「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」への資金流入額に大きな変化はないことから、年間の投資可能枠が240万円で任意のタイミングで利用できる「成長投資枠」で投資している投資家が「成長投資枠の利用可能残高が少なくなり、成長投資枠経由の資金流入が細っている可能性がある」と三菱アセット・ブレインズは分析している。
◆米国の「小型成長株」と「中国株」個別ファンドの月間騰落率では、「エマージング株式型」の「ダイワ・ロシア株ファンド」の52.80%、「HSBC ロシアオープン」の43.08%が目立って大きい。ロシア株式については、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、非居住者による取引や取引後の受け渡しが困難な状況が継続し、両ファンドともにロシア株式の評価についてゼロとし、新規の投資を受け付けていない。ただ、大和アセットマネジメントの臨時レポートによると、「ダイワ・ロシア株ファンド」で保有していたロシア国内にて検索エンジンサービスを中心としたITサービスを提供するロシア企業「Yandex N.V.(NASDAQ上場)」」がロシア国内の事業を第三者に譲り渡し、「Nebius Group N.V」に社名変更するとともに、非ロシア企業として再出発したことによって、市場取引が再開された。ロシア銘柄でなくなったため、ファンドの投資対象でもなくなったために保有株を売却したことにより基準価額が上昇したと説明している。
次に、レバレッジ型を除くと「米国IPOニューステージ・ファンド(為替ヘッジなし・資産成長型)」の18.90%、「同・年2回決算型」の18.89%、「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」の18.15%が18%超のパフォーマンスになっている。「米国IPOニューステージ・ファンド」は月報で「REDDIT INC-CL A」などの組み入れ銘柄の株価上昇が基準価額の上昇に寄与したとレポートしている。米国の金融政策が利下げ方向に動いていることによって、小型成長株にフォーカスした同ファンドの投資環境は好転している。
「深セン・イノベーション株式ファンド」については、日興アセットが10月24日に発行した臨時レポートで、9月下旬に相次いだ中国の経済対策は規模が明らかではなく市場の期待も高まっていないものの「来年以降の成長環境を整える、意外と強力な経済支援策の始まりであるかもしれない」という見方を示している。米国でトランプ大統領が再度登板することが決定し、来年以降は対中政策で強硬な態度に出てくると考えられている。そのトランプ政権の政策に対抗して中国経済が失速しないような経済対策が追加される期待が強いというのだ。今後の中国株ファンドも注目されるところだ。
◆分配金利回り年37%超を記録したファンドは?分配金利回りのトップは「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドD」の37.67%だった。毎月決算型で2024年10月の分配金は400円。9月の200円から倍増した。2024年5月~7月にも毎月400円の分配を実施し、2023年11月から1年間の分配金の累計額は4100円になった。2023年10月末日の基準価額は1万885円対し、その後1年間の分配金の合計が4100円になったことから、過去1年間の分配金利回りが37.67%になっている。2023年12月時点では分配金利回りのトップが26.95%だったことを考えると、利回り水準が高まっている。
分配金利回りランキングでは今年3月から「GS日本株・プラス(通貨分散コース)」が9月まで7カ月連続でトップの座にあった。5月には分配金利回りが42.39%になるなど圧倒的な水準にあった。同ファンドは、国内株式(ベンチマークをTOPIX配当込みとして、それを上回る成果をめざす)に投資しながら、為替取引を行って収益の上積みを狙う戦略をとっている。為替市場で急速な円安が進んだ2023年7月に1万口当たり420円の分配を行って以降、2024年7月の470円まで毎月高額の分配金を出した。2024年7月時点での過去1年間の分配金累計額は4490円、分配金利回りは42.03%になった。8月以降は10円になっていることから、今後に大きな国内株高や円安がなければ徐々に分配金利回りは低下していくものと考えられる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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