「S&P500」だけで大丈夫? 流入上位を席捲する新顔ファンドがリターンを補う?=10月資金流入トップ20
Finasee / 2024年11月26日 6時0分
Finasee(フィナシー)
三菱アセット・ブレインズがまとめた2024年10月の公募投信(ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信除く)の資金流入額ランキングでトップ3は前月と変わらず「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(流入額1493億円、前月1468億円)、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(同1342億円、前月1204億円)、「アライアンスB・米国成長株投信 D」(同721億円、前月635億円)だった。第4位には新設の「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(ヘッジなし)」(同683億円)が食い込み、第6位にも9月に新規設定された「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」(同459億円)、第8位にも9月新設の「野村ブラックロック世界優良企業厳選ファンドB」(同194億円)がランクアップするなど、トップ10のうち3銘柄が新設ファンドになるという新しい動きが始まっている。一方、トップ20に日本株ファンドは1本も入らなかった。
新設ファンドとして前月は第5位に入っていた日本株ファンド「野村日本新鋭成長株ファンド」は、今月はトップ20から姿を消した。同じように野村證券が募集した「野村ブラックロック世界優良企業厳選ファンドB」は前月に引き続きトップ20ランキングの上位に残っていることと比較すると、グローバル株式に対して日本株式の人気に持続力がない様子が際立つ。パフォーマンスにおいても「野村日本新鋭成長株ファンド」は基準価額が10月31日には9624円と低迷し、「野村ブラックロック世界優良企業厳選ファンドB」の1万437円とは差ができた。パフォーマンスとファンドの人気は連動する。
◆「S&P500」とパートナーになるファンドは?10月の資金流入ランキングで第4位に入った「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(ヘッジなし)」は、世界の電力需要の拡大や電力市場の変革に伴い恩恵を受けることが期待される世界の株式(日本、新興国を含む)に投資する。「発電」「送電」「蓄電」の3つの分野に着目し、企業の成長見通しや株価の割安度等の分析を行って魅力的な銘柄を選び出す。近年のブームである生成AI(人工知能)などの発展は、莫大(ばくだい)な電力需要を伴うため、電力市場は予測可能な将来の成長が明瞭にイメージできる投資テーマになっている。
「S&P500」や「全世界株式(MSCI-ACWI)」などの株価指数は、米国大型ハイテク株への依存度が強いことが懸念されるようになった。「S&P500」を代替する、または、補完するような魅力的な投資対象が求められている状況といえるだろう。
9月はトップ20に6本も新設ファンドがランクインしたが、10月新規設定ファンドでトップ20に入ったのは「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(ヘッジなし)」だけだ。ただ、9月新設の「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」「野村ブラックロック世界優良企業厳選ファンドB」「グローバル・オポチュニティ・パートナーズ・ファンド」はトップ20に残っている。続々と新設されるファンドの中で、「S&P500」や「MSCI-ACWI」のパートナーとして多くの投資家の支持を勝ち得るのはどのファンドになるのか? 既に「アライアンスB・米国成長株投信」や「インベスコ 世界厳選株式オープン」は、毎月決算型という分配頻度の多さを理由に、分配金がないインデックスファンドを補完する役割を担っている。パフォーマンスの面で「S&P500」や「MACI-ACWI」を補完する役割を担うファンドが求められている。
◆「S&P500」に迫る40%超のリターン、「USリート」人気は定着する?今月に突如、第12位に急浮上した「フィデリティ・USリート・ファンドB」は、実は過去1年間のトータルリターン(2024年10月末時点)が40.61%という、「S&P500」の45.45%に匹敵するパフォーマンスになっている。過去3年(年率)では「S&P500」の21.45%に対して11.85%と大きく水をあけられている。この1年間に低迷から脱してきたところだ。一般的にリート(不動産投信)は金利上昇に弱いとされる。不動産物件を取得するにあたって実行した借り入れが大きな金額になるため、金利が高い環境では収益の圧迫要因になるためだ。
米国がインフレ退治のために政策金利(FFレート)を年5.25%~5.50%という高い水準に維持していた間は、米リート市場は頭が重い展開が続いた。それが、今年9月に0.50%の利下げを実施し、11月にさらに0.25%の利下げを行って、金融緩和方向にかじが切られた。FRBは利下げを急ぐ必要はないという意思を示しているが、インフレの再燃がなければ、来年も一段と利下げに動くことが予想されている。この米国の利下げの動きが米リート市場にとっては追い風になっている。見直され始めたリート・ファンドがフィデリティ以外のファンドの人気へも波及するものか注目していきたい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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