500億以上を一気に集めた新ファンドは、何故、人気になったのか? そして、長期的にS&P500を超えることはできるのか?
Finasee / 2024年11月27日 6時0分
Finasee(フィナシー)
三菱アセット・ブレインズがまとめた2024年10月の公募投信(ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信除く)の新規設定ファンド数は30本と前月(21本)を大きく上回ったが、設定総額は約770億円と前月(約1370億円)から大きく減少した。新規設定額ランキング(設定額は設定日の純資産額)でトップは、三井住友DSアセットマネジメントが設定した「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(ヘッジなし)」になった。設定額は531億円で、設定額が500億円を超えるのは2024年4月に新規設定された「フィデリティ・新興国中小型成長株投信」(設定額:約770億円)以来のことだ。
◆電力の「発電」「送電」「蓄電」をテーマにした新ファンド新規設定額でトップになった「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(ヘッジなし)」は、電力需要の拡大や電力市場の変革に伴い恩恵を受けることが期待される世界の株式に投資を行うテーマ型のアクティブファンド。「発電」「送電」「蓄電」の3分野に着目した銘柄選択を行い、設定当初では36銘柄に厳選投資している。クラウド利用の浸透による大規模なデータセンター、また、AI(人工知能)の発展などによってデジタル機器を使用することに伴う電力需要が世界的に急速に拡大している。加えて、化石燃料の使用による温室効果ガスの削減が地球規模で求められ、再生可能エネルギーへの代替など発電設備の新設も急ピッチで進められている。同ファンドが注目する「パワー・イノベーション」は、まさに全世界が直面している地球規模の課題になっている。時宜を得た設定といえ、多くの投資家の支持につながったと考えられる。
◆利回りの高い「ハイイールド債券」とは現在の高い金利水準に着目して「債券の持ち切り型」、また、「高配当株」を特徴にしたファンドも依然として活発に設定されている。
債券型のファンドでは、「あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2024-10」「先進国米ドル建て債券ファンド2024-10(限定追加型)」は、いずれも30億円以上の設定額になった。「日本企業社債ファンド2024-10」は約28億円で新規設定されている。これらは、限定追加型のファンドで、設定後も任意に購入できるファンドではない。このタイミングで購入して4年~5年後の償還まで継続保有することを前提にしたファンドだ。投資対象も償還期日までに満期を迎える債券だけとし、現在の投資環境で投資可能な債券の利回りを最大限に享受することを目的としている。
また、「米国ハイイールド社債エンハンスト戦略ファンド」「アレス・グローバル・ハイイールド債券ファンド」などハイイールド債券を主な投資対象としたファンドが新設されているのも特徴といえる。ハイイールド債券は信用度が劣る債券で、その分、表面利率※が高く設定された債券だ。景気の先行きが不透明な中では敬遠されがちな投資対象といえるが、世界的なインフレが落ち着き、米国景気もリセッションは回避できそうだという見通しが強まってきたことなどが、「信用リスクより、高い利回り」を求めるニーズにつながっているようだ。
※利付債について毎年支払われる利子の大きさを表すもの。クーポンレートとも呼ばれる。
「SBI全世界高配当株式ファンド」は全世界株式(オール・カントリー)をユニバースとした高配当株式ファンドだ。米「S&P500」をけん引する大型ハイテク・グロース株の「割高感」が指摘されている折、「配当利回り」を切り口とした出遅れ株、割安株への投資には安心感がある。「ニッセイS&P500リカバリー戦略株式ファンド」も、「S&P500」採用銘柄の中から出遅れた割安株を選んで投資するという点では狙いは同じだ。コロナ・ショック(2020年3月)以降、4年余りにわたって続いてきた米大型ハイテク株がけん引する相場が、そろそろ転換点を迎えたのではないかという見方が広がりつつあることが、これら割安株や出遅れ株を主たる投資対象としたファンドの新設からもうかがえる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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