【退職代行のリアル】「休みはとっていいけど…」30代看護師が産休と引き換えに出された「時代錯誤な交換条件」
Finasee / 2024年12月2日 17時0分
Finasee(フィナシー)
常日頃、私は「退職代行は使わないほうがいい」と言っています。しかし、残念ながら、まだまだ世の中には自ら「辞める」とは言い出せない職場があります。いわゆるブラック企業に勤めている方からは「退職届を破られた」「辞めたいと言うと逆恨みされそうで怖い」という相談を受けます。こういうケースでは退職代行を使わざるを得ないでしょう。
一方で会社側が愚痴のひとつぐらい言いたくなる気持ちがわかるときもあります。そのひとつが産休・育休明けのタイミング、またはその直後での退職です。
会社側からすれば、貴重な経験者の職場復帰を待ちわびていたところ、突然、退職代行サービスから電話がかかってきて「○○さんの退職の件でお電話しています」と言われれば、驚きますし、人によっては裏切られたとも感じることでしょう。
しかしながら、依頼者からすれば、結婚・出産を機に生活環境は大きく変わっています。休職前は前向きな気持ちであっても、休職中に産後うつ、育児疲れになるかもしれません。自らのキャリアを見直す時間にもなります。この変化までは会社はわかりません。
だから、いざ復帰となると尻込みしてしまうのは当然です。育休・産休を使っている間、会社に迷惑をかけているという気持ちが強いほど、このまま退職したいとは伝えづらく、復帰間際になってから退職代行サービスに依頼するようです。
たとえ復帰できたとしても、早期退職に至るケースもあります。
産休を取るための交換条件⁉「産休をとっていいけど、産んでから最低でも1年間は必ず働くのが条件ね」
病院で正社員の看護師として働く岩船さん(仮名・33歳)は、上司にあたる40代女性の看護師長に産休取得を相談すると、そう告げられました。「産休は権利なのに、どうして許可がいるの……」と少し怪訝に思いながらも、岩船さんは「はい」と返事をします。
言われるまでもなく岩船さんは仕事を辞める気はありませんでした。職場では現場リーダーとして活躍しており、患者や同僚からの信頼も厚く、仕事にやりがいを感じていたからです。人手不足の職場で産休を取る後ろめたさもあり、産休・育休明けは今以上に仕事を頑張りたいとさえ思っていました。
ところが、無事に出産してからも、育児は予想外の連続です。子育てに適したマンションもなかなか見つからず、ようやく見つけたところは職場まで片道1時間半。そして早く仕事に復帰したくても、なかなか保育園に入れません。
それなのに病院からは「いつ戻ってくるのか?」と電話がたびたびかかってくるようになりました。岩船さんの復帰を見込んで、ギリギリの人員で回しているようです。責任感の強い岩船さんは連絡のたびにプレッシャーを感じ、新しい環境で育児と仕事の両立が可能かどうか考える暇もなく、保育園が決まり次第、すぐに職場に復帰しました。
しかし、復帰後の岩船さんを待ち受けていたのは信じられない理不尽の連続だったのです。
●周りから期待されて職場に戻った岩船さん。しかし、子育てと仕事の両立は、思いもよらない状況に追い込まれます。後編【「君のような人を世間では“子連れ様”って呼ぶの」産休後、続く嫌がらせに疲弊…30代女性が頼った最後の砦】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
谷本 慎二/アルバトロス代表取締役、退職代行モームリ代表
1989年、岡山県生まれ。2007年に神戸学院大学へ入学。2012年に東証一部上場の大手接客・サービス業に入社し、入社5年でエリアマネージャー昇格。2022年2月1日に株式会社アルバトロスを設立し、退職代行事業「退職代行モームリ」を開始。退職代行の利用者は2万2000人を超える。メディア取材(TV、雑誌、新聞、海外メディア含む)は400社以上を受け、離職率低下のための講演会依頼も多数。また、著書として『退職代行業者が今すぐ伝えたい!Z世代が辞めたい会社』を出版。
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