「日本の下半期は大丈夫?」日経平均が4万円台に回復しないワケは貿易収支にアリ?
Finasee / 2024年11月28日 13時0分
Finasee(フィナシー)
日本の下半期は大丈夫だろうか? そう思うようなニュースがありました。11月20日、財務省が10月の貿易統計速報を発表しました。
私の注目事は貿易収支そのものではありません。気になっているのは輸出の動きです。
まず、2024年度における輸出金額のこれまでの推移を見てみましょう。
前回の記事はこちら トランプシフトに動くグローバルマネー。したたかなヨーロッパ、為替に振り回される日本、そしてアメリカは?
前年比でみると、割合好調だったことがわかります。伸びた月を見てみてましょう。一つは5月です。2024年のゴールデンウィークは2023年に比べて間にある平日が多かった。このことが奏功したと思われます。
9月は少し減りました。そして10月は前年比で3%ほど伸びています。しかし、見方を変えると、決してプラスとは言い切れません。
図の右側は前月比、財務省が発表している季節調整をかけた数字をまとめたものです。こちらで追うと実は10月はマイナスなのです。私はこの動きが非常に気になっています。
2018年以降、季節調整をかけた輸出金額と鉱工業生産指数の推移をまとめたのが次のグラフです。
輸出金額はコロナ禍で一度落ち込んだものの、戻ってきています。しかし、鉱工業生産指数は、全く回復していません。ワニの口が開いたような形になってしまっています。
輸出金額と鉱工業指数が異なる推移を示したのは当たり前と言えるかもしれません。なぜかと言うと、輸出金額は円ベースですが、鉱工業は指数ベースだからです。輸出金額の推移もドルベースで見直してみましょう。
円ベースの金額をその月のドルの月中平均で割り返し、ドルベースで見直したグラフを作ってみました。
どうでしょうか。輸出金額も鉱工業生産指数と類似した動きをしていることがわかります。結局のところ輸出金額の増加は、為替による水膨れが原因です。数量自体は伸びていない。そんな状況が続いています。
もちろん、為替が160円、170円とさらに円安になれば水膨れで利益は膨らむのでしょう。しかし、そうなれば、金利差を解消するために日銀が介入し、金利上昇するかもしれない。
金利が上昇すれば、たとえば個人では、変動型住宅ローン金利上昇の話も出てくる。決して良い方向には進みません。円ベースでの輸出が伸びても株式市場はあまり喜んでくれないでしょうね。
とはいえ、数量ベースが伸びてくれば、企業からすれば、たとえば車やパソコンの輸出台数が伸びているわけですから、利益にも直結している。だから株式市場も好感を持っているかもしれません。
気になったので、国別でも日本の輸出の状況を調べてみました。米国、西欧(EU・イギリス)、中国(香港を除く)、主要国別の輸出を月別で見たのが次のグラフです。
相変わらずヨーロッパは弱いですね。対中国も落ちています。10月に少し戻り、前年比で、だいたい横ばいの状況です。
気になったのは対アメリカの動きです。8、9、10月は前年同月比でマイナスが続き、しかも加速している。株価は良いのですが、日本からの貿易という観点で見ると、アメリカの景気失速を示唆するような動きに見えます。
このアメリカの景気失速が日本企業の下半期の業績に暗い影を落としているのではないか。日経平均3万8000円台から4万円台に回復できない、その一つの理由にも思えてなりません。株価が停滞してしまうのもうなずけます。
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岡崎良介氏 金融ストラテジスト
1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。
マーケット・アナライズ編集部
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