なぜ、お金が減るのに幸せになるのか? 寄付する人は知っている「満足感の正体」
Finasee / 2024年12月3日 17時0分
Finasee(フィナシー)
クリスマスから年始にかけては幸せを感じる季節
クリスマスが近づいてきました。クリスマスが過ぎればお正月も待っています。この季節はなんとなく心が弾みます。ここまで健康で暮らせたこと、家族の成長などの幸せを実感する季節です。
贈り物をするのもこの季節の特徴です。11月の下旬あたりからいろんなセールが始まりますが、自分へのご褒美、家族へのクリスマスプレゼント、年始のご挨拶やお年玉など、いろんな贈り物が続きます。これも年末年始の特徴です。
贈り物をすると、もらった側は笑顔になります。枕元に置かれたクリスマスプレゼントを見つけたときの子どもの笑顔というのは誰でも思い浮かびます。自分自身、そうした記憶があるのではないでしょうか。
あなたが誰かにプレゼントしたとき、その笑顔を見るのも幸せです。ホームパーティでのプレゼント交換したときの友人の笑顔、我が子がクリスマスプレゼントを手にしたときの笑顔、年始に親のところに挨拶にいったとき手土産を渡したときの笑顔は、贈った側も幸せな気持ちにしてくれます。
贈り物は、もらった人も贈った人も、幸せを感じることができるウェルビーイングなお金の流れです。
そこにもうひとつ、今年加えてほしいことがあります。それは「寄付」です。
寄付でお金は減るが、それだけではない寄付をただ「お金の流れ」でみれば、純粋なマイナスです。寄付をしたらその額だけあなたが自由にできるお金は減少します。
元本が戻ってくるわけでもなく、投資のようにリターンを生み出すことはありません。ただのマイナスです。
でも、クリスマスや年末年始の贈り物もお金の流れでいえばマイナスであり、自分の買い物ができるお金が減るだけです。
それでも私たちがプレゼントをするのは、誰かの笑顔が見たいからです。寄付もそうです。直接つながっているわけではない、誰かの笑顔のためにお金を渡す行為が寄付なのです。
そして、プレゼントと同様に、「寄付をした人もウェルビーイングは高まる」のです。
寄付をした人、利他的な行為をする人はウェルビーイングが高い研究によれば寄付をする人はウェルビーイングが高いとされています。世界幸福度調査では最近寄付をしたかどうかが1つの判断軸となっていますが、これもそうした研究成果を踏まえたものです。
寄付とファイナンシャル・ウェルビーイングについての国内研究はまだ数多くありませんが、私はいくつかのポイントがあると考えています。
ポイント①「寄付の金額では幸福度は決まらない」
気持ちがこもっているかどうかのほうが大事です。小学生ならおこづかいからの数十円でも高いウェルビーイングを感じることができます。
ポイント②「どこに寄付をするか自己決定をする」
税金や助成金が社会に還元されるとしても、私たちが決める余地はほとんどありません。寄付なら自分が賛同し支援したいと思う取り組みを自己決定できます。自己決定権はウェルビーイングを大きく高める要素です。
ポイント③「寄付がもたらす効果を少し想像してみる」
寄付先を自己決定したら、そのお金がどう役立つのか考えてみましょう。恵まれない家族の食事になって誰かを助けたとか、寄付をした古着を着た海外の子どもが笑顔を見せたとか、実感できるとあなたのウェルビーイングが高まります。
ウェルビーイング研究の世界では利他的な行為は幸福度を高めるという示唆がありますが、この文脈は、寄付とウェルビーイングの関係にもしっくりくるような気がします。寄付はお金がただマイナスになるわけではないのです。
年末調整がちょうどいい資金に。翌年すぐに確定申告で還付ももらえる寄付をするといってもまとまったお金がない、という人もいるでしょう。「お金があればなあ……」という人には、ちょうどいい「臨時収入」が年末にあります。12月の年末調整です。
年末調整は毎月少しずつ払いすぎていた所得税(給与から天引きされていた)を年末に精算し、過払い分を還付する仕組みです(不足があれば追加で納付するが、ほとんどの場合、還付になる)。
給与や賞与は生活資金に回す必要が高いので、寄付に回す余裕がない、という人も、年末調整のお金は感覚的には臨時収入に近く、寄付に回しやすいのではないでしょうか。
年末調整の還付金を、できれば数千円以上のまとまった金額で寄付に回してみましょう。
先ほど紹介したとおり、寄付団体を選ぶのも寄付のウェルビーイングの要素です。
私個人はWFP(ワールドフードプログラムの略)に毎年少額を寄付し続けて20年近くになります。アフリカでは今も学校教育を受けさせてくれない親がいるそうですが、「学校に子どもを通わせれば給食が出るので一食タダになるよ」と説得して基礎教育を受けさせるのだとか。もちろん自然災害や難民が発生したときの支援も行っており、東日本大震災のときは国内でも支援活動を行っています。
あなたも自分が共感する取り組みを行う団体を探してみてください。おもしろいところではJAXAのような科学技術振興団体なども寄付することができ、はやぶさ2の部品の一部になっていたりします。
寄付をした金額の一部は寄付金控除の対象となって、自分に戻ってきます。翌年2月の確定申告で手続きをすれば実質負担はさらに少なくなります(寄付金控除の対象団体であり領収証を受けるなどの条件あり。詳しくは団体のWEB、国税庁の確定申告ページを参照してください)。
個人的には12月に寄付をすると一番気持ちが幸せになれると思います。自分たちが幸せであることに感謝しつつ、誰かに幸せをおすそわけする気持ちで、「寄付」を考えてみてはいかがでしょうか。
きっとあなたのウェルビーイングも高まると思いますよ。
山崎 俊輔/ファイナンシャルプランナー
1972年生まれ。フィナンシャル・ウィズダム代表。1995年中央大学法学部法律学科卒業後、企業年金研究所、FP総研を経て独立。確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。著書『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『共働き夫婦 お金の教科書』(プレジデント社)、『ファイナンシャル・ウェルビーイング』(青春出版社)など多数。
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