大林組【1802】はなぜ買われる? 上場来高値更新で株価は5年で1.8倍 インフレで苦戦も利益は回復基調 配当利回り3.7%も魅力
Finasee / 2024年12月2日 6時0分
Finasee(フィナシー)
株価5年で80%増 新NISAで満額投資なら配当金8.8万円の予定
大林組は株式の値上がりが続いています。株価は2024年11月22日までの5年で1.8倍に上昇しました。同日、上場来高値を更新しました。値上がりは2023年から続いており、2024年に顕著化しています。利益の回復が続いており、業績の改善を期待する買いが向かっていると考えられます。
【大林組の株価チャート(過去5年間)】
・株価:2120円(2024年11月22日終値)
配当はどうでしょうか。今期(2025年3月期)は1株あたり80円を予定しています。配当利回りは3.7%台と比較的高い水準です。株価の上昇は、株主還元への期待も反映されていそうです。
【大林組の予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:80円
・予想配当利回り:3.77%
出所:大林組ホームページ
値上がりと配当に期待するなら新NISAを活用したいところです。通常はいずれも利益から約2割の税金が差し引かれます。しかし新NISAを通じた投資なら非課税です。
新NISAは個別株に年240万円まで投資できます。足元の株価水準なら、大林組は1100株まで購入可能です。1株あたり配当金が80円なら、受取配当金は総額8万8000円となる計算です。
大林組への投資を考えている人もいるかもしれません。今回は同社の概要と業績を解説するとともに、このたび発表された新ビジネス「都市型データセンター事業」の計画も紹介します。
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「東京スカイツリー」手掛けた大手ゼネコン 受注繰越高は2.3兆円規模に増加まずは概要を押さえておきましょう。
大林組は大手ゼネコンの一角です。建設会社の中でも、建物の建築から土木まで幅広く手掛ける業態をゼネコンと呼びます。代表的な建築物には「東京スカイツリー(東京都墨田区)」や「虎ノ門ヒルズビジネスタワー(東京都港区)」、「エスコンフィールドHOKKAIDO(北海道北広島市)」などがあります。
大林組の事業は大きく3つに分かれます。建設事業と不動産事業、その他の事業です。収益の多くは建設事業が占めています。
【大林組のセグメント業績(2024年3月期)】
出所:大林組 決算短信
建設事業は主に国内外での建築工事と土木工事の受注と施工です。国内は内装工事や設備工事、および建設用の資機材の販売なども含まれます。海外は北米や東南アジアなどで事業を展開しています。なお利益は国内が中心です。
【建設事業の営業損益の内訳(2024年3月期)】
・国内建築:242億円
・国内土木:264億円
・海外建築:129億円
・海外土木:-38億円
出所:大林組 決算短信
建設事業の受注は好調です。受注高および繰越高はおおむね右肩上がりに増加しています。特に繰越高は2.3兆円台まで拡大しています。建設事業の収益は、一部を除き工事の進捗度に基づいて段階的に認識しています。受注の積み上がりから、当面は売り上げの増勢が続きそうです。
出所:大林組 決算説明資料より著者作成
不動産事業は、不動産の売買や賃貸を行っています。また宅地開発といった開発事業も手掛けています。
その他の事業はPFI事業(※)や再生可能エネルギー事業、情報通信事業、金融事業などです。金融事業はグループ会社の資金調達事業も含まれます。
※PFI(Private Finance Initiative):公共施設の管理手法の1つ。建設から運営まで民間企業が担う民設民営方式を指す。
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売上好調も利益に課題、建設資材の高騰で 足元は回復基調次に業績を確認しましょう。大林組は、売り上げは伸びていますが、利益面で苦戦が見られます。
売上高はおおむね増加傾向です。上下に変動しつつも、直近の2024年3月期は過去最高の連結売上高を記録しました。
しかし利益は減少の傾向が見られます。純利益は2022年3月期にかけて大きく落ち込みました。足元は回復傾向にありますが、2024年3月期は直近ピーク(2019年3月期)の66%にとどまります。
出所:大林組 有価証券報告書より著者作成
利益面の苦戦はインフレが背景にあります。日本建設業連合会によると、建設資材物価(東京)は2021年1月~2024年9月で33%上昇しました。原価の高騰から、大林組の完成工事総利益率は10%を割り込んでいます。
出所:大林組 決算短信より著者作成
とはいえ、利益の回復は今期(2025年3月期)も続く見込みです。今期は増収増益を計画しており、達成すれば売上高は2期連続で過去最高を更新します。
【大林組の業績見通し(2025年3月期)】
・売上高:2兆5100億円(+7.9%)
・営業利益:930億円(+17.2%)
・経常利益:980億円(+7.1%)
・純利益:870億円(+15.9%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:大林組 決算短信
今期は中間まで決算を公表しています。通期予想に対する進捗率は売上高で49.4%、純利益で63.3%となりました。純利益の好進捗は、政策保有株式の売却が前倒しで進んだことも寄与しています。
採算性の改善も続いています。完成工事総利益は前年同期比26.3%増加、完成工事総利益率は同0.7ポイント上昇の8.9%となりました。好採算案件への入れ替えが進捗したこと、また手持ち工事で利益改善が進んだことなどが貢献しました。
通期予想は期首から据え置かれています。今期はおおむね想定どおりの消化となっているようです。第3四半期の決算は2025年2月に公表される見込みです。
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新ビジネス「都市型データセンター事業」を発表 10年で1000億円を投資大林組は中期経営計画の1つに事業ポートフォリオの拡充を挙げています。建設事業を中核としながらも、新たな収益機会を獲得し持続的な成長を目指す戦略です。その一環で大林組は2024年11月、都市型データセンター事業に参入すると発表しました。
大林組の都市型データセンター事業は、既存ビルの改修または建て替えを通じてデータセンターを開発し、その運営まで担う構想です。需要地に近い都市部に設けることで、高い処理速度が要求される分野でのニーズが期待されるとしています。
まずは第一弾として東京都港区にデータセンターを構築します。開設は2028年度の予定です。第二弾の用地も確保しており、投資額は10年間で1000億円を見込みます。同時に他社データセンターも含め複数の拠点を相互接続し、2031年度までに受電容量40メガワット級のデータセンター群を構築する計画です。
近年、国内では大規模なデータセンターの開発が相次いでいます。例えばソフトバンクは、苫小牧市(北海道)で2026年度に50メガワット級での開業を目指しています(将来的に300メガワット超まで拡張予定)。また香港の不動産投資会社ESRグループは2024年8月、大阪市(大阪府)で25メガワット級のデータセンターを竣工しました(将来的に130メガワットまで拡張予定)。
データセンターの需要は生成AIの普及や大企業のDX余地などから高まっています。大林組もデータセンター事業に参入し、収益の多角化を目指します。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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