5000ポイントプレゼントのケースも…各社「NISA口座乗り換えキャンペーン」を展開中だが、移管するのは得か損か
Finasee / 2024年11月26日 17時0分
Finasee(フィナシー)
今、各金融機関が「NISA口座乗り換えキャンペーン」を実施しているワケ
NISAの制度見直しによって非課税期間の無期限化、制度の恒久化、そして生涯非課税枠の大幅な引き上げが行われ、某出版社が「2024年ヒット商品ベスト30」の1位に選んだ「新NISA」。実際には「新NISA & オルカン投資」とされていますが、いずれにしてもNISAの制度見直しは大いに注目を集め、多くの金融機関が「新NISA口座開設キャンペーン」を展開しました。それが2023年の秋口から2024年年明けにかけてのこと。
そして今、再びNISAの口座開設および口座移管に関するキャンペーンを大々的に展開する金融機関を目にします。が、その狙いは新規口座開設者の取り込みというよりも、どちらかというと口座移管に焦点を当てているように思えます。
NISAの口座開設は1人一金融機関と決められています。だからこそ、NISA口座を開設する際には、どの金融機関にするかを慎重に見極める必要があります。給与振り込みなどで付き合いのある金融機関に何となくNISA口座を開いて、いざ投資を始めようと思ったら、実は自分の買いたいと思っていた投資信託を扱っていなかった……なんてことも考えられます。
でも、だからといって何も手がないわけではありません。仮に、もうNISA口座で投資を始めていたとしても、それを他の金融機関に移管させることができるのです。
そして、新しいことを始めるにはキリの良い2025年1月から、移管した新しい金融機関でNISAを始めたい場合は、申請書類を処理するための期間を考えると、遅くとも2024年12月中旬くらいまでには、移管先となる金融機関で所定の手続きを済ませる必要があります。
前述したように今、口座移管に焦点を当てたキャンペーンを各金融機関が積極的に展開しているのは、こうした事情があるからです。金融機関側からすれば、2025年1月から自分のところでNISA口座を通じた投資を始めてもらうための、最後のかき入れ時といって良いかも知れません。
口座の移管手続きはそれなりに手間がかかる…口座移管に関しては、どのような手続きが必要になるのかを、簡単にまとめておきましょう。
まず現在、NISA口座を利用している金融機関に、金融機関の口座変更希望を申し出ます。すると、変更前金融機関から「金融商品取引業者等変更届出書」が送付されてきます。これに必要事項を記入したうえで、変更前金融機関に送り返します。
「金融商品取引業者等変更届出書」を郵送するのと同時に、変更先金融機関でNISA口座の開設手続きを行います。そして変更前金融機関が「金融商品取引業者等変更届出書」を受理すると、変更前金融機関から「勘定廃止通知書」と「非課税口座廃止通知書」という2つの書類が送付されてきます。
勘定廃止通知書と非課税口座廃止通知書の違いは…
勘定廃止通知書:NISA口座の金融機関を変更した後も、変更前金融機関で保有していた投資信託などは、変更前金融機関で非課税のまま運用し続ける(ただし新規資金での買付は不可)場合に提出する書類
非課税口座廃止通知書:変更前金融機関にあるNISA口座を完全に廃止し、変更前金融機関で保有していた投資信託などをいったん、全額解約するか、もしくは変更前金融機関の課税口座に移したうえで、変更先金融機関で再びゼロからNISA口座で投資を行う場合に提出する書類
となります。
変更前金融機関で保有していたものを、そのまま保有し続ければよいのか、それともすっきり変更前金融機関で保有していたものは一掃して、イチから変更先金融機関で投資した方が良いのかは、最終的には個々人の考え次第です。
ただ、NISA口座を変更するのは、変更前金融機関の品ぞろえやサービスなどに関して、何らかの不満があるからでしょうし、変更前金融機関のNISA口座で投資した分を非課税運用し続けるとしたら、変更先金融機関のNISA口座で新たに非課税投資できる金額は、1800万円の生涯非課税枠から、変更前金融機関で投資した分を差し引いた額にとどまります。
それを良しとしないのだとしたら、「非課税口座廃止通知書」を提出して、変更前金融機関のNISA口座で投資した分は解約するか、もしくは課税口座で運用し続けるのと同時に、変更先金融機関のNISA口座では、生涯非課税枠いっぱいの1800万円を上限に投資できるようになります。
ただし、これは確かにスッキリする方法ではありますが、またゼロから1800万円を積み上げていく必要があるので、生涯非課税枠をめいっぱい活かして非課税運用できるようになるまでには、余計な時間を費やすことになります。そういう意味では、どちらを選ぶにしても一長一短なのかも知れません。
どちらにするかを決めたら、「勘定廃止通知書」か「非課税口座廃止通知書」のいずれかに、「本人確認書類」と、変更先金融機関から送付されてくる「非課税口座開設届出書」を、変更先金融機関に提出します。これらの書類に誤記などがなければ、変更先金融機関でNISA口座が開設されます。
結局、NISA口座を移管するのは得なのか、損なのかさて、NISA口座の移管は得か損か。どちらでしょう。
ひとつ言えるのは「ポイントに惑わされて口座を変更しないようにしましょう」ということです。
インターネット証券会社のなかには、「もれなく(最大)5000ポイント進呈」といったエサをぶら下げて、口座移管を促そうというところもありますが、1ポイント=1円として考えるなら、5000円相当のポイント還元など、そんなにお得な話ではありません。口座移管後、1800万円の生涯投資枠いっぱいまで投資してもらえるとして、年間の信託報酬が0.2%の投資信託を買ってもらえれば、1年で3万6000円の信託報酬が金融機関に落ちます。5000ポイントのポイント還元など簡単にペイできるのです。
大事なのは、本当に移管させる必要があるのかどうかを、しっかり考えることでしょう。
もし、どうしてもその金融機関でなければ買えない投資信託で長期投資したいと強く思うのであれば、変更した方が良いですし、強い動機がないのにも関わらず、ポイントに目がくらんでというのであれば、手間をかけて口座移管などしない方がよいかも知れません。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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