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「俺は納得いかない」頑なに遺言書を疑う長男の態度が一変、3兄弟が遺産を巡る“骨肉の争い”を回避できたワケ

Finasee / 2024年12月6日 17時0分

「俺は納得いかない」頑なに遺言書を疑う長男の態度が一変、3兄弟が遺産を巡る“骨肉の争い”を回避できたワケ

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

鈴木和明さん(仮名、以下同)、卓也さん、剛さんは3兄弟だ。特に仲が良くも悪くもない一般的な兄弟仲だったが、父親である幸次さんが亡くなり関係性が一変する。遺産分割を巡り、長男の和明さんと弟2人で意見が対立したのだ。

長男の和明さんは「お前たちは父の思いを理解していない!」と弟たちを非難する。現実主義寄りの卓也さんと剛さんもそれぞれの立場を譲らず、話し合いは平行線をたどった。

そうした中、父親の書斎の掃除をしていた剛さんが本棚の横の引き出しから「遺言書」を発見した。

●前編:【遺産分割で争う3兄弟にまさかの転機…偶然見つかった遺言書で発覚した「父の最期の願い」】

遺言の真実性への疑問

「それは本当に親父の遺言なのか? 仮にそうだとして有効なのか?」

和明さんがイライラを隠せない様子で指摘する。その考えはごもっともだ。しかし、今回見つかった遺言はいわゆる自筆証書遺言と言い、全文が本人の手書きで書かれている。かつ本人の署名と押印があるものだ。それゆえ相当に真実性が高いものといえる。

とはいえ、偽造や変造が絶対ないかといえばそうとも言い切れない。もちろんそんなこと基本的にはあり得ないのだが、脅されていたりだまされて遺言書を書かされている可能性もあり得なくはないし、巧妙に本人の文字を真似て書くということも不可能ではない。

加えて、このIT全盛の時代に手書きだ。おまけに保管場所は自宅の書斎。IT業界に身を置く和明さんの疑問はもっともだ。

とはいえ、弟たちは父親の書斎で見つかったことや、遺言書に記載されていた字が父親本人の字で間違いないと感じたことから、その遺言書が本物だと考えていた。当然、遺言書にある父親の意思を尊重すべきと考えていたのだ。

しかし、「俺は納得いかない」と遺言書に懐疑的な和明さんが譲らない。

それに対して「これは親父の字だろう」と遺言書の存在に肯定的な卓也さんと剛さん。

3人とも意見が一致せず途方に暮れていたようで、私に連絡があったのはちょうどそのころだ。代表して和明さんから私に連絡があった。「遺言書の背景をお聞かせ願いたい」と電話で直接お話をいただいた。

何を隠そう、私は彼らの父親の幸次さんの遺言書の作成に行政書士として携わり、全面協力している。遺言書の中にも「兄弟で話し合いができなければここに相談するように」と私の名前の記載がある。そうして3兄弟と私たちの初対面が決まった。

3兄弟との会合

3兄弟と私はとある月の金曜日の夕方に初会合した。

「遺言書についてお聞かせいただきたい」

重苦しい空気の中、私にコンタクトを取った和明さんが口を開く。

それに対し、私は3兄弟の父である幸次さんが長年勤めていた会社の顧問をしていたこと、その縁で相続について相談を受けるようになったことなど、今回の背景から話を進め、遺言書の有効性について言及した。

「裁判官でない私が直接確定した事項を述べることはできませんが、一般的な話で言えば、おそらく今回の遺言書は有効である可能性が高いでしょう」

そう言い終わると同時に3兄弟はどこか一様に安堵(あんど)したような表情となり、場の空気が一変した。おそらく、一人懐疑的だった和明さんも、心のどこかで遺言書は有効で、そのとおりに進めるべきだと考えていたのだろう。場の空気が一つにまとまった気がした。

「手書きで書かれた遺言書の有効無効において保管方法・場所は関係ありません」

私は兄弟たちの疑問を解消していく。仮に見つかったのが書斎だろうが、金庫だろうが、どこで保管されていたかに関係なく有効なものだ。無効な場合があるとすれば、自筆で書かれていない箇所があるなど、形式的な要件を欠くなど例外的な場合だ。

私はさらに続ける。「記載内容や方法も基本的には自由です。今回のように便せんで書かれたものも有効になります」。

なお、自筆証書遺言は一度家庭裁判所に提出し検認という手続きを経る必要があるのだが、これは遺言書の有効性や無効であるかなどを判断する手続きではないことも補足する。

こうして私が一般的な遺言に対する見解を一通り述べたところで一番遺言書について懐疑的だった和明さんが「専門家の先生がおっしゃるなら……」と納得した。

その後の鈴木兄弟の様子は…

その後の手続きはスムーズに進んだようだ。元々家族仲は悪くなかった鈴木兄弟。遺言書の有効性が確認できた以上は3兄弟に迷いはない。遺言書のとおりすべての財産をお金に換えて兄弟で等分した。

「遺言書が存在してよかった。そしてそれを専門家の方が作っていてよかった」と卓也さんがいう。鈴木家3兄弟の兄弟仲はある意味この父の残した遺言書によって守られたといってもいいだろう。

やはり遺言書は中流世帯であっても作るべきだ。そしてそれは可能な限り専門家に任せ、作成した専門家の名前について遺言書中に記載しておくべきだ。

鈴木家は幸せな結果となったが、一歩間違えれば不幸な結果になった可能性もある。遺言書の有無や専門家の関与によって相続の模様は大きく変わる。

「うちは富裕層じゃないから関係ない」。そう思っている読者諸兄にこそ考えてほしい。遺言書なくして自分が亡くなった後のことを。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

柘植 輝/行政書士・FP

行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。

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