「私は今回のこと、絶対に許しません」借金を隠していた新婚夫…離婚を勧める怒り心頭の義母を「納得させた方法」
Finasee / 2024年12月10日 18時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
新婚で妊婦の美希(27歳)はある日、家に送られてきた夫宛ての督促状に面を食らった。夫・大輝(26歳)を問い詰めると、美希に黙って借金していたことが明らかになる。
借りた金の使い道は、昨年挙げた豪勢な結婚式のためだったという。地元で会社を経営する裕福な家庭で育てられた美希には理解ができなかった。「お金ならうちの親がいくらでも出してくれたのに」と言うも、大輝は「ご両親には頼りたくなかった」と平謝りをするだけだった。
後日、美希は母に相談をする。母は大輝に幻滅をし、別れたほうがいいと言い出す。お金で苦労する娘を見たくないと言う。母は正しいと思った美希は、大輝に離婚を切り出すが……。
●前編:「真面目な顔して分かんない人ね」1通の封筒から明らかになった「新婚夫が抱えるありえない秘密」
どうしても美希の両親には頼りたくなかった大輝は、美希に対して気まずそうに距離を置き、口数も少ないまま。考えさせてとは言っていたが、あれ以来、離婚や借金の話題を口にすることもなかった。今回のことの原因が自分にある手前、あまり強く出ることができないのだろう。
なので、仕事から帰ってきた大輝が、食卓に着くや切り出したとき、ようやくか、と美希はどこかホッとするような気持ちすら抱いた。
「美希、話がしたい……少し時間をもらえないか?」
美希はうなずいた。
もちろん美希のほうも家の重くよどんだ空気は大きなストレスになっていた。離婚するならさっさと手続きを終えて実家に戻ってしまったほうが、おなかの子供にもいいだろう。
しかし、手続きなんていいから早く帰ってきちゃいなさいと、言ってくる母への返事を濁し、美希が大輝との生活を続けていたのは、まだ大輝と話すべきことがあると思っていたからだった。
ダイニングテーブルに向かい合って座ると、大輝が意を決したように話し始めた。
「まずは改めて謝らせてほしい。黙って借金をしたこと、本当に申し訳なかった」
そう言って頭を下げる大輝の声には、反省と後悔がにじみ出ているようだった。美希はあえて表情を崩さずにじっと大輝を見つめ、続きを待った。
「それから……借金をした理由をもう一度ちゃんと話させてほしいんだ。理解してもらえるかはわからないけど……」
そこで大輝は大きく息を吸い込み、美希を真っすぐに見つめた。
「俺、どうしても美希のご両親には頼りたくなかったんだ。お義母(かあ)さんたちが快く援助を申し出てくれていたのは、俺も知ってた。だけど俺にとっては、どうしてもそれが“甘え”に思えたんだよ」
「“甘え”? 親に頼ることが?」
その言葉に、美希は少し眉をひそめた。裕福な家庭で育ち、親が惜しまず支援してくれるのは当然だと思っていた自分には、なかなか理解しがたい感覚だった。
「美希も知ってると思うけど、俺はひとり親だからさ。少しでも早く独り立ちして母親の負担を減らしたいって思いが強かったんだよね」
「うん……それは分かるよ」
大輝の言葉に美希は静かにうなずいた。
大輝が学費の安い国立大学を目指したのは、シングルマザーの義母を気遣ってのことだったと話には聞いていた。その学費も、アルバイトを掛け持ちしながら、ほとんど自分で払っていたという。
「俺はさ、美希と一緒に自分たちの家庭を築きたいと思ってた。ご両親の支援を受けなくても、ちゃんと自立した生活ができるように……だから、いくらお義母(かあ)さんたちが結婚式の費用を出してくれるって言っても、簡単に頼りたくなかったんだよ」
「それは前にも聞いたよ。でも借金するのと、うちの親に出してもらうのだったら、どっちがいいかってことくらい分かるじゃん」
「うん。美希の言う通り、借金は間違ってた。でも、美希のご両親にお金出してもらうのも、俺には同じくらいしんどいことだった。だから本当に自立した家庭を築くなら、俺はお義母(かあ)さんたちに、高すぎて払えません、自分たちでできる範囲で結婚式をやらせてくださいって頼むべきだった。それなのに、いい格好しようと見え張って……本当に後悔してる」
大輝はうつむき、涙を流し始めた。
それは、知り合ってから初めて見る大輝の涙だった。
知らず知らずのうちに、大輝のことを追いつめていたのかもしれない。
「反省して。でも私も反省する。大輝の気持ち、全然分かろうとしてなかった。だから、これからはなんでも話し合える2人でいよう。夫婦なんだし」
「え、じゃあ……」
「うん。離婚なんて、言って、ごめんなさい」
大輝の涙が移ったのか、いつの間にか美希の目からも涙があふれていた。
「ありがとう、ありがとう……」
テーブルの上で握りあった手は、温かかった。
「勘違いしないで…」と言った義母翌日、両親がそろって美希たちの自宅を訪れた。
美希が話があると伝えると、身重の美希を気遣ってすぐに予定を空けてくれてやって来てくれた。
4人は実家とは似ても似つかないこじんまりとしたリビングで向かい合う。美希の隣に座る大輝の表情には、不安と緊張が浮かんでいるのが分かった。
「今日はわざわざご足労いただきありがとうございます」
「それで、美希、大輝さん……話っていうのは?」
口を開いた母の声は、いつになく冷たかった。
普段は妊婦の美希を気遣い、何かと世話を焼いてくれる母だったが、今日はそうはいかなかったのだろう。
「まあまあ、そんなせかしてやるなよ……」
父が間に入ってくれたが、母は険しい表情を崩さなかった。
「まず、この度は、僕の考えの軽率さによる借金で、美希さんにも、お義父(とう)さん、お義母(かあ)さんにもご迷惑とご心配をかけることになってしまい、本当に申し訳ございません」
大輝が開口一番、深々と頭を下げた。しかし母も父も表情は険しいままだった。
「なぜ借金なんてしたの? 私たちは美希のためなら、どんな手助けだってしたのに……」
大輝は顔を上げ、母の視線を真っすぐに受け止めた。
「ありがとうございます……でも俺は、自分たちの力だけで生活していきたいと思っていたんです。結婚して自分の家庭を持つ以上、お義母(かあ)さんたちに甘えるわけにはいかない。それに、一家の大黒柱になるんだから、お金のことは自分でなんとかしないといけない。そう思ったんです」
「親に頼らず、自立した家庭を築きたかった……ということかな?」
黙っている母に代わり、父が大輝に訊ねる。男同士だからこそ分かる部分もあるのだろうかと、2人を見ていて思った。
「はい。今回のことは美希さんやお義母(かあ)さんたちにも相談するべきだったと反省しています。だから、これからは自分たちで、誰に心配をかけることなくやっていけるようになりたいと思っています」
大輝の真剣な言葉に、美希も胸が熱くなるのを感じていた。大輝が自分たちの未来に真摯(しんし)に向き合っていることが、母にも伝わってくれることを願いながら、大輝の言葉をそばで静かに聞いていた。
「ねえ美希、あなたはどう思ってるの……? 大輝さんの言いたいことも分かるけど、もしこの先また同じことが起きたらと思うと……」
ようやく口を開いた母の声には、どこか揺らぎがあった。
「お母さんの言うことも正しいと思う。私も、借金が分かったときはちょっと引いたし。でも、別に遊んで使ったお金じゃなくて、私たち2人のためにした借金だったし、反省もしてくれてるし、許してあげてもいいのかなって思ってる。それに、そういうの、相談しづらくなるくらいまで、大輝のこと追いつめてたのかもって思ったら、私もよくなかったのかなって」
「そんなこと――」
大輝はとっさに否定しようと口を開いたが、美希は遮るようにして言葉を続けた。最初に離婚を考えたのは自分だ。だから、この話の決着は、自分自身でつけなければいけないと思った。
「もちろん、私たちだけではできないことがあるかもしれない。でも、そういう難しいことも、大輝と一緒に乗り越えていきたいの。お母さんたちの助けを当たり前と思うんじゃなくて、私たちらしい家庭を作ることを大切にしたいなって思ってる」
2人の決意に触れ、母はやがて静かに息をついた。そして、少し困惑しつつも、ほほ笑みを浮かべた。
「……あなたたちがそこまで覚悟を決めているのなら、無理に別れさせるわけにはいかないわね。ただし、借金については、ひとまず私たちが立て替えるわ」
「お義母(かあ)さん、それでは意味が……」
反論しようとした大輝の言葉を遮って母がピシャリと言った。
「勘違いしないで、大輝さん。これは美希に余計な気苦労をさせないためよ。妊娠してるときの身体と心にどれだけの負担がかかってるか分かってる? 美希は許しても、私は今回のこと、絶対に許しません。私にとってはあなたのプライドより、娘と孫の幸せが大切なの」
悔しそうに押し黙った大輝を見て、今度は父が声をかけた。
「大輝くん、君の熱意は十分伝わったが、気持ちの強さだけでは家庭は守れない。自立したいというのなら、まずは私たちに残りの借金を返済しなさい。話はそれからだ」
「はい……ありがとうございます」
大輝が心苦しそうに言いながらも、頭を下げる姿を見て、なぜだか美希はこれから先のことはきっと大丈夫だという気持ちになった。
財テクや節約術を学びはじめた美希後日、美希の両親が残りの借金を一括で支払い、完済を知らせる通知が届いた。
今後は、消費者金融ではなく父の口座に毎月決まった額を振り込む約束だ。
結局、義両親の援助を受けることになってしまったことで、大輝は落ち込んでいるようだったが、今は気持ちを切り替えて前向きに仕事に励んでいる。一方、美希はさらに大きくなってきたおなかを抱えながら、少しでも早い返済の手助けになればと、財テクや節約術などを学んでいる。
「大輝、今月も順調だね。このペースだとあと半年くらいで返せるかも」
「美希のサポートのおかげだよ。ありがとう」
家計簿を開きながら明るく声をかけた美希に、大輝がふっと目を細めて美希のおなかに手を当てた。
「……お、いま蹴ったよ!」
「パパって分かってるのかな。きっとしっかりしろって言ってるんだよ」
「分かってる。この子のためにも頑張るよ」
大輝は困ったように眉を下げる。美希はなんだかおかしくなって小さく笑い、大輝の手に自分の手を重ねる。もう一度、今度はさらに強く赤ちゃんがおなかを蹴った。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
梅田 衛基/ライター/編集者
株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。
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