「トランプ復権」の2025年、世界経済とマーケットはどうなる? 最適な投資判断のために“いち早く”押さえておきたい「基本シナリオ」とは?
Finasee / 2024年12月13日 12時0分
Finasee(フィナシー)
2025年、米国経済の見通しは?
2025年の市場は明らかにこれまでの景気サイクルとは異なった展開となるだろう。22年、23年と、日本以外の中央銀行はインフレ対策として利上げを行った。迎える25年は成長とインフレの状況がまだら模様となり、その差異によって金融政策、リスク資産の魅力度も変わってくる。
米国経済は今年(24年)夏ごろまではリセッション(景気後退)に突入するのではと見られていたが、年末が近づくにつれ景気や雇用の各種統計から比較的堅調であることは明らかだ。新規雇用も創出され、旺盛な消費も経済の堅調さを下支えしている。
コロナ禍の時期に積み上げられた貯蓄をほぼ使い切った米国の各世帯だが、消費性向はこれまでと変わり、より選択的となっている。24年末から25年の年初にかけて労働市場の堅調が維持されれば、個人消費の落ち込みもないというのが現在の想定だ。
アクサ・インベストメント・マネージャーズ コア・インベストメント最高投資責任者(CIO)アジア担当 エカテリーナ・ビゴス氏 投資サイクルが再開、製造拠点の国内回帰が経済成長を支える米国で注目すべき成長を支える要因は、政府がIRA法※、CHIPS法※※で信用力(資本)を提供したことにもある。これにより米国企業は拠点を米国に戻すリショアリングや、新規投資が可能になった。順調な個人消費に加えてこうした資金供給による多様な投資促進もプラス要因だ。
製造拠点、工場等のさらなる整備が進み、米国の設備投資は特に建設、産業用および輸送用機器等が23年比で大きく伸びている。製造業がさらに堅牢になれば、海外の製造拠点が米国内に回帰し、設備も最新化され製造業がより重要な位置を占めることにつながる可能性がある。
米国では高金利による資金調達コストの高まりを受け、企業は新たな借り入れを減らし、レバレッジを低く抑える行動をとったため、株式よりも債券に投資妙味がある状況だった。
一方で25年に向けては、好調な企業収益や新政権による成長促進策が追い風になると考えると、企業の信頼感が高まり、投資サイクルの再開が期待でき、米国経済を支える要因となるであろう。
※インフレ削減法…気候変動対策導入に対する税額控除
※※CHIPSプラス法…半導体産業支援に対する補助、助成
一方でインフレが再燃するリスクは残っている。いまだFRB(米連邦準備理事会)が掲げる2%のインフレ目標に収束していない状況下、25年には新政権が税制優遇策、規制緩和、関税措置、移民政策を打ち出すことによって、インフレが再燃するリスクは残っている。経済成長の一方でインフレは高止まりするという非対称性のリスクが依然として存在することに注意すべきだ。
この点に関しては、金融緩和の動向が重要だ。金利が高止まりし、企業は融資や資金調達のレバレッジを低く抑えてきたため、株式よりも債券投資が有利だったとは前述したとおりだ。
一方で、足元では設備投資、研究開発費について再度レバレッジを上げようという機運が高まっている。ただ、これはFRBの金融緩和が続いて経済が正常化に向かうことが条件であり、そうでない場合は依然、リスクが残っている。
インフレ対策のタイミング、規模によってインパクトは変わってくる。トランプ氏が大統領選で公約に掲げた経済政策によって、25年半ばには政策金利3.5%に向けて調整されゆくだろうが、タイミングと規模によってはリスクになり得る。
2025年、欧州経済の見通しは?米国との違いが見られるのが欧州だ。24年、ユーロ圏はリセッションの可能性もあったが、南欧周辺国は堅調な成長を見せた。それに対してドイツはウクライナという地政学的リスクを抱えた地域に近い影響もあり、エネルギー不足による産業の低迷が明確化した。自動車輸出も中国勢との対抗で厳しい状況だ。結果、ドイツはスタグフレーションのような状況にある。
好調な南欧と苦境のドイツ…それらの状況が相殺され、欧州全体の成長はそれほど芳しくないという状況が25年も続くだろう。
消費性向も米国と欧州圏とでは異なる。欧州では消費も盛り上がらず、世帯の貯蓄残高はコロナ前よりもむしろ上がっている。可処分所得は増加しているものの消費に回らない。一方米国は、コロナ時の貯蓄を使い果たしてもさらに消費は旺盛で、この点で欧米は大きく違う。もともとの欧州の貯蓄志向に加え、地政学的なリスク地域に近いこともあり消費に保守的となっているのだろう。
ECBは年央には中立レートに戻る財政出動の余裕がある米国と比べて、ドイツを含めその余裕が限定的であることが欧州の難しさを表している。また、欧州では既に目標インフレを下回っているため、ECB(欧州中央銀行)は25年半ばには中立レートに戻る、つまりECBは毎回の理事会で利下げを行うと想定している。
このように地域ごとの経済成長はインフレの差によりまだら模様となることが予想されるため、投資家のアセットアロケーションの判断に影響があると言えるだろう。
これらの状況を鑑みて25年に向けてどんな地域・アセットに妙味があるか後編で解説する。
【後編】2025年、日本経済の見通しと魅力度の高いアセット、セクターは?
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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