「母が心臓病で治療にお金がかかる」と貢がせて…28歳女性が見た仕事のできる後輩の“頂き女子”顔負けな素顔
Finasee / 2024年12月11日 17時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
現在28歳の菅野千尋さん(仮名、以下同)は地元千葉県にある小さな広告代理店に勤めています。勤め先は全員が顔見知りというアットホームな会社です。ただ、休日出勤が多くクライアントからのハラスメントも日常的にあるという”ブラック”な勤務体系で、高い若手離職率がネックでした。
ある日”知人からの紹介”でめったにやってこない20代の里佳さんが中途採用で入社することに。仕事は完璧、性格も素直で前向き。「最強のアシスタント」を得たと心強く思っていた菅野さんですが、里佳さんは入社してからしばらくたってもなぜか自分のことを教えてくれません。
いぶかしんでいると、企画部部長と手をつなぎホテル街を闊歩する里佳さんを目にします。「そういうことだったのか」と得心する菅野さんでしたが、里佳さんにはもっと深い闇がありました。
●前編:【「若手がいつかないブラック職場」にやってきた実力派新人…20代”坂道系”女子社員の隠された本性とは】
代理店に中途採用で入社してきた坂道系女子私は大学卒業後、地元の代理店に入社して6年目になります。代理店といっても名ばかりで、その実態は地域の企業や商店の屋外や電車の広告、イベントなどを手掛ける“何でも屋”です。
それでも、小さな会社だけに家族的な雰囲気で上司や同僚もいい人ばかりだったのと、私自身が人と触れ合ったり、一緒に新しいものを創り出したりするのが好きだったので、ここまで何とか続けてこられたように思います。
そんな会社に中途採用で入社してきたのが3歳下の里佳でした。
里佳はうちの会社では少々異質な存在でした。ロングヘアが似合う美形で、服装もフリルのついたブラウスや長めのフレアスカートが多く、清楚なお嬢様的な雰囲気は坂道グループのアイドルのようだったからです。
上司から里佳のメンター役を言い渡された時は正直、戸惑いました。しかし、実際には里佳はどんな業務を任せてもそつなくこなす「しごでき」で、人あしらいもうまいので、メンターとしては“楽勝”どころか、アシスタント的な雑用までこなしてもらって大助かりでした。
そんな里佳ですから、試用期間を終えると、すぐに社内でもエリートが揃うイベント企画部に配置されました。自分が教育係を務めた新人が抜擢されたのはうれしい半面、あっという間に追い抜かれてしまったような寂しい気持ちもありました。
入社半年で社内に流れ始めた不穏な噂里佳の良くない噂が伝わってきたのは、それから半年ほどした後です。私の直属の上司に当たる30代の女性社員から「里佳、社内不倫してるらしいよ」と耳打ちされたのです。
その上司は社内きっての情報通で、女性社員が集まる休憩室の噂話を聞き付けてきたようでした。
「でも、相手が誰かは分からないんだよね。社長だって言う人もいれば、イベント企画部長だって言う人、営業部長だって言う人もいるみたいで……」
私にとっては“寝耳に水”で、にわかに信じがたい話でした。確かに里佳はモテ系女子だと思いますが、2人で世間話をしていても、男性や恋愛にそれほど関心がないように見えたからです。
ただ、おしゃれなのにいつも同じカルティエのネックレスをしていたので、彼氏はいるのだろうなと推測していました。
しかし、それから1週間も経たないうちに私は里佳の不倫の現場を目撃したのです。大学時代の友人たちと千葉市の繁華街に繰り出した際、里佳とイベント部長がラブホ街を手つなぎで歩いていたのでした。
その時の里佳は、普段私に見せるのとは全然違う、女を武器にする人の顔でした。
見てしまった後は困惑しました。うちの会社はパートさんやアルバイトの学生を入れても50人くらいの規模ですから、社内不倫はたちまちバレます。実際、私が入社2年目の年にも社内不倫が発覚した女性が、居場所がなくなり会社を去っていました。
“何でも屋”とはいえ、会社の中でも一番やりがいのある部署に引き抜いてもらったのですから、里佳には男性顔負けの活躍をして、女性社員の昇進の道を切り開いてもらいたいと思っていました。
そのためにも、メンターだった私は里佳にさりげなく注意したり、場合によっては相談にのったりした方がいいのか悩みました。とはいえ、社内で熱心に仕事に取り組んでいる里佳の姿を見ると、なかなか言い出せなかったのです。
無断欠勤が続き音信不通に…自宅マンションはもぬけの殻そうこうするうちに急展開がありました。里佳がいきなり出社しなくなったのです。
最初は、あの里佳が無断欠勤なんて珍しいね、という感じでした。しかし、その翌日も翌々日も何の連絡もなく欠勤が続き、スマホに電話やメールをしても通じません。
心配した人事部長が履歴書に書いてあった里佳の母親に連絡すると、「娘とは5年以上一切連絡をとっていない」とけんもほろろに言われてしまったそうです。
社長に「万一のことがあると困るから」と懇願され、人事部の女性とメンターだった私が里佳の自宅の賃貸マンションを訪ね、管理会社に鍵を開けてもらうと既にもぬけの殻でした。これには管理会社の人も驚いていました。
そうして里佳は、私たちの前から完全に姿を消したのです。
しかし、その後に判明したことの方がもっと衝撃でした。里佳を中途採用したのは社長で、なんと、里佳とは千葉市内のスナックで知り合ったとのことでした。里佳は社長に「母子家庭で育ち、母親が再婚したので居場所がない」と話していたそうです。
社長いわく里佳とは「大人の付き合い」だったそうですが、それは社長だけでなく、噂に上っていたイベント企画部長や営業部長も同様でした。
里佳はこうした社内のおじさんたちにさんざん貢がせていたようです。
思わず笑ってしまったのは、里佳のカルティエのネックレスは社長だけでなくイベント企画部長や営業部長も同じものをプレゼントしていたらしいことです。それはバッグや服も同様で、里佳は1つだけ手元に残して後は売り払って現金化していたようです。
それだけではありません。社長からはマンションの家賃を援助してもらい、里佳の家庭事情を知らないイベント企画部長や営業部長には「母が心臓の病気で治療にお金がかかる」と何十万円ものお金を“借りて”いたのでした。
「この前、里佳の“被害者連合”が話し合いをしたら、被害総額は500万円近くになったらしいよ」
事情通の女性上司がまるでその場にいたかのような口調で教えてくれました。
でも、私はもう1人“被害者”を知っています。同期の倉淵君です。倉淵君は里佳にぞっこんで、例の心臓病話を聞いて「これは僕からの気持ちだから」と数万円を渡していたようです。
少し前、「頂き女子りりちゃん」なる女性が世の中を騒がせました。里香の所業はまさにその頂き女子をほうふつとさせるものでした
社長も部長たちも自分の家族にまで話が及ぶことを恐れ、里佳を解雇はしましたが、「会社のお金に手を着けたわけではないから」と警察沙汰にはしないことを決めたようです。
社内には厳重な箝口令が敷かれました。しかし、アルバイト君やパートさんを含めて誰一人として知らない人はいないので、この話がクライアントや取引先に伝わるのも時間の問題だと思います。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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