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アシックス【7936】が株価5年で7.3倍に、業績V字回復で見直し買い 低迷脱却のきっかけとなった「カテゴリー経営」とは

Finasee / 2024年12月12日 6時0分

アシックス【7936】が株価5年で7.3倍に、業績V字回復で見直し買い 低迷脱却のきっかけとなった「カテゴリー経営」とは

Finasee(フィナシー)

株価630%上昇の快進撃 「プライム150」メンバー入り

アシックスが株式市場で強く買われています。株価は2024年12月5日までに年初来で2.9倍、直近5年では7.3倍にまで値上がりしました。

株価の上昇は業績の急回復が背景にあると思われます。2024年5月に1:4の株式分割を実施したことや、分割後も100株の株主優待を維持したことも、株価の上昇を手伝っているでしょう。

【アシックスの株価チャート(過去5年間)】
・株価:3182円(2024年12月5日終値)

出所:Tradingview 

アシックスは2024年8月に「JPXプライム150指数」の銘柄に新規選定されました。選定理由は市場評価性(PBR基準)です。つまり投資家の支持が厚く、純資産に対してよく買われていることが評価された格好です。

今回はそんなアシックスに迫ります。同社の概要と業績を押さえましょう。また快走のきっかけとなった「カテゴリー経営」についても解説します。

兵庫生まれのスポーツ用品大手 主力のランニングシューズが海外で支持

アシックスはスポーツ用品のメーカー大手です。兵庫県で鬼塚商会として誕生し、企業統合を経て現在の体制になりました。社名の由来は、古代ローマの詩人ユベナリスが残した言葉「Anima Sana In Corpore Sano(もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神あれかし、と祈るべきだ)」の頭文字です。

主力製品は競技用シューズです。特にランニングシューズでシェアが高く、2024年始の大学駅伝出場ランナーの24.8%がアシックスのシューズを使用していました。ランニング以外ではテニス用シューズに注力しています。

【アシックスのカテゴリー業績(2023年12月期)】

出所:アシックス 有価証券報告書 

アシックスの主戦場は海外です。売り上げの大半は海外から得ています。海外ではランニングシューズが人気で、日本以外の市場は、いずれもランニングシューズの売り上げが最も大きな割合を占めています(日本はランニング以外の競技用シューズが最大)。ランニングシューズにおいて、アシックスは2025年までに主要市場である日本と米国、欧州でシェア首位になることを目指しています。

【アシックスのセグメント売上高(2023年12月期)】

・日本:1358億円
・北米:1146億円
・欧州:1480億円
・中華圏:776億円
・オセアニア:385億円
・東南・南アジア:271億円
・その他:498億円

出所:アシックス 有価証券報告書

今期は順風満帆、北米は3Qで前期比5.8倍 鬼門の10~12月も黒字の見込み

次に業績を確認しましょう。

アシックスは直近10期で2度の最終赤字を経験しています。1度目は2018年12月期です。減収と費用の増加に加え、構造改革費を計上したことが響きました。2度目の2020年12月期は新型コロナウイルスの影響が主因です。

以降はV字回復となりました。売上高および各段階利益は2023年12月期に過去最高を更新しています。主力のランニングシューズがグローバルで好調なほか、その他のカテゴリーも堅調に推移しました。

出所:アシックス 有価証券報告書より著者作成 

躍進は続いています。今期(2024年12月期)は第3四半期までに売上高は前年同四半期比17.3%増、純利益は同61.2%増となりました。純利益はすでに前期1年分の利益を上回っています。

利益はカテゴリー別、地域別のすべてで増加しています。主力のパフォーマンスランニングが好調を維持する中、その他のカテゴリーも、コアパフォーマンススポーツを除き大幅な増益でした。地域別では、北米地域が前年同四半期比5.8倍の大幅な増益、その他の地域も軒並み2ケタ増益です。

出所:アシックス 決算短信より著者作成 

好調な進捗を受け、アシックスは今期の見通しを7月と第3四半期決算に相次いで上方修正しました。期首予想比で売上高は900億円、純利益は270億円の引き上げです。計画どおりなら、純利益は過去最高を大幅に塗り替えます。

【アシックスの業績予想(2023年12月期)】

・売上高:6800億円(+19.2%)
・営業利益:1000億円(+84.4%)
・経常利益:960億円(+89.5%)
・純利益:630億円(+78.6%)
※()は前期比
※同第3四半期時点における同社の予想

出所:アシックス 決算短信

アシックスはこれまで第4四半期に利益を減らす傾向にありました。年末セールの値引き販売などが原因の1つといわれています。しかし今期は第4四半期単独でも黒字が視野に入っていると、2024年11月開催の説明会でアナウンスしています。値引き販売を抑制するルールを設けたほか、在庫適正化やコスト平準化の取り組みが実を結んでいるようです。

出所:アシックス 決算短信より著者作成 

株式市場では、今期の好調な着地は織り込まれているでしょう。投資家の関心は翌期の見通しに移っていると考えられます。本決算と翌期の業績予想は例年2月中旬に公表されています。

中期経営計画も上方修正 快走を支える「カテゴリー経営」とは

好調な業績を受け、アシックスは今期(2024年12月期)の第3四半期決算で中期経営計画も上方修正しました。収益性や成長率の目線を引き上げる内容です。売上高の成長は落ち着く一方、収益性の向上は続く見込みです。

【中期経営計画の主な財務目標(2024年12月期~2026年12月期)】

※売上高平均成長率の実績は2020年12月期比の幾何平均
※ROAは総資産当期純利益率

出所:アシックス 中期経営計画および財務・業績ハイライト 

アシックスの快走は、同社の「カテゴリー経営」も貢献しているとみられます。カテゴリー経営とは、経営区分を5つのカテゴリー(※)に分け、本社が垂直的に管理する体制です。カテゴリー経営は2019年に本格導入されました。

※パフォーマンスランニング、コアパフォーマンススポーツ、スポーツスタイル、アパレル・エクィップメント、オニツカタイガー

アシックスは従来、本社と販売部門が独立していました。本社が生産した商品を、販売部門が独自に販売する体制です。この体制は販売部門の権限が強く、本社との意思疎通が難しくなることや、責任の所在が不明瞭になるといった課題がありました。

そこでアシックスはカテゴリー制を導入し、本社と販売部門を統合します。カテゴリーごとに統括部門を設置し、生産から売り上げまで本社が責任を負うようになりました。これにより分断されていた機能が集約され、経営効率が向上したとアシックスは説明します。

カテゴリー制の導入は痛みもありました。構造改革に伴う費用は200億円を超え、アシックスは最終赤字を計上します(2018年12月期)。しかし組織の改革は結実し、現在の躍進につながっています。

中期経営計画ではカテゴリー経営の強化にも取り組みます。カテゴリー間の連携を深め、グローバルでより一体感のあるブランドへの成長させる計画です。カテゴリー経営のもと成長が続けば、株価はさらに上昇するかもしれません。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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